【バンクシー事件簿】バンクシーが描いた、コロナ時代のグラフィティ。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

【バンクシー事件簿】バンクシーが描いた、コロナ時代のグラフィティ。

Casa BRUTUS特別編集『バンクシーとは誰か?【完全版】』より

8月中旬に新作を発表したバンクシー。そこで、発売中のCasa BRUTUS特別編集『バンクシーとは誰か?【完全版】』より、去年から今年にかけて発表されたコロナ禍をテーマにした作品をおさらい。新作の解説も近々アップ予定です!

Aachoo!!(2020)Bristol, UK
2020年12月11日発表の《ハックション!!》。描かれた民家は、イースター祭に卵転がし競争が行われることで有名な急坂に面する。傾斜を水平にして写真を撮ると、くしゃみの衝撃で家や町全体が吹き飛ばされそうに見えるトリックアートになっている。おばあさんの上品な装いからは、同年11月までマスク未着用で批判されたエリザべス女王の姿も見え隠れ。courtesy of www.banksy.co.uk
・パンデミック下において発表されたバンクシーの新作に込められた意味とは。

ストリートアーティストなのに、ストリートに出られないーー。

新型コロナウイルスが世界的に猛威をふるった2020年、バンクシーは致命的なアイデンティティー・クライシスに直面した。

もちろん都市封鎖(ロックダウン)も顧みず、屋外で作品を描くグラフィティライターやストリートアーティストも少なくなかった。しかし、新作を描けば、世界各国のマスコミがこぞって速報するバンクシーとなると話は別である。現地に人が集まってクラスターが発生すれば、多くの市民を命の危険にさらすことになるからだ。

「ストリートに出られないなら、家でキャンバスに描けばいいのに」と思う人もいるかもしれない。確かに美術史を振り返れば、バスキアやキース・ヘリングのような“ストリート出身”の大御所が名を連ねている。しかし、バンクシーは、世界的に有名になってからも国立美術館や有名ギャラリーなど、いわゆる美術界の権威からは慎重に距離を取り、ストリートを中心にゲリラ的な活動を信条としてきたのだ。
My wife hates it when I work from home. (2020) UK
プライベートを黙秘するバンクシーが初めて「自宅」を公開。世界中で「ステイホーム」という新しい生活様式が広まったタイミングで「在宅勤務ができる人は恵まれているよな」というぼやきも聞こえてきそう。いまや保守系新聞が此我々がもっとも予期していなかった国宝頃と呼ぶバンクシーでも、自宅で此仕事頃をすれば、やはり器物損壊になるのだ。courtesy of www.banksy.co.uk
そのフラストレーションを吐露するような作品が、第1回目のロックダウン中、4月16日にオンラインで発表された。バスルームで大暴れするネズミの集団を描いた壁画の写真に添えられたのは「自宅で仕事をすると妻が嫌がる」との自虐的な一言。しかしこの時に1匹だけロックダウンの日数を画線法で数えていたネズミの姿は、バンクシーの宣戦布告だったのだろう。この作品を皮切りに、為政者の欺瞞や情報操作を皮肉り、抑圧された人々の声を代弁するような作品を屋内外問わず、次々に発表していく。

5月7日には、イギリス南部のサウサンプトン総合病院に一枚の絵画『ゲーム・チェンジャー』を寄贈し、話題をさらった。それは、コロナという国家レベルの危機と闘う医療従事者が“新しい時代のヒーロー”と拍手で讃えられる一方で、安い賃金や長時間労働で犠牲を強いられている惨状を告発。この新作が公開された翌日は世界赤十字デーで、この日に医療従事者に賞賛と感謝が集まることを予測した上で「もし拍手だけで満足すれば、彼らを使い捨てることになる」と政府やマスコミや市民にクギを刺したのだ。その提言通り、作品は賞賛だけで終わらず、病院内に展示後の21年3月にオークションに出品され、バンクシーの作品落札史上最高額である約25億円もの収益金をNHS(国民保険サービス)に寄付している。
会員プログラム

登録者数12,000人突破!

建築家のアトリエ見学/名作家具プレゼント/限定メールマガジン…すべて無料。

建築家のアトリエ見学に、名作家具プレゼントも。

いますぐ登録!