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【京都・七条】丸福樓、河井寬次郎記念館…。レトロ建築を巡り、甘い手みやげを買う。|甲斐みのりの建築半日散歩
ARCHITECTURE

【京都・七条】丸福樓、河井寬次郎記念館…。レトロ建築を巡り、甘い手みやげを買う。|甲斐みのりの建築半日散歩

| Architecture, Culture, Food, Travel | casabrutus.com | photo_Ryumon Kagioka   text_Minori Kai

2022年4月、京都七条で長い月日保管されていた旧山内任天堂社屋が、安藤忠雄の設計監修でオールインクルーシブのホテル〈丸福樓〉へと生まれ変わった。今回はホテルの滞在を兼ねて、民藝運動を代表する陶芸家・河井寬次郎の住居・陶房・登り窯を見学できる〈河井寬次郎記念館〉や〈開化堂カフェ〉を訪ねたり、界隈を散歩しながら買い物を楽しんだ。

●旧山内任天堂社屋が安藤忠雄の設計監修でホテル〈丸福樓〉に変身。

“正面通”という通りに面した正面玄関。奥に連なる建物は、スペード棟、ダイヤ棟、ハート棟、クローバー棟と、トランプにちなんだ愛称が付く。玄関やエントランス周辺には、とりわけ贅沢な石材を使用。
“正面通”という通りに面した正面玄関。奥に連なる建物は、スペード棟、ダイヤ棟、ハート棟、クローバー棟と、トランプにちなんだ愛称が付く。玄関やエントランス周辺には、とりわけ贅沢な石材を使用。
正面玄関には建築時からの表札がそのまま残されている。
正面玄関には建築時からの表札がそのまま残されている。
“正面通”という通りに面した正面玄関。奥に連なる建物は、スペード棟、ダイヤ棟、ハート棟、クローバー棟と、トランプにちなんだ愛称が付く。玄関やエントランス周辺には、とりわけ贅沢な石材を使用。
正面玄関には建築時からの表札がそのまま残されている。
任天堂の創業家である山内家が大切に守り続けてきた歴史的建物で、長らく非公開だった旧山内任天堂社屋が、リノベーションを経てホテルに生まれ変わるというのをニュースで知ったのは、ちょうどこの連載が始まる2020年初頭頃。それから2年。2022年の4月に、とうとう開業の日を迎えると聞いて京都を目指した。

最寄りは京阪電鉄・七条駅。鴨川と高瀬川の間に位置する鍵屋町は、昔ながらの町家や商店建築が残る静かな町並みで、繁華街とは異なるゆったりとしたときが流れる。そこに1930(昭和5)年に建てられたのが、1889(明治22)年に花札やカルタの製造を始め、世界的なゲームメーカーへと発展を遂げた任天堂の本社社屋。表通りの正面玄関から北に向かって3棟が連なり、それぞれ、事務所棟、創業家である山内家の住居棟、倉庫棟として使用されていた。
千鳥の装飾が愛らしい格子窓。建物や内装のところどころにダークグリーンを使用。花札の裏側の色合いを思わせる。
千鳥の装飾が愛らしい格子窓。建物や内装のところどころにダークグリーンを使用。花札の裏側の色合いを思わせる。
中央のコンクリート壁の建物が、安藤忠雄設計監修で新築のダイヤ棟。左手が昔は事務所だったスペード棟で、右手が元は住居だったハート棟。
中央のコンクリート壁の建物が、安藤忠雄設計監修で新築のダイヤ棟。左手が昔は事務所だったスペード棟で、右手が元は住居だったハート棟。
旧倉庫のクローバー棟には、客室とレストランが。「福」という印が入った木箱は倉庫に眠っていたものを活用。
旧倉庫のクローバー棟には、客室とレストランが。「福」という印が入った木箱は倉庫に眠っていたものを活用。
千鳥の装飾が愛らしい格子窓。建物や内装のところどころにダークグリーンを使用。花札の裏側の色合いを思わせる。
中央のコンクリート壁の建物が、安藤忠雄設計監修で新築のダイヤ棟。左手が昔は事務所だったスペード棟で、右手が元は住居だったハート棟。
旧倉庫のクローバー棟には、客室とレストランが。「福」という印が入った木箱は倉庫に眠っていたものを活用。
そこかしこにアール・デコ調の装飾がほどこされた鉄筋コンクリート4階建てのビルを設計したのは、京都に建築事務所を構えていた、増岡熊三と田中義光。サンドベージュのタイルを張り巡らせた外壁には、ところどころに幾何学模様の煉瓦や石材が。館内にも大理石やカラフルなタイルが贅沢に用いられ、格子窓のダークグリーンが空間全体を引き締めている。 
壁を飾るアートは、主力商品だった古いトランプやカルタ。
壁を飾るアートは、主力商品だった古いトランプやカルタ。
スペード棟の308号室のバルコニー。東山を一望できるテラスの扉の上には、任天堂の文字が残されている。
スペード棟の308号室のバルコニー。東山を一望できるテラスの扉の上には、任天堂の文字が残されている。
シックな家具が配され、ゆったり過ごすことができるラウンジ。安藤忠雄の作品集などを読むことができる。
シックな家具が配され、ゆったり過ごすことができるラウンジ。安藤忠雄の作品集などを読むことができる。
壁を飾るアートは、主力商品だった古いトランプやカルタ。
スペード棟の308号室のバルコニー。東山を一望できるテラスの扉の上には、任天堂の文字が残されている。
シックな家具が配され、ゆったり過ごすことができるラウンジ。安藤忠雄の作品集などを読むことができる。
ホテルに冠された〈丸福樓〉という名は、山内家の屋号〈丸福〉に由来する。プロデュースを手がけるのは、神戸〈オリエンタルホテル〉や奈良〈菊水楼〉をはじめ、地域性を活かしたホテルやレストランを運営する〈Plan・Do・See〉。既存棟2棟はオリジナルのディティールを蘇らせ、新棟は建築家・安藤忠雄により、コンクリート造りの新たな建物が誕生した。
エントランスに飾られたサギのオブジェは、リノベーションをおこなう際に剥がした壁紙を使用。
エントランスに飾られたサギのオブジェは、リノベーションをおこなう際に剥がした壁紙を使用。
クローバー棟の階段横には、かつて実際に使用されていたエレベーターが装飾として残されている。
クローバー棟の階段横には、かつて実際に使用されていたエレベーターが装飾として残されている。
スペード棟の206号室。以前は住居の中でもゲストルームとして使われていた部屋で、暖炉がそのまま残されている。顔のデザインに、玩具の会社らしい遊び心を感じる。
スペード棟の206号室。以前は住居の中でもゲストルームとして使われていた部屋で、暖炉がそのまま残されている。顔のデザインに、玩具の会社らしい遊び心を感じる。
ダイヤ棟の302号室は、安藤忠雄が一から設計。大きな窓から光が注ぎ、明るく滞在しやすい。
ダイヤ棟の302号室は、安藤忠雄が一から設計。大きな窓から光が注ぎ、明るく滞在しやすい。
ハート棟の102号室は和室と洋室の間の坪庭に外風呂があるユニークな造り。
ハート棟の102号室は和室と洋室の間の坪庭に外風呂があるユニークな造り。
エントランスに飾られたサギのオブジェは、リノベーションをおこなう際に剥がした壁紙を使用。
クローバー棟の階段横には、かつて実際に使用されていたエレベーターが装飾として残されている。
スペード棟の206号室。以前は住居の中でもゲストルームとして使われていた部屋で、暖炉がそのまま残されている。顔のデザインに、玩具の会社らしい遊び心を感じる。
ダイヤ棟の302号室は、安藤忠雄が一から設計。大きな窓から光が注ぎ、明るく滞在しやすい。
ハート棟の102号室は和室と洋室の間の坪庭に外風呂があるユニークな造り。
全部で18室ある室内の調度品は部屋ごとに趣が異なり、新旧のデザインが過去から未来への物語を携えて響き合う。既存棟と新棟が融合した「丸福樓スイート」のテラスからは、清水寺など京都のまち並みを一望できるのも贅沢な限り。宿泊プランはオールインクルーシブで、夕食、朝食、客室ミニバー、ラウンジでのドリンクや軽食が宿泊料金に含まれるので、館内では時を忘れて自由にゆったり寛げる。
ダイヤ棟の401号室は、安藤忠雄設計の新築棟と既存棟が融合した「丸福樓スイート」。テラスからは清水寺など京都の街並みを一望できる。
ダイヤ棟の401号室は、安藤忠雄設計の新築棟と既存棟が融合した「丸福樓スイート」。テラスからは清水寺など京都の街並みを一望できる。
レストラン「カルタ」の内装も、料理、器、植栽などとともに料理家・細川亜衣さんが監修を手がける。
レストラン「カルタ」の内装も、料理、器、植栽などとともに料理家・細川亜衣さんが監修を手がける。
レストラン「カルタ」の看板は、細川亜衣さんの娘さんの手描きの文字。
レストラン「カルタ」の看板は、細川亜衣さんの娘さんの手描きの文字。
ダイヤ棟の401号室は、安藤忠雄設計の新築棟と既存棟が融合した「丸福樓スイート」。テラスからは清水寺など京都の街並みを一望できる。
レストラン「カルタ」の内装も、料理、器、植栽などとともに料理家・細川亜衣さんが監修を手がける。
レストラン「カルタ」の看板は、細川亜衣さんの娘さんの手描きの文字。
レシピ・内装・器・植栽に至るまで、料理家・細川亜衣さんが監修するレストラン「carta.」では、京都の旬の食材を使った夕食と朝食を提供。また、ラウンジではグラタンやうどんなどの軽食を味わえるのも心嬉しい。
京都や、旬の食材を使用した夕食。馬肉と鯛のカルパッチョ。器は宇都宮檀さんによるもの。
京都や、旬の食材を使用した夕食。馬肉と鯛のカルパッチョ。器は宇都宮檀さんによるもの。
夕食のメインとなるビーフシチューに、ライスとグリーンサラダ。
夕食のメインとなるビーフシチューに、ライスとグリーンサラダ。
夕食の最後はデザートも。旬のフルーツと合わせたアイスクリーム。
夕食の最後はデザートも。旬のフルーツと合わせたアイスクリーム。
京都や、旬の食材を使用した夕食。馬肉と鯛のカルパッチョ。器は宇都宮檀さんによるもの。
夕食のメインとなるビーフシチューに、ライスとグリーンサラダ。
夕食の最後はデザートも。旬のフルーツと合わせたアイスクリーム。

丸福樓

京都府京都市下京区正面通加茂川西入ル鍵屋町342。 TEL 075 353 3355。1泊1室2名利用70,000円〜。部屋代のほか料理、飲み物などオールインクルーシブ。全18室(うち7室がスイート)。

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甲斐みのりの建築半日散歩illustration Yoshifumi Takeda

甲斐みのり

かい みのり  文筆家。旅、散歩、甘いもの、建築など幅広い題材について執筆。その土地ならではの魅力を再発見するのが得意。

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