CGIの裏側を表現した〈プラダ 青山店〉の展覧会、そして、ライゾマティクス・真鍋大度の見解とは。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

CGIの裏側を表現した〈プラダ 青山店〉の展覧会、そして、ライゾマティクス・真鍋大度の見解とは。

〈プラダ財団〉による展覧会『シュトゥルム & ドラング プレビュー サービス』が開催中。見る人に考えさせるCGIの世界をライゾマティクスがショートムービーに収めました。

Fondazione PRADA『Sturm & Drang Preview Services』Curated by Luigi Alberto Cippini, Fredi Fischli, Niels Olsen Film directed by Daito Manabe(Rhizomatiks)
東京にやってくる建築好きの外国人にとって聖地ともいうべき〈プラダ 青山店〉。竣工後18年を経たヘルツォーク&ド・ムーロン設計の建築の前衛性は今もなお失われていない。

革新的な建築デザインを店舗に取り入れる精神は、遡れば1993年設立の〈プラダ財団〉のコンセプトに直結する。長年にわたって映画・建築・テクノロジー・アートの相互関係を探究するプロジェクトを数多く支援してきた財団は、今年から〈gtaエキシビションズ(スイス連邦工科大学[ETH]チューリッヒ校建築学部にある学際的プラットフォーム)〉とのコラボレーションによるプロジェクト「シュトゥルム & ドラング」を展開している。これは2年をかけて、コンピューター画像生成技術(CGI)の複雑さとそれが私たちの日常にもたらす影響を調査・研究するという内容だ。

このプロジェクトの第1フェーズはETHで建築史や美術史を学ぶ学生と研究者を対象にしたオンライン講義で、今年2月〜6月に開催された。続く第2フェーズの3部作の1つが日本で開催される展覧会『シュトゥルム & ドラング プレビュー サービス』だ。
展覧会『シュトゥルム & ドラング プレビュー サービス』会場。入口にある趣旨説明のパネルを除いて、3つの展示物がキャプションなしに展示されている。
この展覧会のエッセンスと企画意図を汲みとった1本のショートムービーをライゾマティクスが撮影することになり、真鍋大度が会場を訪れた。フロアには3つの展示物が置かれ、入口に趣旨説明のパネルがあるのみで、映像も、音や光の演出もない。真っ黒な発泡ポリエチレンのパネルと照明器具。中央にユニット建築のようなモックアップ。そして台座の上に置かれたプラスチックのオブジェとそれを取り囲む複数の小型カメラ。これらは一体何を意味するのか? このプロジェクトを率いるキュレーターのうちの1人、ルイージ・アルベルト・チッピーニに話を聞いた。

「3つの展示は、誰もが入手できる基本的な材料を使ってCGIを実践し画像を生成する現場を表しています。ここにはCGIの成果物は展示せず、その制作過程にある資材やツールだけを見せています。現代においてCGIは人々を魅了する美しい映像を生み出し、視聴者はそこに完全に没入してしまいますが、現実にはこうしたチープでアグリーな状態なのだということを呈示したいのです」
ウィリアム・ギブスンのSF小説『ニューロマンサー』に登場する架空のカプセルホテルを、コーティングした発泡スチロールで模造した作品《カプセル》の中に真鍋が入ってみた。
展覧会のキュレーターの一人、ルイージ・アルベルト・チッピーニ。ミラノで建築・都市計画コンサルティング〈Armature Globale〉を主宰。
「映画の世界でもテクノロジーが飛躍的に進歩して、CGと実写の見分けがつかないぐらいの高精度な映像が作られていますが、そのセットに使われる資材は実のところ1900年代からあまり変わらずローテクなものです。そして3Dスキャンなどの技術は、ソフトにインプットしたデータを用いて現実と違わぬ完璧な美しい世界を生み出すものですが、その価値とは現実には存在せずあくまでソフトの環境に属するものでしかないのです。こうしたことを人々に認知させ、検証するのが今回の展示の目的の一つ。もう一つの狙いは、CGIがお金のない若い人でも簡単な材料を使って挑戦でき、自分のアイデアを具現化できるということを示すことでした」

・《DIYシェル》|『Sturm & Drang Preview Services』

作品《DIYシェル》。簡単に入手できる安価な発泡ポリエチレンの壁と最小限の照明を据えたモーショントラッキングのための簡易スタジオ。
エントリーレベルの照明と、ここにはあえて展示されていないがカメラがあれば、特別な設備がなくともゲームや映画に用いられる精巧な映像を創れることを伝えている。
発泡ポリエチレンのシートをつなぎ合わせるのは結束バンド。チープな資材でも充分役目を果たす。
ちなみに展覧会タイトルの「シュトゥルム & ドラング」とは、理性よりも感情が優越することを主張した18世紀ドイツの文芸運動のこと。これをフックとして、CGIを初めて小説の中に登場させたウィリアム・ギブスンの『ニューロマンサー』に着目し、主人公が滞在するカプセルホテルの1室を模造したのが、例の建築モックアップというわけだ。

「物語のほとんどはサイバー空間の中で展開するので、実際に彼がどんな部屋に住んでいるのかよく読みとれません。それは私たちが映像を見る時に、その背後に何があるのかを知らずに目に映るものだけですべてを理解しようとする状態と似ていると思うのです」
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