重要文化財〈大阪市中央公会堂〉の空間を生かした、瀧本幹也「祈り」の写真展。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

重要文化財〈大阪市中央公会堂〉の空間を生かした、瀧本幹也「祈り」の写真展。

写真家・瀧本幹也の映像とプリント、音による個展『PRIÈRE』が〈大阪市中央公会堂〉で開催中だ。重要文化財である重厚な空間を、瀧本はどう感じ、表現の一端としたのか。

瀧本幹也写真展『PRIÈRE』展示風景より。新作の写真と映像が譜面台やイーゼルの上で展開されている。
広告写真やCM映像を多く手がけ、映画『そして父になる』(2013年)、『海街diary』(2015年)では撮影監督を務めるなど、国内外で活躍を続ける瀧本幹也。そんな瀧本の個展『PRIÈRE(プリエール)』が国の重要文化財である〈大阪市中央公会堂〉で開催されている。

会場となった〈大阪市中央公会堂〉の特別室は、創建当時は貴賓室として使用されていた場所。アーチ型の天井や壁面には日本神話が描かれ、ステンドグラスから色とりどりの光が溢れる、荘厳な空間だ。展示構成を考えるためにこの場所を訪れた瀧本は、一目で「ここは祈り(フランス語でプリエール)の空間だ」と感じたという。
写真と映像が展示された台は指揮台に向けられている。「各々の位置に立つと、自分がオーケストラの一員のような気分になれるんです」(瀧本)。
作品はすべて今年9月以降の新作。京都の寺院で撮影されたものだ。
展示されるのは、すべて今年の9月以降に撮りためた新しい作品。縁があり通っていた京都の寺院で、池に映る草木、木漏れ日、水に落ちる雨粒が生む波紋など、自然が織りなす静かで美しい情景を、瀧本の優しい眼差しで切り取った。

本展では、そんな写真や映像が譜面台やイーゼル、製図台などの上で展開される。各々が中央に配された指揮台に向かっているその光景は、まるでオーケストラ。瀧本がこの場所で感じたことを、"祈りのオーケストラ"として具現化したものだ。その情景に彩りを加えるのは、京都・妙満寺の住職でもある作曲家・土持悠孝が奏でるピアノの音。中央の大画面に映し出される映像に合わせて流れる密やかな旋律が、公会堂の重厚な空間をさらに特別なものにしている。
展示作品より。池に映る草木、雨露、水の波紋など水にまつわる写真たち。
今回の作品には、瀧本がコロナ禍で感じた思いと祈りがこめられているという。

2020年、京都の妙満寺で開催された個展『CHAOS 2020』で、瀧本は南極大陸で撮影した7連の作品を展示した。静かなる自然の厳しさを様々な角度で切り取った連作の先に、ふと飾られた菜の花の写真。そこには、瀧本が感じた「救い」があった。
『CHAOS 2020』の展示風景。7連の南極の風景の先に、菜の花の写真が飾られた。
「コロナのことは、一人一人がいろいろな受け止め方をしたと思います。様々な立場の方がいて、辛いことや悲しいことも多かったはずです。僕も『CHAOS 2020』のときは自主隔離をし、なるべく外に出ない生活をしていましたが、そんな毎日に疲れてふと散歩に行った河原で撮影したのがこの菜の花です。写真を撮るのが楽しい、好きだ。そんなことに改めて気付かせてくれました」

そこで感じた思いを込めて作られたのが、本展の作品。とくに映像作品《PRIÈRE》は、足を止めてゆっくり鑑賞してみてほしいという。

「一粒の雨が庭に落ち、それがやがて小川や大海に流れる水の物語を撮影しました。次第に雨は小降りになり、木漏れ日がさし、暖かくなって蝶が飛び立つ。止まない雨はなく、最後には希望が残る。この展示も何かの救いになれたら、と願っています」

『PRIÈRE(プリエール)』

2021年12月25日まで開催中。〈大阪市中央公会堂 3階 特別室〉大阪府大阪市北区中之島1-1-27。15時〜21時(最終日は〜18時)。いずれも最終入場は閉館30分前まで。会期中無休。

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