安藤建築に篠山紀信の「情事」写真!? |青野尚子の今週末見るべきアート | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

安藤建築に篠山紀信の「情事」写真!? |青野尚子の今週末見るべきアート

安藤忠雄の建築 vs 篠山紀信の写真。どちらが勝つのか見当もつかない戦いが、山梨県・北杜市の〈清春芸術村〉で繰り広げられています。ストイックで硬質な安藤の空間に挑んだ、篠山紀信の“情事”写真の全貌をレポート!

安藤忠雄の設計による〈光の美術館〉。コンクリートの箱の一角を切り欠いた、ストイックな建築。春になると樹齢を重ねた桜が咲き誇る。
〈清春芸術村〉は南アルプスを間近に、遠くには富士山も見える地に開かれた、芸術家のための理想の村と言える場所。1977年、創設者の吉井長三が小林秀雄、白州正子、谷口吉郎らとともにこの地を訪れたのを機に建設が始まった。以来およそ40年の間にさまざまな建物が作られてきた。樹齢80年あまりの桜の木に囲まれた敷地にはギュスターヴ・エッフェルの設計図をもとに造られたアーティスト・イン・レジデンスのための建物〈ラ・リューシュ〉や谷口吉生が設計した〈清春白樺美術館〉〈ルオー礼拝堂〉、藤森照信設計のツリーハウス状の茶室〈徹〉などが点在する。さらに敷地に隣接して、杉本博司・榊田倫之・新素材研究所設計のレストラン〈素透撫〉(すとうぶ)がある。
藤森照信設計の茶室〈徹〉。樹齢80年の檜が支えるツリーハウス状の茶室は、赤瀬川原平ら「縄文建築団」が施工した。
〈エッフェル塔〉の設計者でもあるギュスターヴ・エッフェルの設計図をもとに造られた〈ラ・リューシュ〉。近くにはエッフェル塔の階段の一部が移築されている。
谷口吉生が設計した〈清春白樺美術館〉。志賀直哉ら白樺派の作家が愛したルオーや東山魁夷の作品や、ゆかりの品々が展示されている。
藤森照信設計の茶室〈徹〉。樹齢80年の檜が支えるツリーハウス状の茶室は、赤瀬川原平ら「縄文建築団」が施工した。
〈エッフェル塔〉の設計者でもあるギュスターヴ・エッフェルの設計図をもとに造られた〈ラ・リューシュ〉。近くにはエッフェル塔の階段の一部が移築されている。
谷口吉生が設計した〈清春白樺美術館〉。志賀直哉ら白樺派の作家が愛したルオーや東山魁夷の作品や、ゆかりの品々が展示されている。
南アルプスを望む敷地には左からエッフェル塔の階段、茶室〈徹〉、そして〈光の美術館〉が並んでいる。
篠山紀信の個展『光の情事』が開かれているのは安藤忠雄が設計した〈光の美術館〉。スペインの画家、アントニ・クラーベの個人美術館として建てられた。クラーベはピカソの後継とも謳われた天才画家。彼が人工照明を使わず自然光のみで描いたことに敬意を払い、安藤は展示室には一切、人工照明を使わない美術館を設計した。切りとられた角や天窓、壁の細いスリット状の窓からの光だけが作品を照らし出す。
三角形の天窓からシャープな光が入る〈光の美術館〉。
この特別な空間に篠山はヌードモデルやマネキンを配して写真を撮った。彼もまた二人の巨匠へのリスペクトとして、人工照明を使わずに撮影している。天窓から入る鋭い光やカウンターに反射するわずかな光が肉体を照らし出す。基本的に撮った写真はその場所で展示されている。1階で撮ったものは1階に、2階で撮ったものは2階に、といった具合だ。