ARCHITECTURE
2021年プリツカー賞決定! 決め手は“壊さない”でした。
『カーサ ブルータス』2021年6月号より
| Architecture | a wall newspaper | photo_Philippe Ruault text_Chiyo Sagae
解体・移動せず、付け加えたり、形を変える。今わかるラカトン&ヴァッサルのトランスフォーメーション建築の凄さ。
建築界の最高栄誉と言われるプリツカー賞、今年はフランスのラカトン&ヴァッサルが受賞した。彼らの基本は、既存建築を壊さず移動せずに、付け加えたり、形を変えるトランスフォーメーション(変換)の設計哲学だ。
「トランスフォーメーションは、既存のものをより良くする機会です。解体は、容易で短期的な決断。エネルギーや材料、歴史が失われ、社会的にネガティブな影響を与えます。私たちにとってそれは暴力行為です」とラカトン。
“取り壊さない” 理念に基づき、建物の永続的な特性を残しながらインフラを改善していく控えめな介入は、今でこそエシカルな社会意識の高まりとともに評価される。が、彼らにとっては今に始まったことではない。ヴァッサルが一時的にナイジェリアに移った1980年代、ラカトンもたびたび彼を訪ねていた。そこで彼らは現地の極めて限られた資源で暮らす人々の姿と、相対する砂漠の美しさから、建築的に多くを学んだのだという。
「トランスフォーメーションは、既存のものをより良くする機会です。解体は、容易で短期的な決断。エネルギーや材料、歴史が失われ、社会的にネガティブな影響を与えます。私たちにとってそれは暴力行為です」とラカトン。
“取り壊さない” 理念に基づき、建物の永続的な特性を残しながらインフラを改善していく控えめな介入は、今でこそエシカルな社会意識の高まりとともに評価される。が、彼らにとっては今に始まったことではない。ヴァッサルが一時的にナイジェリアに移った1980年代、ラカトンもたびたび彼を訪ねていた。そこで彼らは現地の極めて限られた資源で暮らす人々の姿と、相対する砂漠の美しさから、建築的に多くを学んだのだという。
その後、パリを拠点に〈ラカトン&ヴァッサル〉として多くの集合住宅や学術施設、公共空間を手がけてきた。それらの多くは温室やテラスを設けることで、居住空間の拡大や自然に触れる心地よい環境、エネルギーの節約を実現している。初期の代表作〈ラタピ邸〉ではポリカーボネートの格納式パネルを邸宅の裏に追加し、美しい光と透明性、自然換気と日射遮断を両立させた。住空間の拡大のみならず、内外を繋ぐ心地よい環境を建築に取り入れたのだ。
「優れた建築はオープンで、住む人の自由を広げる。建築の意図を示唆したり強制せず、生活を静かにサポートし、親しみやすく、使いやすく、美しいものでなくてはならない」と2人は考える。
今年のプリツカー賞審査委員長であるアレハンドロ・アラベナは、「今年はこれまで以上に私たちが人類全体の一部だと実感した。環境や人類に公平であることは、次の世代に公平であることなのです」と2人の受賞を讃える。
「優れた建築はオープンで、住む人の自由を広げる。建築の意図を示唆したり強制せず、生活を静かにサポートし、親しみやすく、使いやすく、美しいものでなくてはならない」と2人は考える。
今年のプリツカー賞審査委員長であるアレハンドロ・アラベナは、「今年はこれまで以上に私たちが人類全体の一部だと実感した。環境や人類に公平であることは、次の世代に公平であることなのです」と2人の受賞を讃える。
