ボルタンスキーの迷宮へ。|青野尚子の今週末見るべきアート | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

ボルタンスキーの迷宮へ。|青野尚子の今週末見るべきアート

2016年、〈東京都庭園美術館〉で個展を開いたクリスチャン・ボルタンスキー。その際「2019年にパワーアップして帰ってくる」と予告していた。その言葉を裏切らない個展が大阪でスタート! 予想を超えた空間が広がっています。

《合間に》(2010年)。7歳から65歳までのボルタンスキー自身の顔が投影されるカーテン。観客はこのカーテンを開いて、さらに奥に進む。
《合間に》(2010年)。7歳から65歳までのボルタンスキー自身の顔が投影されるカーテン。観客はこのカーテンを開いて、さらに奥に進む。
クリスチャン・ボルタンスキーはフランスを代表する現代アーティスト。2011年にはヴェネチア・ビエンナーレのフランス館代表になったこともある。今年は大阪を皮切りに東京、長崎と巡回する大規模な個展だけでなく、パリの〈ポンピドゥー・センター〉でも個展を開く予定だ。日本では1990年に〈ICA Nagoya〉と〈水戸芸術館〉で個展を開催、最近では越後妻有で廃校になった学校にインスタレーションを設置した《最後の学校》(ジャン・カルマンとの共作)、瀬戸内海の豊島で大切な人の名を短冊に書いて風鈴に吊るす《ささやきの森》、心臓の鼓動を録音し、そこに行くと聞くことができる《心臓音のアーカイブ》といった恒久設置作品でも知られている。
《出発》(2015年)。展覧会のスタートはここから。「DEPART」(出発)のサインが目印だ。
今回の個展は大阪の〈国立国際美術館〉の地下3階のフロア全体を使った大がかりなものだ。大半が地下に埋まった建物の下層に降りていくと、まず青い光で「DEPART」(出発)と書いたサインが出迎える。そこから先には彼の初期から現在進行形ともいえる最新作までが並ぶ。オブジェやインスタレーション、映像、写真などによる彼の作品は一つひとつの境界線がはっきりしない。複数の作品の間をさまよっていくうちに、一つの大きな作品の中を進んでいくようにも感じられる。
左側のデジタルカウンターの作品《最後の時》(2013年)は、ボルタンスキーが生まれてから現在までの秒数を示している。右側の《自画像》(2008年)は7歳から60歳までの作家自身の顔をモンタージュしたもの。
小さな青色の電球でコートを囲んだ《コート》(左、2000年)と、半透明の布に女性の顔が浮かび上がる《ヴェロニカ》(右、1996年)。後者はイエス・キリストが十字架をかついでゴルゴタの丘に上る途中、ヴェロニカという女性がイエスの顔をぬぐうと布にその顔が写った、という伝説からとられたもの。十字架のように見える《コート》と組み合わされて、宗教を再解釈する。
左側のデジタルカウンターの作品《最後の時》(2013年)は、ボルタンスキーが生まれてから現在までの秒数を示している。右側の《自画像》(2008年)は7歳から60歳までの作家自身の顔をモンタージュしたもの。
小さな青色の電球でコートを囲んだ《コート》(左、2000年)と、半透明の布に女性の顔が浮かび上がる《ヴェロニカ》(右、1996年)。後者はイエス・キリストが十字架をかついでゴルゴタの丘に上る途中、ヴェロニカという女性がイエスの顔をぬぐうと布にその顔が写った、という伝説からとられたもの。十字架のように見える《コート》と組み合わされて、宗教を再解釈する。
「私は観客が作品の前に立つのではなく、作品の中に入り込めるようなものを作りたいと思っています」とボルタンスキーは言う。

越後妻有の《最後の教室》などもそうだが、今回の個展会場も全体に暗い。照明を落とした展示空間に弱い光で照らされた写真や古着がぼんやりと浮かび上がる。見る者は地底の迷路か作家自身の体内を巡っていくような気分に陥る。