ニッポンのお宝、お蔵出し|花と葉だけを大胆に描く《燕子花図屏風》。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

ニッポンのお宝、お蔵出し|花と葉だけを大胆に描く《燕子花図屏風》。

季節に応じて床の間の軸を替えるように絵や彫刻を愛でる。今回は尾形光琳の《燕子花図屏風》を紹介します。

国宝《燕子花図屏風》(右隻)尾形光琳筆 6曲1双 紙本金地着色 日本・江戸時代 18世紀 根津美術館蔵。地面も空も描かれず、花と葉がリズミカルに並ぶ。
日本美術、特に絵画は傷みやすいため、西洋美術と違って限られた期間にしか公開されません。ルーヴル美術館の《モナ・リザ》のようにいつもそこにあるわけではないので、展示されるチャンスを逃さないようにしたいもの。本連載では、今見るべき日本美術の至宝をご紹介!

■今回のお宝:尾形光琳《燕子花図屏風》
■お宝ポイント:花と葉がリズミカルに並ぶ、燕子花のパターン化。極限まで要素をそぎ落としている。
■公開期間:2018年4月14日〜5月13日
■公開場所:〈根津美術館〉


根津美術館では新緑が美しい日本庭園で燕子花が咲くころ、展示室にも金地の燕子花が咲く。尾形光琳の《燕子花図屏風》だ。これを描いた時、光琳は40代半ば、少し前に「法橋(ほっきょう)」という官位を与えられ、名実ともに充実した日々を送っていた。法橋は「法橋上人」の略でもとは僧の位を示したが、後に仏師や絵師にも与えられるようになったもの。今の文化勲章のようなものだろうか。
赤枠が“コピペ?”部分。光琳は省力化を図ったのか、それとも同形反復の面白さを狙ったのか。
赤枠が“コピペ?”部分。光琳は省力化を図ったのか、それとも同形反復の面白さを狙ったのか。
赤枠が“コピペ?”部分。光琳は省力化を図ったのか、それとも同形反復の面白さを狙ったのか。
赤枠が“コピペ?”部分。光琳は省力化を図ったのか、それとも同形反復の面白さを狙ったのか。
群れ咲く燕子花は同じパターンを反復していることが知られている。このことは戦後まもなく、美術史家の小杉一雄が発見したものだ。高級呉服屋「雁金屋」に生まれた光琳は着物のことを熟知していたから、染織に使う型紙の技法を応用したのだと思われる。が、よく見るとそれぞれに筆遣いが少しずつ違うし、スタンプとは異なる量感がある。同じメロディを少しずつ変化させながら繰り返す音楽のような、独特のリズムが生まれる。
国宝《燕子花図屏風》(左隻)。左に「法橋光琳」の署名がある。
この屏風は「伊勢物語」の「東下り」の一場面を描いたとされることが多い。都から東方に旅してきた男が三河国の八橋で満開の燕子花を見ながら、都に残した妻を思って、「から衣きつつ慣れにしつましあれば はるばる来ぬるたびをしぞ思ふ」と詠う場面だ。体に馴染んだ服のように慣れ親しんだ妻を都においてきてしまった、その寂しさを表現している。この情景を描いた他の絵では燕子花のほかに男や橋が描かれることが多いのだが、《燕子花図屏風》では花しか描かれていない。極限まで要素をそぎ落としているのだ。
根津美術館の庭に咲く燕子花。光琳はあからさまなデフォルメはしていないが、本物の花は少し小さく見える。
庭の燕子花は、4月下旬から5月上旬が見頃となる予定。もし咲いていたら、実物と《燕子花図屏風》の花をよく見比べてほしい。花が本物よりやや大きめに描かれているのに気づくだろう。高価な顔料を惜しげもなく使った絵は描かれてから300年余り経つ今も艶やかだ。今年の根津美術館の展示では弟の尾形乾山とコラボレーションした角皿や茶碗の下絵(後期展示:4月28日〜5月13日)も並ぶ。光琳のデザイン感覚とはどのようなものだったかを確かめることができる。
5月8日から13日までの夜間開館(19時まで、入館は閉館30分前まで)期間中、館内のNEZU CAFÉでは17時以降、シャンパンが楽しめる。写真はシャンパンとプロシュートのセット(1900円・税込)。シャンパン単品は1500円(税込)。鑑賞のあと、ディナーの前にぜひ。

特別展「光琳と乾山-芸術家兄弟・響き合う美意識-」

〈根津美術館〉

東京都港区南青山6-5-1
。4月14日~5月13日。10時~17時(5月8日〜13日は19時まで)。月曜休。TEL 03 3400 2536。1300円。