横尾忠則にインタビュー! “85年”の画業を振り返る『GENKYO』の圧倒的空間。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

横尾忠則にインタビュー! “85年”の画業を振り返る『GENKYO』の圧倒的空間。

『カーサ ブルータス』2021年9月号より

〈東京都現代美術館〉で開催されている『GENKYO 横尾忠則 原郷から幻境へ、そして現況は?』展。幼少期から展覧会開幕3週間前に描いたという絵まで、横尾忠則の時間がぎっしりと詰まった横尾ワールドに浸ることができます。

東京での展示は「多元宇宙論」など13のテーマに分けられている。最初の「神話の森へ」の《画家の自画像》(1982年、右)は横尾が画家として本格的に活動を開始した直後の作品。奥は《赤い叫び》(1983年)。

●「描きたくないという気持ちで描いた絵を見てみたい」

最後の展示室「原郷の森」、寒山拾得シリーズの前の横尾忠則。曾我蕭白の絵をもとにしたものもある。
寒山拾得のシリーズ。寒山のトレードマーク、巻物(経典)はトイレットペーパーに、拾得の箒は電気掃除機に変換されている。
〈愛知県美術館〉から〈東京都現代美術館〉に巡回してきた『GENKYO 横尾忠則』展。愛知展の半数近くを入れ替え、さらに新作も加わってパワーアップ、総数603点という作品が見る者を圧倒する。

「愛知展では年代に沿って並べたけれど、東京ではいかに描いたか、様式ごとに分けています。見る人は何が描かれているかに集中してしまうけれど、それは重要ではないんです」(横尾)

確かにそのスタイル(様式)は実にさまざま。「一人の人が描いたとは見えないんじゃないかと思います」と横尾が言う通り、多彩な作品がぎっしりと並ぶ。
〈地球の中心への旅〉 横尾が子どものころ夢中になったターザン映画や江戸川乱歩の探偵小説、南洋一郎の冒険小説を想起させる絵。夢の中で異次元を冒険するようだ。横尾はそんな幼児性(インファンテリズム)が芸術家には大切だという。
Y字路にて 横尾の代表作となったシリーズ。Y字路にあった、子どものころ通った模型店が取り壊されて、見たことのない風景が出現したのがきっかけで描き始めた。初めて来た場所なのに既視感が漂うデジャヴのような空間が続く。
横尾が「ぜひ見てほしい」という最後の展示室の新作のうち20点は寒山拾得がモチーフ。寒山拾得は中国の水墨画や江戸絵画にも多く描かれる禅僧だが、みすぼらしい格好でにたあと笑うなど不気味な姿で描かれることが多い。

「不思議な人たちだなあ、と思ったんです。なぜたくさんの絵師がその不思議な人物を描いているのか、その謎を解くには自分も描いてみればわかるのかな、と思った」

実際に描いてみて彼は、「寒山拾得を描くには自分もそのような“アホ”にならないと描けないということがわかった」と言う。

「究極の悟りを得た人はいかにも悟ったようなかっこうはしていない。バカかアホのように見えるんです。だからその超俗の僧を描いた絵も投げやりな表現になる」
〈越境するグラフィック〉 大阪万博「せんい館」ポスターなど主に60年代のグラフィック作品。奥は「リメイク/リモデル」のアンリ・ルソーの絵をもとにしたもの。横尾は幼少期、他人の絵や写真を模写することが絵を描くことだと思っていた。
その寒山拾得の絵の中には完成していないように見えるものも多い。横尾は「未完こそが創造だ」といった意味のことも言っている。
「今までの絵は完成させようという目的があって描いていた。だけど最近では完成させることを考えていない。僕は飽きっぽくて描いている途中で飽きるから、電車でいえば途中下車なんです」
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