柳宗悦も愛した「民画」の代表、大津絵の魅力に迫る。
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《鬼の行水》日本民藝館蔵。渡辺霞亭(1864〜1926)所有の名品と知られ、柳宗悦が「絶品」と激賞した作品。霞亭の死後、本作が売立に出た際、高値で山村耕花が手に入れた。再び売立に出ると、大原孫三郎が柳の依頼で入手し、後年、大原家から日本民藝館に寄贈された。

《瓢箪鯰》日本民藝館蔵。猿が瓢箪をかかえて巨大な鯰の動きを封じようとしている。大津絵の人気の画題で作例は多いが、初期の作品は少なく貴重。後年、大津絵十種(=鬼の念仏、藤娘、雷公、瓢箪鯰、座頭、槍持、鷹匠、弁慶、矢の根、長頭翁)の一枚となった。

《古筆大津絵》より《猫と鼠》。笠間日動美術館蔵。鼠が猫にすすめられるままお酒を飲んだらその先はどうなるのか?と想像力を掻き立てられる。ピカソも同じ図柄の大津絵を所蔵していた。本図が収められていた画帖《古筆大津絵》は富岡鉄斎が所有していたことがわかっている。

《提灯釣鐘》日本民藝館蔵。釣鐘と提灯を天秤にかけようとしても、あまりに重さが違って話にならない。道理の通らなさに大津絵らしさが見える。柳宗悦は本図を「猿の性格を見事に捕へて表現した一図」と高く評価した。

《鬼の念仏》笠間日動美術館蔵。大津絵のなかで最も代表的な画題。末期にまで描き継がれ、夜泣き止めの効能があるとされた。

《傘さす女》笠間日動美術館蔵。粋な美人画。岸田劉生が《初期肉筆浮世絵》(1926年)にてカラー1Pを使って紹介した名品。

《大津絵図鑑》より《藤娘》。福岡市博物館蔵。《大津絵図巻》に収められた26図のうちの1図。絵巻の大津絵にはそれぞれ道歌が添えられる。なお、図巻箱内に吉川観方が「大津三井寺旧蔵之品」と記した包み紙があり、興味深い。《藤娘》は《鬼の念仏》に並んで大津絵を代表する画題と言える。

《大津絵図鑑》より《外法梯子剃》。福岡市博物館蔵。大黒が外法(福禄寿の異名)の長い頭に梯子をかけて剃っている。後年、大津絵十種に集約される画題のひとつ。

《頼光》滴翠美術館寄託。山口吉郎兵衛の旧蔵品として発見された5作品のうちのひとつ。山村耕花収蔵品の売立目録(1940年)に本作品の図版が掲載されており、表具は当時と同じである。本図は大江山で首を切られた鬼・酒呑童子の頭が源頼光にかみついている様子を描く。

《槍持鬼奴》個人蔵。「槍持奴」は古くからの画題で、のちに大津絵十種に数えられた。鬼は大津絵で人気のキャラクター。しかし、両者が組み合わされた作例は他になく、文献でも確認されていない。昨年、フランスで大津絵展を企画したクリストフ・マルケの所蔵品。

《長刀弁慶》大津市歴史博物館蔵。七つ道具を携えた弁慶が仁王立ちをしている。後年、大津絵十種に集約される画題のひとつ。本作は柳宗悦の案による凝った表装。丹波布による仕立てで、軸首には陶軸(バーナード・リーチ、あるいは河井寛次郎作か)が用いられている。

《青面金剛》静岡市立芹沢銈介美術館蔵。初期の大津絵は仏画中心であったが、青面金剛は江戸時代に流行した庚申信仰の本尊で、大津絵の作例も多い。左右には猿、下部には木版による雄雌の鶏が配されている。