ART
西洋美術に描かれた背徳シーンを読み解く。
| Art, Culture | casabrutus.com | photo_Keiko Nakajima text_Mari Matsubara editor_Keiko Kusano
美術史家の池上英洋と当サイトの連載『今週末見るべきアート』の筆者・青野尚子が共著を出版した。その名も『背徳の西洋美術史』――挑発的なタイトルで読者を惹きつける内容とは?
見てはならぬ、犯してはならぬ、愛してはならぬ……ならぬと言われれば言われるほど、人は危険やタブーに惹きつけられる。そんな人間の本性は今も昔も変わらないようだ。西洋美術の名画には不倫、凌辱、略奪愛、サディズム、同性愛、獣姦、近親相姦など反道徳的なテーマを描いたものが少なくない。現代に比べてずっと保守的かつ厳格なモラルに支配されていたはずの中世〜近世において、あからさまに裸体が描かれ、インモラルな行為が表現されているのは、パラドックス的というべきか、禁欲の反動というべきか。そうした絵画のジャンルを「背徳美術」と名付け、一つ一つの作品背景を詳細に解説するのがこの本の狙いだ。
西洋美術の絵画や彫刻を見るたびに、どうしてこんなに裸ばかりなんだろうと疑問に感じる人は少なくないだろう。人間の裸を表現することはタブーだったが、その代わり神の姿を裸体で描くことは許された。裸を見たい欲望を、神話や英雄伝説を口実にして果たしたのだ。だからこそ、西洋美術を理解するには『ギリシャ神話』や『旧約・新約聖書』、聖人伝の『黄金伝説』、『オデュッセイア』、『変身物語』などの知識が不可欠になってくる。しかしこれらの古典を読破する時間も気力もない、そんな人にうってつけなのが、この本だ。名画や彫刻の中で人々が犯され、いたぶられ、斬り殺され、姦淫され、愛撫されているのは何故なのか、懇切丁寧に教えてくれる。
西洋美術の絵画や彫刻を見るたびに、どうしてこんなに裸ばかりなんだろうと疑問に感じる人は少なくないだろう。人間の裸を表現することはタブーだったが、その代わり神の姿を裸体で描くことは許された。裸を見たい欲望を、神話や英雄伝説を口実にして果たしたのだ。だからこそ、西洋美術を理解するには『ギリシャ神話』や『旧約・新約聖書』、聖人伝の『黄金伝説』、『オデュッセイア』、『変身物語』などの知識が不可欠になってくる。しかしこれらの古典を読破する時間も気力もない、そんな人にうってつけなのが、この本だ。名画や彫刻の中で人々が犯され、いたぶられ、斬り殺され、姦淫され、愛撫されているのは何故なのか、懇切丁寧に教えてくれる。
「わかっちゃいるけどやめられない」人間の本性を、「ちょっとだけよ」と官能的かつ芸術に昇華させながらあばく背徳名画の数々。本書ではカラー図版を豊富に掲載し、複数の画家が描く同じ画題の絵画を並べるなど、テーマを横軸として美術史を俯瞰し、理解を深める助けにもなる。
