ボルタンスキーが語る、旧朝香宮邸の亡霊たち。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

ボルタンスキーが語る、旧朝香宮邸の亡霊たち。

旧朝香宮邸である東京都庭園美術館に住む“亡霊”が姿を現した。美術館をそんな幻想的な空間に変えてしまったのはフランスのアーティスト、クリスチャン・ボルタンスキー。越後妻有や瀬戸内海の豊島には恒久設置作品があるけれど、日本の美術館では26年ぶりの個展になる。ささやき、影を残す亡霊たちの正体について聞いた。

東京都庭園美術館でのクリスチャン・ボルタンスキー。この部屋でも“声のアート”が流れている。全体に暗い作品が多いけれど、本人はよくしゃべる陽気なタイプ。
美術館に入ってまず、いつもなら絵や彫刻が並ぶ1階を見渡す。でもそこには何もない。耳を澄ますと誰かの話し声が聞こえてくる。

「旧朝香宮邸を改修したこの美術館にはさまざまな記憶が染みついているのを感じた。パーティでダンスをする人々、美しい男女……。ここでは声が聞こえてくるけれど、何を話しているのか、曖昧でわかりにくい。一つの記憶ではなく、たくさんの記憶について表現したいと思ったから、テキストの断片が漂うような空間にした」
金色のブランケットが積まれたインスタレーション《帰郷》2016年。美と恐怖が交錯する。
新館に展示されている金色の山は緊急用のブランケットでできている。事故や災害時にけが人の身体が冷えないようにかける毛布だ。

「私の作品にはすべて意味や理由があるけれど、それをすべて話さないほうがいいだろう。私の作品は見る人の顔が映る鏡だ。見る人が、自分が何を欲するか、何を必要としているかに気づいて欲しいんだ。金色の山はとても美しく、崇高なイメージがある。金は権力や地位の象徴でもある。でもこれが緊急用ブランケットでできているのに気づくと、また違う意味が生まれてくる。どんな意味を読み取るかは観客の自由だ。見る人がそれぞれ、自分が見たいと思うものを見てくれればいい」