〈銀座メゾンエルメス〉を彩るジュリオ・ル・パルクのアート|石田潤のIn The Mode | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

〈銀座メゾンエルメス〉を彩るジュリオ・ル・パルクのアート|石田潤のIn The Mode

20周年を迎える〈銀座メゾンエルメス〉のファサードに現れたジュリオ・ル・パルクのアート作品。フォーラムではこの大御所アーティストの日本初個展が開催中だ。

ファサードを飾るジュリオ・ル・パルクの「ロング・ウォーク」。ル・パルクとエルメスのコラボレーションは今回が2度目となり、両者は2015年に同じく「ロング・ウォーク」を用いたカレを発表している。
レンゾ・ピアノ設計の名建築、〈銀座メゾンエルメス〉のファサードに現れたカラフルな文様。これは御年92歳のジュリオ・ル・パルクによるアート作品だ。ル・パルクの代表作「ロング・ウォーク」シリーズを組み合わせたもので、無彩色の建物に新たな魅力を添えている。〈銀座メゾンエルメス〉20周年を祝うかのように、ル・パルクの作品はファサードだけに止まらず、ウィンドウ・ディスプレイやエレベーターにも広がり、フォーラムでは展覧会「ル・パルクの色 遊びと企て」が開催中だ。日本初個展となる本展では、1950年代の初期作品から最新の大型モビールまでその作品世界を余すことなく伝えるものとなっている。
3360枚のステンレススチールからなる新作モビール。ガラスブロック越しに差し込む光を反射し、展示会場に光と影のスペクタルが生まれる。「モビール」(2021年)。
ジュリオ・ル・パルクは1928年アルゼンチンに生まれた。アンデス山脈の麓にある町に生まれ、労働者階級の家庭で育ったという。アートに出会ったのはブエノス・アイレスに移り住んだ14歳の頃。母親に美術学校に連れていかれたことがきっかけとなり、入学。アーティストとしての道を歩み始めることとなる。モホイ=ナジやピエト・モンドリアン、ヴィクトル・ヴァザルリの幾何学的な抽象画に惹かれていたというル・パルクは、1959年にパリに移住すると視覚芸術探究グループ(GRAV)を結成。オラシオ・ガルシア=ロッシやフランソワ・モレル、フランシスコ・ソブリノ、ジョエル・スタイン、イヴァラルと協同しながら、視覚的な遊びやゲームの要素を取り入れることにより鑑賞者の参加を促す試みも行っていく。
ル・パルクの初期作品。14色を用いる前、ル・パルクは黒と白の2色で視覚的な実験を試みていた。「Projet Couleur n14」(1959年)
「反射ブレード(刃板)」(1966-2005年)は49枚のスチール製の刃板(ブレード)を用いた立体作品。ブレードの後ろを人が移動すると、その人物の姿が連続写真のように分割して出現する。
ル・パルク個人の作品は、黒と白、そのグラデーションを用いた絵画作品に始まり、1959年からは自身が考案した14色を用いた作品作りへと発展してゆく。この14色について、フォーラムで上映されているインタビュー映像内でル・パルクは次のように述べている。

「最初は7色から、10色、12色と色数を増やしてゆき、最終的に14色に落ち着きました。14色なら十分な幅がありながら、複雑すぎるほどの多さはありません。14色の組み合わせの可能性は実に多様です。でも私の目的なその先にありました。私がしたかったのはたくさんのバリエーションの作品を作ること、そしてその様々な組み合わせを検証し、一つの空間の中でそれが可視化されるようにすることでした」

「ロング・ウォーク」もまた、この14色を用いて作られたシリーズだ。図柄の異なる10種類からなり、ファサードでもいくつかの図柄が組み合わされている。
ファサードの「ロング・ウォーク」は1421枚のシートからなる。10月以降は隣接する〈Ginza Sony Park〉の工事が予定されているため、ファサードの全貌が見れるのもあとわずかとなった。
パリのアトリエでのル・パルク。92歳を迎えてもなお、その創作意欲は衰えを知らない。
「『ロング・ウォーク』モチーフは切り離しても機能しますし、つなげた状態でも成立します。私はつなげた状態の方に興味があります。シークエンスを感じることができ、一つのテーマから次のテーマへの移ろいを見ることができるからです」(インタビュー動画より)

ル・パルクは作品制作を“実験”と位置づけ、完成した作品は“実験の結果”という。14色のバリエーションから生み出される作品は、見ているとそこに動きが生まれ、異なる形へと変化してゆくようだ。作品はそれだけで完結することなく、鑑賞者へと開かれていることにより、新たな生命をおびてゆく。近年、回顧展が世界中で開催され、その再評価の動きが高まるル・パルク。今回は叶わなかったが、いつか日本を訪れ、アルゼンチンタンゴを披露したいというチャーミングなアーティストの作品に出会う貴重な機会を見逃さずに。
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