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甲斐みのりが案内する“おいしい名建築”を訪ねて、京都旅へ。
ARCHITECTURE

甲斐みのりが案内する“おいしい名建築”を訪ねて、京都旅へ。

| Architecture, Culture, Food, Travel | casabrutus.com | photo_Ryumon Kagioka   text_Housekeeper

4月に発売された文筆家・甲斐みのりさんの新著『歩いて、食べる 京都のおいしい名建築さんぽ』は、建築を中心にめぐる京都旅にぴったりの一冊。甲斐さんに見どころを教えてもらいました。

著者の甲斐みのりさん。東山の迎賓館〈長楽館〉にて。
著者の甲斐みのりさん。東山の迎賓館〈長楽館〉にて。
一般的に、”京都”と言われて思い浮かべるのは、京都市内だけでも2000近くあると言われる神社仏閣や、独特の間取りと構造を持つ木造建築「京町家」が並ぶ景色かもしれない。しかし、実際に街を歩いていると、豪奢な石造りの洋館や近年話題になった最先端の建築などが、それらの和風建築と共存していることに気づく。

4月に発売された『歩いて、食べる 京都のおいしい名建築さんぽ』は、文筆家・甲斐みのりさんの視点から京都の名建築をとらえ直した一冊だ。建築にまつわる歴史的背景や物語、心惹かれた意匠などを、フォトグラファー・鍵岡龍門のあたたかな写真とともに紹介している。
四条河原町〈東華菜館 本店〉の個室。木製のアーチには曲木の技術が活かされている。
四条河原町〈東華菜館 本店〉の個室。木製のアーチには曲木の技術が活かされている。
建築だけでなく、甲斐さんが選んだ「おいしい」ものも同時に紹介されている。
建築だけでなく、甲斐さんが選んだ「おいしい」ものも同時に紹介されている。
四条大橋西詰に建つ〈東華菜館 本店〉は、ウィリアム・メレル・ヴォーリズ唯一のレストラン建築。
四条大橋西詰に建つ〈東華菜館 本店〉は、ウィリアム・メレル・ヴォーリズ唯一のレストラン建築。
玄関のバロック風のテラコッタ装飾が見どころの一つ。
玄関のバロック風のテラコッタ装飾が見どころの一つ。
四条河原町〈東華菜館 本店〉の個室。木製のアーチには曲木の技術が活かされている。
建築だけでなく、甲斐さんが選んだ「おいしい」ものも同時に紹介されている。
四条大橋西詰に建つ〈東華菜館 本店〉は、ウィリアム・メレル・ヴォーリズ唯一のレストラン建築。
玄関のバロック風のテラコッタ装飾が見どころの一つ。
甲斐さんは、大学を卒業してからしばらくの間京都に暮らしていたことがある。ある日、いつも通りがかりに気になっていた「昭和の純文学の舞台として登場するような庭付きのステキな邸宅」が特別公開されており、運良く中に入れることに。それが、ヴォーリズが設計した遺伝学者・駒井卓博士の元邸宅〈駒井家住宅〉だった。このときの体験をきっかけに”名建築”に食事やお茶などを”味わうこと”を結びつけて、甲斐さんらしい建築めぐりを楽しむようになったという。

この本に登場するのは、辰野金吾、村野藤吾、ウィリアム・メレル・ヴォーリズなど日本近代建築を代表する建築家が手がけたものから、2020年に隈研吾が建築デザイン監修した〈新風館〉の新館まで、新旧さまざまな建築。そのすべてに、レストランやカフェなど甲斐さんが選んだ「おいしい」を感じられる場所がセットで紹介されている。
甲斐さんが「もっとも心に残った」という〈国立京都国際会館〉は、丹下健三に師事した大谷幸夫の作。京都に暮らしていても訪れたことがない人が多いという。
甲斐さんが「もっとも心に残った」という〈国立京都国際会館〉は、丹下健三に師事した大谷幸夫の作。京都に暮らしていても訪れたことがない人が多いという。
V字形柱が3つ並ぶ〈国立京都国際会館〉のメインラウンジ。右手に見える椅子やテーブルをはじめ、館内の家具のほとんどが剣持勇のオリジナルデザイン。
V字形柱が3つ並ぶ〈国立京都国際会館〉のメインラウンジ。右手に見える椅子やテーブルをはじめ、館内の家具のほとんどが剣持勇のオリジナルデザイン。
甲斐さんが「もっとも心に残った」という〈国立京都国際会館〉は、丹下健三に師事した大谷幸夫の作。京都に暮らしていても訪れたことがない人が多いという。
V字形柱が3つ並ぶ〈国立京都国際会館〉のメインラウンジ。右手に見える椅子やテーブルをはじめ、館内の家具のほとんどが剣持勇のオリジナルデザイン。
最初に紹介されているのは、〈国立京都国際会館〉。意外なようにも感じるが、掲載されている27の建築の中で、もっとも心に残った場所だという。

「京都タワーにのぼったことがないという京都の方も多いように、京都に住んでいたときには、わざわざ訪れようと思ったことがありませんでした。ダイナミックな〈国立京都国際会館〉は、建築ツアーも開催されており、建築ファンは半日たっぷり楽しめるところ。そこにあるもの全てに心がときめきます。隣接する村野藤吾最晩年の作品〈ザ・プリンス京都宝ヶ池〉も京都の繁華街から離れているためゆったり過ごすことができます。ホテルに宿泊しながら国際会館の建築ツアーに参加するのもおすすめです」
〈国立京都国際会館〉に隣接する村野藤吾最晩年の作品〈ザ・プリンス京都宝ヶ池〉。
〈国立京都国際会館〉に隣接する村野藤吾最晩年の作品〈ザ・プリンス京都宝ヶ池〉。
〈ザ・プリンス京都宝ヶ池〉にも建築ツアープランがある。「京都の施設はこのようなツアーを開催しているところが多いので、施設ごとに調べて参加してみると、個人でめぐる以上により深い知識を得られると思います。私自身よく建築ツアーに参加しています」
〈ザ・プリンス京都宝ヶ池〉にも建築ツアープランがある。「京都の施設はこのようなツアーを開催しているところが多いので、施設ごとに調べて参加してみると、個人でめぐる以上により深い知識を得られると思います。私自身よく建築ツアーに参加しています」
同じく村野藤吾作、〈ウェスティン都ホテル京都〉。「村野藤吾が手がけた内装や家具が残されている部屋があり、村野スイートのアフタヌーンティープランも。宿泊するよりも手頃に村野藤吾の世界を感じられるので、ぜひおすすめしたいです」
同じく村野藤吾作、〈ウェスティン都ホテル京都〉。「村野藤吾が手がけた内装や家具が残されている部屋があり、村野スイートのアフタヌーンティープランも。宿泊するよりも手頃に村野藤吾の世界を感じられるので、ぜひおすすめしたいです」
〈ウェスティン都ホテル京都〉内の数寄屋風別館〈佳水園〉は、2020年に中村拓志により、村野藤吾の意匠を継承しつつ大規模リニューアルされた。
〈ウェスティン都ホテル京都〉内の数寄屋風別館〈佳水園〉は、2020年に中村拓志により、村野藤吾の意匠を継承しつつ大規模リニューアルされた。
〈国立京都国際会館〉に隣接する村野藤吾最晩年の作品〈ザ・プリンス京都宝ヶ池〉。
〈ザ・プリンス京都宝ヶ池〉にも建築ツアープランがある。「京都の施設はこのようなツアーを開催しているところが多いので、施設ごとに調べて参加してみると、個人でめぐる以上により深い知識を得られると思います。私自身よく建築ツアーに参加しています」
同じく村野藤吾作、〈ウェスティン都ホテル京都〉。「村野藤吾が手がけた内装や家具が残されている部屋があり、村野スイートのアフタヌーンティープランも。宿泊するよりも手頃に村野藤吾の世界を感じられるので、ぜひおすすめしたいです」
〈ウェスティン都ホテル京都〉内の数寄屋風別館〈佳水園〉は、2020年に中村拓志により、村野藤吾の意匠を継承しつつ大規模リニューアルされた。
また、京都は震災や戦災で大きな被害を受けることがなかったため、明治、大正、昭和の時代に建てられたモダンな建築が残る貴重な場所でもある。その歴史的な価値が認められ、大切に保存、リノベーションされてきた建物も多い。

「京都は、古きを守り続ける古都として知られながらも、いい意味で最先端のものや、新たな感覚をいちはやく取り入れてきた都市であるとも思います。例えば、今回紹介した〈エースホテル京都〉〈ザ・ゲートホテル京都高瀬川 by HULIC〉〈京都市京セラ美術館〉〈開化堂カフェ〉〈ロームシアター京都〉などは、”新旧”どちらもの建築的な面白さを感じることができます。歴史的建築をよりよい形でリニューアルしている施設が多いのも京都らしさだと思いました」
隈研吾が建築デザイン監修を手がけ、2020年に開業した〈新風館〉の新館。中には〈エースホテル京都〉が併設されている。
隈研吾が建築デザイン監修を手がけ、2020年に開業した〈新風館〉の新館。中には〈エースホテル京都〉が併設されている。
エースホテルは1999年シアトルに誕生。日本初上陸の地に選んだのが京都だった。地元クリエイターとのコラボレーションも注目されている。
エースホテルは1999年シアトルに誕生。日本初上陸の地に選んだのが京都だった。地元クリエイターとのコラボレーションも注目されている。
2020年に青木淳・西澤徹夫設計共同体の設計で大規模改修を行った〈京都市京セラ美術館〉。
2020年に青木淳・西澤徹夫設計共同体の設計で大規模改修を行った〈京都市京セラ美術館〉。
〈京都市京セラ美術館〉は日本最古の美術館建築。
〈京都市京セラ美術館〉は日本最古の美術館建築。
隈研吾が建築デザイン監修を手がけ、2020年に開業した〈新風館〉の新館。中には〈エースホテル京都〉が併設されている。
エースホテルは1999年シアトルに誕生。日本初上陸の地に選んだのが京都だった。地元クリエイターとのコラボレーションも注目されている。
2020年に青木淳・西澤徹夫設計共同体の設計で大規模改修を行った〈京都市京セラ美術館〉。
〈京都市京セラ美術館〉は日本最古の美術館建築。
京都はどの地域からも比較的訪れやすく、週末だけふらりと訪れる人も多いはず。そんなとき、エリアごとに名建築とおいしいものを紹介しているこの本が旅の道しるべになるはずだ。今回は岡崎、時間が限られているときは京都駅周辺、まとまった休みが取れたら少し足をのばして下鴨周辺を練り歩く……など、さまざまな使い方ができるだろう。
エリアごとに名建築とおいしいものを紹介している。
エリアごとに名建築とおいしいものを紹介している。
「京都は東京以上に、限られた範囲に歴史的建築が凝縮しているので、1〜2日かけて建築旅をするのにふさわしい土地だと思います。中では喫茶店紹介もしていますが、建築的視点で楽しめる喫茶店もたくさん。朝食〜建築めぐり〜お茶〜宿泊と、建築尽くしの旅やさんぽができるまちです。また、どの施設も、純粋に京都観光としても楽しめるので、ひとりでめぐるだけでなく、事前に建築そのものへの深い知識があるわけではない方も誘いやすいです。そういう意味でも京都は、さまざまなタイプの方が建築に興味を抱く入口としてふさわしいまち。広いシチュエーションで、本を片手に楽しんでいただけたら嬉しいです」
鴨川沿いの「川床」と、モダンな洋館が共存する街並み。京都が継承し、守ってきた景色だ。
鴨川沿いの「川床」と、モダンな洋館が共存する街並み。京都が継承し、守ってきた景色だ。
『歩いて、食べる 京都のおいしい名建築さんぽ』

『歩いて、食べる 京都のおいしい名建築さんぽ』

甲斐みのり著。1,760円。発行:エクスナレッジ

甲斐みのり

かいみのり 文筆家。旅、散歩、甘いもの、建築など幅広い題材について執筆。その土地ならではの魅力を再発見するのが得意。この本の東京版『歩いて、食べる 東京のおいしい名建築さんぽ』(1,540円、発行:エクスナレッジ)も好評発売中。

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