教科書には載っていない、日本美術の “裏ワザ鑑賞”とは!? | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

教科書には載っていない、日本美術の “裏ワザ鑑賞”とは!?

〈サントリー美術館〉が、リニューアルオープン記念展の第2弾として『日本美術の裏の裏』展を開催。日本美術の「愉しみ方」に焦点を当てた展示構成で、作品鑑賞の新しい視点を紹介する。

《青楓瀑布図》円山応挙 一幅 江戸時代 天明7年(1787) サントリー美術館
7月22日にリニューアルした〈サントリー美術館〉。リニューアルオープン記念展の第2弾として、9月30日から『日本美術の裏の裏』展がはじまった。本展では同館の基本理念である「生活の中の美」の“愉しみ方”にフォーカスしながら、日本ならではの美意識に根ざした収蔵品を展示。古の人々の“愉しみ方”を追体験することは、現代人にとって知られざる「裏ワザ鑑賞」と言えるかもしれない。

展示の構成は6章に分かれており、それぞれのテーマに沿った室内装飾や調度品を紹介する。

第1章:空間をつくる

重要文化財 《四季花鳥図屛風》 伝 土佐広周 六曲一双のうち左隻 室町時代 15世紀 サントリー美術館
重要文化財 《四季花鳥図屛風》 伝 土佐広周 六曲一双のうち右隻 室町時代 15世紀 サントリー美術館
円山応挙の《青楓瀑布図》や土佐広周の《四季花鳥図屛風》に対して、「写実的だ」「爽やかな色彩だ」と、技法について語ることが多いかもしれない。そこで本章では、この絵をどこに飾ると良いか、飾るとそこがどのような空間になるかと想像を広げる。

襖や屛風などの大画面に風景を描くときには、しばしば春夏秋冬がすべて盛り込まれるが、四季が同時に存在する世界は現実にはあり得ない。しかしそれは、時間も空間も超越したパラダイスの表現であった。つまり屛風は、部屋に飾るだけで異空間を出現させることができる装置なのだ。元祖「仮想現実」として日本絵画を見てみると、新たな発見があるに違いない。

第2章:小をめでる

雛道具 七澤屋 一式 江戸時代 19世紀 サントリー美術館
七種盃 仁阿弥道八 七口 江戸時代 天保9年(1838) サントリー美術館
清少納言の『枕草子』には、「なにもなにも、ちひさきものはみなうつくし」という一節がある。「小さいものは無条件にかわいい!」という感覚は、いつの時代も変わらないのだ。

例えば江戸時代後期、上野の不忍池近くにあった七澤屋は、ミニチュアサイズの雛道具を得意とした人形店で、大名や裕福な町人の間で人気を博した。本章で紹介するさまざまな調度品のミニチュアは、写真だけでは見分けがつかないほど精巧に作られている。

第3章:心でえがく

《かるかや》室町時代 16世紀 サントリー美術館
《おようのあま絵巻》(部分)室町時代 16世紀 サントリー美術館
日本には技巧の優劣を超越した、愛すべき作風の絵が数多く残っている。それは写実的に描くことだけが評価の基準ではなかったこと、そして何百年も前から、無邪気な絵の価値を認め、伝えようとした人々の存在を物語っている。

中でも《かるかや》は不思議と心惹かれる作品だ。技法とは無縁でありながら迷いのない筆の走りからは、描き手の生き生きとした心の動きが伝わってくる。本章では室町時代のお伽草子絵巻を中心に、絵心あふれる物語絵の魅力を紹介する。

第4章:景色をさがす

《旅枕花入》 信楽 一口 室町時代 16世紀 サントリー美術館
壺 銘 野分 信楽 一口 室町時代 15世紀 サントリー美術館
見る方向や角度によって異なるやきものの「正面」がどこであるかは、見る人によって違う場合がある。

たとえば、《旅枕花入》では壁や柱に掛けるための穴の跡がいくつも残っており、歴代の所有者が自分好みの正面を見定めてきた歴史が伺える。作品を360度巡る本章では、「この作品にはこんな顔があったのか」という気付きを得られるだろう。

第5章:和歌でわかる

《白綸子地橘亀甲文字模様小袖》 一領 江戸時代 18世紀 サントリー美術館
《色絵桜楓文透鉢》 仁阿弥道八 一口 江戸時代 19世紀 サントリー美術館
かつて身近な存在だった和歌の世界は、美術作品を生み出すイメージソースでもあった。文字と絵が一体化した美しさや工芸の斬新なデザインなどは、多くの人々が和歌の知識を共有していたからこそ楽しめたのだ。

一方、和歌とは縁遠くなってしまった現代では、日本美術を見てもピンとこないことも多いかもしれない。そこで本章では、和歌がわかればもっと楽しくなる作品を紹介する。

第6章:風景にはいる

《青緑山水画帖》 池大雅 江戸時代 宝暦13年(1763) サントリー美術館
《東海道五十三次》(隷書版)のうち原 五十五枚のうち 歌川広重 江戸時代 弘化4年~嘉永5年(1847年~1852年) サントリー美術館
風景画に近づくと、しばしば山道や小舟の上に、点のように小さく描かれた人物の姿を見つけることができる。

たとえば、江戸時代の絵師・池大雅の《青緑山水画帖》のうち、《田家桃源図》は桃の花咲くのどかな山村を表した作品。A4サイズ程の小さな画面に、1cmに満たない人物が7人も描かれている。本章では、こうした風景画の「点景人物」を案内人として、それぞれの視線や会話を想像することで、風景を内側から眺めることを試みる。

本展の総合タイトルにある「裏」には、見えない部分だけでなく、奥深く、隠された内部という意味がある。目に見えていないところにこそ、作品の本当の魅力が隠れているかもしれない。

『リニューアル・オープン記念展 Ⅱ 日本美術の裏の裏』

〈サントリー美術館〉
東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3階。10時~18時(金曜・土曜、11月2日・11月22日〜20時。入館は閉館30分前まで)。火曜休(11月3日・24日〜18時開館)。入館料1,500円。期間中に展示替えあり。

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