西洋美術に描かれた背徳シーンを読み解く。
| Art, Culture | casabrutus.com | photo_Keiko Nakajima text_Mari Matsubara editor_Keiko Kusano
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『背徳の西洋美術史 名画に描かれた背徳と官能の秘密』池上英洋・青野尚子共著。エムディエヌコーポレーション刊。1,800円。

フォンテーヌブロー派《ガブリエル・デストレとその姉妹》1594年頃、ルーヴル美術館蔵。アンリ4世の愛人ガブリエル(右)の懐妊をほのめかす数々の兆が描かれている。為政者が妻の他に愛人を持つことなど当たり前の時代だった。

左ページのレンブラント作など、見開き3点の絵画はすべてバテシバの姿を描く。旧約聖書の中で、イスラエルの王ダヴィデが自身に忠実な部下の妻バテシバを寝取り、部下を激戦地に送り込んで死なせるという裏切りのストーリーだ。

ウィリアム・アドルフ・ブグロー《プシュケーをさらうアモール》1895年、個人蔵。美しい人間の娘プシュケーに恋したアモール(=クピド、ヴィーナスの使いであるキューピッド)。神と人間の恋愛を禁じる掟を破った末に結ばれたふたり。

ジャン・ブロック《ヒュアキントスの死》1801年、サン=クロワ美術館蔵。美少年の同性愛も頻出の画題だ。アポロンがヒュアキントス(死後ヒヤシンスに転生)と円盤投げをして遊び、円盤が誤ってヒュアキントスの額に当たってダウン、大丈夫〜?と介抱する図。足元には円盤とヒヤシンスの花が。

アルトドルファー(右上)ほか数々の画家が繰り返し描いた《ロトとその娘たち》。男色がはびこる町を怒った神が滅ぼし、唯一生き残った父とふたりの娘。子孫が絶えることを恐れた娘たち自ら、父親とセックスするというおぞましい旧約聖書・創世記の物語。

背中に羽の生えた幼児というよりは、すでに体つきが成熟していたり、同性愛的な視点を匂わすエロティックな姿で描かれるクピド(=キューピッド)の数々。日本で流布しているイメージとはかなり違う。

シチリア・カターニャの守護女神、聖アガタが純潔を守って拷問にあい、乳房を切り落とされた伝説。盆の上に自らの乳房をのせて持つパターン(右ページ)はよく描かれた。