ARCHITECTURE
老舗精肉店のファサードを納谷兄弟が劇的に!
February 7, 2019 | Architecture, Design, Food | photo_Makoto Yoshida, Kaori Oouchi(Cutlet) text_Ai Sakamoto
行列必至の人気店として知られる〈吉祥寺さとう〉が、昨秋リニューアルオープン。イメージを一新した、精肉店らしからぬファサードが話題です。
吉祥寺駅北口から延びる商店街の一つ、ダイヤ街。その中ほどに、肉汁たっぷりのジューシーな「元祖丸メンチカツ」で人気の〈吉祥寺さとう〉がある。肉を揚げる芳しい香りを漂わせながら、常に行列の絶えない有名店が、装いも新たにリニューアルオープンしたのは昨年10月1日のこと。赤いテントの下にショーケースという、典型的な精肉店の佇まいは、シルバーの薄いアルミ板をまとったモダンなファサードへと劇的に生まれ変わった。
遠くから見ると鈍い銀色の塊。近づくにつれ、それは空や街の移ろいに呼応して印象を変えていく。さらに近づくと、銀色の正体が小さな円形のアルミ板を規則正しく張り付けた外壁であることに気づく。このファサードデザインを担当したのは、納谷建築設計事務所。数多くの住宅作品を手がけてきた納谷兄弟が、商店街に面する老舗精肉店で試みたのは“新旧の共栄”だった。
「当初、施主が希望したのは、いわゆる精肉店とは一線を画したファサード。既存のイメージを変えたいというものでした。しかし、昔ながらの商店街に建つ1軒だけが不自然に目立つというのも避けなければならない。そこで考えたのが、直径約8cmの円形に切り抜いたアルミ板を一面に張り付ける方法。板の表面に風景がおぼろげに写り込むと同時に、まるで昔からそこにあったかのように不思議と街に馴染むんです。ちなみに、直径8cmは、「元祖丸メンチカツ」とほぼ同じ径なんですよ(笑)」(納谷新)。
確かに、職人が手作業で貼り付けた約18,000枚のアルミ板は、一枚一枚微妙に角度が異なり、光の加減や見るアングルによって刻々と表情を変える。つい触ってしまう人が多いというのも納得の仕上がりだ。
「一見やり過ぎているようにも見えるけど、いい塩梅でしょう(笑)。それほど派手ではないけど、きちんと主張もある。店舗のサインとして、看板ではなく暖簾を提案したのも僕らなんです。ファサードが金属だけだと、堅い表情になってしまうので…。今後、暖簾は白のほか、黒、赤と計3色を用意。例えば、セールのときには赤を掛けるなど、使い分けをしていく予定です」
確かに、職人が手作業で貼り付けた約18,000枚のアルミ板は、一枚一枚微妙に角度が異なり、光の加減や見るアングルによって刻々と表情を変える。つい触ってしまう人が多いというのも納得の仕上がりだ。
「一見やり過ぎているようにも見えるけど、いい塩梅でしょう(笑)。それほど派手ではないけど、きちんと主張もある。店舗のサインとして、看板ではなく暖簾を提案したのも僕らなんです。ファサードが金属だけだと、堅い表情になってしまうので…。今後、暖簾は白のほか、黒、赤と計3色を用意。例えば、セールのときには赤を掛けるなど、使い分けをしていく予定です」
多くのファンを持つ人気店の改修。老舗の味と伝統を守りつつ、新しい個性を打ち出していく試みはなかなか難しい。新生〈吉祥寺さとう〉を体感するなら、吉祥寺へ。もちろん行列覚悟でメンチカツを買うのもお忘れなく。