あのボルタンスキーが、旧朝香宮邸の亡霊を召還!? | カーサ ブルータス Casa BRUTUS facebook-a facebook instagram line twitter youtube

あのボルタンスキーが、旧朝香宮邸の亡霊を召還!?

東京都庭園美術館で人々を出迎える、実体のない影や声。ボルタンスキー展にさまよう“亡霊”が現れました。

《まなざし》2013年 写真の目の部分だけが大きくプリントされた薄いヴェールが風に揺れる。この目は「目撃者であり、亡霊だ」とボルタンスキーは言う。彼は写真を多用するが、誰のものかはわからない写真は見るものの感情移入を誘う。

《帰郷》2016年 金色の緊急用ブランケットの下には大量の古着が積まれている。古着は、それを着ていた人の不在を象徴する。金の山は富をもたらすと同時にそれを巡る諍いのもとにもなる。幸福と不幸がネガとポジのように重なり合う。
旧朝香宮邸がもとになった東京都庭園美術館に“亡霊”が出現している。クリスチャン・ボルタンスキーの作品だ。誰もいない部屋にささやき声が響き、風に揺れる布にプリントされた目が静かにこちらを見つめる。

「この建物にはさまざまな記憶が詰まっている。その歴史的な記憶のコラージュを作りたいと思った」

彼の作品にはさまざまな要素が複雑に溶け合う。例えば山になった金色の布(《帰郷》)は事故や災害に遭った怪我人の冷えを防ぐ緊急用ブランケットでできている。

「金の山はそれ自体はとても美しい。また金は権力や地位の象徴でもある。でもそれが緊急用ブランケットだと知ったとたん、この金の山には違う意味が生まれてくる」

彼は最近、ベルギーの美術館に自作を販売した。が、彼はモノを渡したわけではないという。

「作品のプランとそれを展示する権利を売ったんだ。私の作品は楽譜のようなものだ。オーケストラの編成によって違う演奏になるように、私の作品もいろいろな形で“演奏”してくれればいいと思う」

彼は自らの死を賭けの対象にするような作品も作っている。彼が生み出した“亡霊たち”は、生と死という根源的な問題を超えた何かを語っている。

《影の劇場》1984年

部屋の壁に骸骨や首を吊る人など不穏なイメージの影絵が現れる。その影絵のもとになっているのは段ボールや扇風機などの日常的な素材だ。死と日常とが連続していることを思わせ、同時にユーモアも漂う。

《心臓音》2005年

世界中の人々の心臓音を集めている瀬戸内海・豊島の〈心臓音のアーカイブ〉に収められた“誰か”の心臓音が鳴り響き、赤い光が明滅する。生命の象徴である心臓の音は、いつかそれが止まるときを思わせる。

《アニミタス》(小さな魂)2015年

瀬戸内海の豊島に作った〈ささやきの森〉とチリのアタカマに作った〈アニミタス〉の映像が流れる。両作品に使われた風鈴の音や床に敷かれた干し草の匂いが一体になった“トータルアート”だと作家は言う。

クリスチャン・ボルタンスキー

1944年、パリ生まれ。無名の人々の写真や衣服などを素材に、匿名の個人や集団の生(存在)と死(消滅)、記憶をテーマに制作を続けている。日本では豊島のほか、越後妻有にも恒久設置作品がある。 さらに詳しいインタビュー記事「ボルタンスキーが語る、旧朝香宮邸の亡霊たち。」

クリスチャン・ボルタンスキー『アニミタス−さざめく亡霊たち』

〈東京都庭園美術館〉

東京都港区白金台5-21-9
TEL 03 5777 8600。〜12月25日。10時〜18時。第2・第4水曜休。観覧料900円。『アール・デコの花弁』展同時開催。公式サイト