柳宗悦も愛した「民画」の代表、大津絵の魅力に迫る。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

柳宗悦も愛した「民画」の代表、大津絵の魅力に迫る。

江戸時代に宿場の土産物として人気を博した大津絵。その中でも、近代日本の名だたる目利きたちによる旧蔵歴が明らかな作品約150点が集まる展示『もうひとつの江戸絵画 大津絵』が、〈東京ステーションギャラリー〉にて11月8日まで開催中です。

《鬼の行水》日本民藝館蔵。渡辺霞亭(1864〜1926)所有の名品と知られ、柳宗悦が「絶品」と激賞した作品。霞亭の死後、本作が売立に出た際、高値で山村耕花が手に入れた。再び売立に出ると、大原孫三郎が柳の依頼で入手し、後年、大原家から日本民藝館に寄贈された。
約150点の大津絵が集まる『もうひとつの江戸絵画 大津絵』展が、〈東京ステーションギャラリー〉にて11月8日まで開催中。文人画家の富岡鉄斎、洋画家の浅井忠、そして柳宗悦など当代きっての目利きたちが所蔵したことで知られる大津絵。本展では著名な目利きによる旧蔵歴が明らかな作品を集め、絵画としての大津絵の魅力に迫る。
《瓢箪鯰》日本民藝館蔵。猿が瓢箪をかかえて巨大な鯰の動きを封じようとしている。大津絵の人気の画題で作例は多いが、初期の作品は少なく貴重。後年、大津絵十種(=鬼の念仏、藤娘、雷公、瓢箪鯰、座頭、槍持、鷹匠、弁慶、矢の根、長頭翁)の一枚となった。
《古筆大津絵》より《猫と鼠》。笠間日動美術館蔵。鼠が猫にすすめられるままお酒を飲んだらその先はどうなるのか?と想像力を掻き立てられる。ピカソも同じ図柄の大津絵を所蔵していた。本図が収められていた画帖《古筆大津絵》は富岡鉄斎が所有していたことがわかっている。
《提灯釣鐘》日本民藝館蔵。釣鐘と提灯を天秤にかけようとしても、あまりに重さが違って話にならない。道理の通らなさに大津絵らしさが見える。柳宗悦は本図を「猿の性格を見事に捕へて表現した一図」と高く評価した。
《鬼の念仏》笠間日動美術館蔵。大津絵のなかで最も代表的な画題。末期にまで描き継がれ、夜泣き止めの効能があるとされた。
《傘さす女》笠間日動美術館蔵。粋な美人画。岸田劉生が《初期肉筆浮世絵》(1926年)にてカラー1Pを使って紹介した名品。
《大津絵図鑑》より《藤娘》。福岡市博物館蔵。《大津絵図巻》に収められた26図のうちの1図。絵巻の大津絵にはそれぞれ道歌が添えられる。なお、図巻箱内に吉川観方が「大津三井寺旧蔵之品」と記した包み紙があり、興味深い。《藤娘》は《鬼の念仏》に並んで大津絵を代表する画題と言える。
《大津絵図鑑》より《外法梯子剃》。福岡市博物館蔵。大黒が外法(福禄寿の異名)の長い頭に梯子をかけて剃っている。後年、大津絵十種に集約される画題のひとつ。
《頼光》滴翠美術館寄託。山口吉郎兵衛の旧蔵品として発見された5作品のうちのひとつ。山村耕花収蔵品の売立目録(1940年)に本作品の図版が掲載されており、表具は当時と同じである。本図は大江山で首を切られた鬼・酒呑童子の頭が源頼光にかみついている様子を描く。
そもそも大津絵を「民画」の代表と位置付けたのは、民藝運動の父、柳宗悦だ。その「民画」の特徴とは、(1)作者名が記されない、(2)実用性がある、(3)大衆の需要に応じて繰り返し描くために図柄が様式性を帯びている、(4)安価で提供するため絵に省略がある、(5)時として分業的で家族も制作に加わる、というものだ。

江戸時代初期より東海道の宿場大津周辺で量産され、土産物として人気を博した大津絵。大衆の喜ぶ絵を安価で素早く制作するため、型紙は版木押しを用いて手間を省き、短時間で彩色を施していた。そのため描く内容も時代とともに柔軟に変化し、はじめは仏画が中心だったものが、次第に鬼や動物、七福神など親しみやすい画題が増えていった。やがて形状を小型化し、護符としても使われたという。

本展では文化勲章を受章した洋画家・小絲源太郎が秘蔵した大津絵や、〈日本民藝館〉所蔵のコレクションを一気に公開。近代日本の文化人たちが旧蔵したことがわかる作品のみを展示しているため、旧蔵者がこだわった掛け軸の表装も見どころの一つだ。
《槍持鬼奴》個人蔵。「槍持奴」は古くからの画題で、のちに大津絵十種に数えられた。鬼は大津絵で人気のキャラクター。しかし、両者が組み合わされた作例は他になく、文献でも確認されていない。昨年、フランスで大津絵展を企画したクリストフ・マルケの所蔵品。
《長刀弁慶》大津市歴史博物館蔵。七つ道具を携えた弁慶が仁王立ちをしている。後年、大津絵十種に集約される画題のひとつ。本作は柳宗悦の案による凝った表装。丹波布による仕立てで、軸首には陶軸(バーナード・リーチ、あるいは河井寛次郎作か)が用いられている。
《青面金剛》静岡市立芹沢銈介美術館蔵。初期の大津絵は仏画中心であったが、青面金剛は江戸時代に流行した庚申信仰の本尊で、大津絵の作例も多い。左右には猿、下部には木版による雄雌の鶏が配されている。

『もうひとつの江戸絵画 大津絵』

〈東京ステーションギャラリー〉東京都千代田区丸の内 1-9-1。TEL 03 3212 2485。〜11月8日。10時〜18時(金曜〜20時、入館は30分前まで)。月曜休(11月2日は開館)。入館料1,200円(入館券は事前購入制)。

AIがあなたにおすすめ

※過去の記事も表示されます