靴の魔術師、クリスチャン・ルブタンの創造を支えるイマジネーションの世界に浸る。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

靴の魔術師、クリスチャン・ルブタンの創造を支えるイマジネーションの世界に浸る。

靴デザインの歴史を塗り替え続けるデザイナー、クリスチャン・ルブタン。自らが手がけた展示構成・デザインで、クリエーションの源泉を解き明かす異色の大型展が、パリのアール・デコの珠玉建築〈ポルト・ドレ宮〉内〈国立移民史博物館〉で開催中。

若き日に〈ポルト・ドレ宮〉内の〈熱帯水族館〉で見たきらめく魚の美しさに触発され、鯖の皮を使ったハイヒールを試作したルブタン。こうした未発表作品の試作の展示も見所だ。© Christian Louboutin
赤いソールをトレードマークに、大胆な素材使いやフォームでストーリー性溢れる靴を生み出してきた靴デザイナー、クリスチャン・ルブタン。今春、パリ東部ヴァンセーヌの森近くの〈ポルト・ドレ宮〉を舞台に、その創造世界に迫る大型展覧会を開催する。この〈ポルト・ドレ宮〉こそが彼の原点ともいえる特別な建築と空間であったため、ルブタン自身が会場に選んだという。

1931年の植民万国博覧会のために建設された〈ポルト・ドレ宮〉は、堂々とした意匠と、鉄柵や壁画、モザイクの床など、細部に宿るアール・デコ装飾が美しい唯一無二の建造物だ。博覧会後も、内部にさまざまな文明のアートや工芸を紹介する博物館と地下の水族館を存続させ、長く市民に愛されてきた。〈ポルト・ドレ宮〉のあるパリ12区で生まれたルブタンにとって、幼少時から幾度も訪れたこの場所(当時は〈アフリカ・オセアニア美術館〉)は「初めて世界の文化やアートの門戸が開き、独自の美的感情を育んだ場所だった」と言う。

今回の展覧会では、11のチャプターで構成した各展示室に異なる内装デザインを施した。フランスはもとより、セビリヤ、ブータン、パキスタンなど世界各国の指折りの工芸家が、その空間作りに参加したという。
セビリヤの銀細工職人が製作した駕籠が神殿のような雰囲気を醸し出す《トレジャールーム》。ルブタンのデザイン史を垣間見る名作が並ぶ中、中央の駕籠には(非現実的な、夢の)未完成・未公開のシューズを展示。これらの靴の誕生の物語と創造のヒストリーへと閲覧者を誘う最初の展示室だ。© Marc Domage
全11の展示会場の一つ《初期》。スケッチを始めた高校時代や、家の屋根裏部屋で様々な形や素材の研究を重ねた頃の象徴として、ルブタンの守護聖人を表す特製のステンドグラスを配す。ブランド創設以前の初期のデザイン300足の中から、未発表の試作を含む約60点を当時のスケッチやムードボードとともに展示。© Marc Domage
ルブタンのこれまでのクリエーションを支えた多分野・多国籍のアーティストや職人、文化人に協力を仰いだ展覧会。展示室《キャバレー》には、ブータンで彫刻された柱が妖しくも美しい空間を構成。© Marc Domage
約100に及ぶ工程を経て出来上がる靴の制作を、(ミニチュアの)クリスチャン・ルブタンがユーモラスに解き明かす展示室《アトリエ》。© Marc Domage
一見、英国のおばあさんの家のリビングのような展示室《暗示と投影》。だが、女性のヒップがモチーフの壁紙ほか、脚、ハイヒールを履いた足、顔や手などをファブリックに忍ばせた騙し絵がインテリアの細部に潜む。この部屋の(架空の)住人は、マダム・ボストン・フルエット。書き物机の上の彼女宛の古い手紙から住人の名を明かすといった演出の細やかさにも脱帽。© Marc Domage
セビリヤの銀細工職人が製作した駕籠が神殿のような雰囲気を醸し出す《トレジャールーム》。ルブタンのデザイン史を垣間見る名作が並ぶ中、中央の駕籠には(非現実的な、夢の)未完成・未公開のシューズを展示。これらの靴の誕生の物語と創造のヒストリーへと閲覧者を誘う最初の展示室だ。© Marc Domage
全11の展示会場の一つ《初期》。スケッチを始めた高校時代や、家の屋根裏部屋で様々な形や素材の研究を重ねた頃の象徴として、ルブタンの守護聖人を表す特製のステンドグラスを配す。ブランド創設以前の初期のデザイン300足の中から、未発表の試作を含む約60点を当時のスケッチやムードボードとともに展示。© Marc Domage
ルブタンのこれまでのクリエーションを支えた多分野・多国籍のアーティストや職人、文化人に協力を仰いだ展覧会。展示室《キャバレー》には、ブータンで彫刻された柱が妖しくも美しい空間を構成。© Marc Domage
約100に及ぶ工程を経て出来上がる靴の制作を、(ミニチュアの)クリスチャン・ルブタンがユーモラスに解き明かす展示室《アトリエ》。© Marc Domage
一見、英国のおばあさんの家のリビングのような展示室《暗示と投影》。だが、女性のヒップがモチーフの壁紙ほか、脚、ハイヒールを履いた足、顔や手などをファブリックに忍ばせた騙し絵がインテリアの細部に潜む。この部屋の(架空の)住人は、マダム・ボストン・フルエット。書き物机の上の彼女宛の古い手紙から住人の名を明かすといった演出の細やかさにも脱帽。© Marc Domage
ルブタンがブランド創設前にスケッチを重ね、さまざまな形や素材の造形に取り組んだ時代を彷彿とさせる、特製のステンドグラスで囲んだ展示室《初期》。100に及ぶ靴造りの工程が、最終的な靴のデザインを支えることを可視化させる展示室《アトリエ》。壁紙や家具の布など、室内装飾の一見ありきたりな抽象模様が、実は身体やハイヒールをモチーフにしただまし絵というリビングのような展示室《暗示と投影》。そのどれもが、彼の創作にインスピレーションを与えた有形無形のエレメントを表現する異色の展示空間だ。

最終章《空想博物館》には、デザイナーのセレクトによって多数の美術館やコレクターから集めた美術・工芸品を展示する。「謎めいて、神秘的な作品やオブジェにここ(ポルト・ドレ宮)で出会った」という彼が、時を経てこの場所に、世界のさまざまな文明のオブジェを集める。ルブタンのアイコニックなハイヒール始め、未公開の作品も多数展示する同展。単なる靴の展示に止まらぬ、まさにルブタンワールドへの招待だ。

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