ポーラ美術館で時空を超えたアートが響きあう!|青野尚子の今週末見るべきアート | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

ポーラ美術館で時空を超えたアートが響きあう!|青野尚子の今週末見るべきアート

箱根の森の中にある〈ポーラ美術館〉で、時を超えたアートが出合う展覧会が開かれています。12組の現代アーティストとポーラ美術館のコレクションなどが響き合う『シンコペーション』展は美術史の新しい読み方も楽しめます。

セレスト・ブルシエ=ムジュノ《クリナメン v.7》2019年。©Céleste Boursier-Mougenot 箱根の森の中に出現したミニチュアの湖のよう。
セレスト・ブルシエ=ムジュノ《クリナメン v.7》2019年。©Céleste Boursier-Mougenot 箱根の森の中に出現したミニチュアの湖のよう。
モネやピカソら、主に近代美術のコレクションで知られるポーラ美術館。『シンコペーション:世界の巨匠たちと現代アート』展はこの美術館で開かれる、初めての本格的な現代美術の展覧会だ。「シンコペーション」とは音楽用語で、本来なら弱拍になる音を強拍にするなどしてリズムに変化をつける手法。この展覧会では通常あまり一緒に展示されることのない現代美術と近代以前の美術を組み合わせることで、それぞれの作品の意外な顔を見せる。
展覧会のプレリュードとして現れる、アンリ・マティス《ジャズ》。切り絵によるシンプルな絵。
晩年のクロード・モネが繰り返し描いた《睡蓮》(1907年)。光と水のゆらぎをカンヴァスに定着させている。
展覧会のプレリュードとして現れる、アンリ・マティス《ジャズ》。切り絵によるシンプルな絵。
晩年のクロード・モネが繰り返し描いた《睡蓮》(1907年)。光と水のゆらぎをカンヴァスに定着させている。
会場に入ると、まずマティスの切り絵による《ジャズ》が、その次にモネの《睡蓮》が現れ、展示室の先から澄んだ音が聞こえてくる。いくつもの白い器が水面に浮かび、ぶつかりあって音を出しているのだ。セレスト・ブルシエ=ムジュノの作品《クリナメン v.7》では器の大小によって音の高低が変わる。どの器がどうぶつかるかは偶然によるから、器が奏でる“音楽”も予測できない。
大小の器が響き合うセレスト・ブルシエ=ムジュノの作品《クリナメン v.7》(部分)。
この作品からは、水に浮かぶ睡蓮や水面に映る光や雲の移ろいをカンヴァスにとどめようとしたモネとの関連を容易に思い浮かべることができるだろう。ブルシエ=ムジュノも「水鏡としてこの作品をつくった」と語る。単純化された色や形の反復やずれがジャズのように活き活きとしたリズムを刻むマティスの作品にも通じるものがある。
左/石塚元太良《Le Conte_Glacier #001》、右/ルネ・マグリット《前兆》(1938年)。
石塚元太良《Le Conte_Glacier #001》。
左/石塚元太良《Le Conte_Glacier #001》、右/ルネ・マグリット《前兆》(1938年)。
石塚元太良《Le Conte_Glacier #001》。
「真を写す」と書いて写真と読む。しかし、もとになった英語はphotography、「光が描く絵」といったほうが近いニュアンスだ。石塚元太良がアラスカの氷河を捉えた写真は同じく氷河を描いたマグリットの絵と一緒に並べられている。マグリットの絵では洞窟の向こうに雪山が描かれているのだが、見方によっては鳥のシルエットが浮かび上がる。石塚の写真でも、山の手前に氷山が写っているのに洞窟の向こうに氷河が写っているように見えるものがある。石塚はこれらの作品を撮るために10年もの間、氷河のある地域に通ったという。夜、ライティングして撮ったものも。「10日間ぐらい、シーカヤックに乗ってひとりで撮っていると、目の前の景色が迫ってくるような万能感を覚えた」とも語る。私たちが見ている現実とは何なのか、ふたりの作品が問いかける。