ARCHITECTURE
長谷川逸子に輝いた、ロイヤル・アカデミー建築賞。
『カーサ ブルータス』2018年9月号より
August 20, 2018 | Architecture | a wall newspaper | photo_Miki Yamanouchi text_Megumi Yamashita
建築界に多大なインパクトを残してきた建築家・長谷川逸子。その功績を讃え、英国「ロイヤル・アカデミー建築賞」が贈られました。
イギリスの伝統と権威ある芸術組織〈ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ〉。芸術の推進や教育を目的に、選出された現役のトップ芸術家と建築家の主導でギャラリーや美術学院などを運営する組織だ。創設250年となる今年はデイヴィッド・チッパーフィールドによる大増改築で設備も拡張。それに伴い建築関係に力を入れる方針を打ち出した。その一環で「ロイヤル・アカデミー建築賞」が創設され、その名誉ある初回受賞者に長谷川逸子が選出された。
授賞理由は「建築界に大いなる刺激と永続的な貢献を与えながら、十分に評価がなされてこなかった」というもの。実際、80年代から90年代にかけて、長谷川の作品はヨーロッパの建築界で大いに注目されていた。「アイデアに満ちた大胆なデザインで私たちをワクワクさせてくれました」。長らく親交があるアーキグラムのピーター・クックは受賞講演で長谷川をこう紹介した。その当時、彼女はノーマン・フォスターやリチャード・ロジャース、ザハ・ハディッドらと並んで、コンペの常連だった。その一つが〈カーディフ・ベイ・オペラハウス〉だ。「最終候補に残り、一等になりかけましたが、歌舞伎の国の女にオペラがわかるのか、とフォスターが反対したそう」。国際コンペの一線で戦ってきた強い思いが伝わってくる。最終的にはザハが優勝しているが、結局奇抜すぎると廃案に追い込まれた。この一件で「アンビルトの女王」と揶揄されることになるザハも、白人男性が優位に立つ建築界で長らく戦ってきた同志だったのだ。今回の授賞には人種や性差別の撤廃をさらに進めようという意図もあるだろう。
ヨーロッパでは「アンビルト」のままの長谷川だが、日本には住宅や公共建築など作品は多数ある。菊竹清訓と篠原一男に師事後、独立。日本の民家を原点に環境との連続性や地域性を生かした「原っぱのような建築」を目指してきた。〈湘南台文化センター〉〈新潟市民芸術文化会館〉のように、ランドスケープを含めた「第二の自然」としての建築である。ダイナミックで未来的とも言える造形が特徴だが、そのルーツをたどると日本の民家に至るというのが興味深い。安藤忠雄、伊東豊雄と共に「平和な時代の野武士達」と言われる1941年生まれ。今回の受賞で、日本建築の幅広さが、さらに国際的に認知されることだろう。
ヨーロッパでは「アンビルト」のままの長谷川だが、日本には住宅や公共建築など作品は多数ある。菊竹清訓と篠原一男に師事後、独立。日本の民家を原点に環境との連続性や地域性を生かした「原っぱのような建築」を目指してきた。〈湘南台文化センター〉〈新潟市民芸術文化会館〉のように、ランドスケープを含めた「第二の自然」としての建築である。ダイナミックで未来的とも言える造形が特徴だが、そのルーツをたどると日本の民家に至るというのが興味深い。安藤忠雄、伊東豊雄と共に「平和な時代の野武士達」と言われる1941年生まれ。今回の受賞で、日本建築の幅広さが、さらに国際的に認知されることだろう。