ブリヂストン美術館の名画がパリに里帰り中。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

ブリヂストン美術館の名画がパリに里帰り中。

現在、長期閉館中のブリヂストン美術館の傑作がパリで展覧されている。オランジュリー美術館で『TOKYO-PARIS ブリヂストン美術館の名品—石橋財団コレクション展』が開催され、名画に見慣れたフランス人をも魅了し、話題となっているのだ。

オランジュリー美術館。
まずは石橋財団コレクションの概要からおさらいしよう。世界的タイヤメーカー〈ブリヂストン〉の創業者、石橋正二郎(1889-1976)は福岡県久留米市の出身。家業の仕立屋から足袋の製造、そしてゴムを貼った地下足袋製造で事業を飛躍させ、さらにモータリゼーション到来をいち早く見抜いた慧眼でタイヤ事業へと進出する。その後世界をリードするタイヤメーカーへと大躍進していくさなか、正二郎は美術蒐集にも目を向けていた。
宮本三郎《石橋正二郎氏像》1969-70年 油彩・カンヴァス 石橋財団ブリヂストン美術館 (c)Mineko Miyamoto 2017 /JAA1700052  晩年の石橋氏の肖像。室内の壁に架かっているのはゲインズボロー作の肖像画と思われる。
もともと自身も絵が好きだった正二郎は、久留米の小学校時代の図画教師でもあった画家の坂本繁二郎からの勧めで、同郷の画家、青木繁の作品を皮切りに、1930年頃から少しずつ日本の近代洋画をコレクションし始める。今回の展覧会で最初の展示室を飾るのは、明治時代に初めて油彩という画法を取り入れ、試行錯誤しながら新しい絵画表現を模索していた日本人画家たちの作品だ。
青木繁《海の幸》1904年 / 朝倉文夫《石橋正二郎氏胸像》1956年  青木繁の《海の幸》は美術の教科書にもよく取り上げられているので、見たことがある人も多いだろう。
藤島武二《天平の面影》1902年 油彩・カンヴァス 石橋財団ブリヂストン美術館  神話や聖書の逸話を描くフランス絵画に対して、古代日本を画題としてロマン派の表現を見せている。
青木、藤島のほかにも藤田嗣治、安井會太郎らの作品を展示し、フランス語で「Yôga(=洋画)」という固有のジャンルとして紹介している。フランスで浮世絵が流行し、ジャポニズムが印象派とその後に大きな影響を与えていた頃、日本もまたフランス絵画に憧憬を抱き、必死に新しい「洋画」に取り組んでいた。その相互作用は、展覧会を観るフランス人の目にも初めて知る史実として新鮮に映ったのではないだろうか?

さて、正二郎の視線は徐々にフランス絵画へと注がれていく。なかでも印象派が好きだった正二郎は、戦前戦後に資産家コレクター(原富太郎や国立西洋美術館の礎となる松方コレクションの松方家など)旧蔵の名画を買い集め、海外への流出を防ぐためにも積極的に蒐集していく。なぜなら、正二郎には「美術館の設立」という夢があったのだ。

コレクションした絵画は自分ひとりで鑑賞するのではなく、あまねく多くの日本人に見てもらい、美術に対する目を啓蒙し、公衆の文化振興に貢献すべき、というが正二郎のモットーだった。こうして1952年、終戦後わずか7年で東京・京橋に〈ブリヂストン美術館〉がオープン。その頃には日本有数の西洋美術コレクションを築き上げていた。