塩田千春の圧倒的なインスタレーション空間へ。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

塩田千春の圧倒的なインスタレーション空間へ。

赤や黒の糸、舟、燃えたピアノ、窓枠……。さまざまな意味が読み取れるオブジェが大空間を埋め尽くす、塩田千春のインスタレーションが〈森美術館〉で展示中。過去最大級の個展『塩田千春展:魂がふるえる』に込めた思いを聞きました。

《不確かな旅》(2016/2019年)。「糸は(略)まるで人間関係を表すように、私の心をいつも映し出す。」との説明がある。
《不確かな旅》(2016/2019年)。「糸は(略)まるで人間関係を表すように、私の心をいつも映し出す。」との説明がある。
塩田千春は現在、ベルリンを拠点に活動しているアーティスト。国内外の美術館での個展のほか、『瀬戸内国際芸術祭』などの芸術祭にも参加、2015年にはヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館の代表にも選出された。見る者を包み込むような大型のインスタレーションには崇高ささえ感じられる。

今回の個展は、塩田にとって特別なものだった。単に規模が大きいというだけでなく、彼女の人生にとっての大きな転機と重なっていたからだ。

「2年前、この展覧会のお話をいただいたのですが、その翌日には入院して再発したガンの治療を受けることになっていたんです。ここまで死と寄り添いながらつくってきた展覧会は初めてでした」
《時空の反射》(2018年)。ドレスは皮膚のように、身体の内部と外部の境界を暗示する。鏡に鑑賞者の姿が映り込んで、作品の境界もあいまいになる。
《時空の反射》(2018年)。ドレスは皮膚のように、身体の内部と外部の境界を暗示する。鏡に鑑賞者の姿が映り込んで、作品の境界もあいまいになる。
塩田は治療と並行して展覧会の準備を進めることになる。

「ベルトコンベアに乗せられたようにシステマチックに治療が進められていくうちに、自分の生や死がよくわからなくなってきました。なぜ心があるのか、もし心がなければそういったシステムに乗っていけるのに、といったことも考えました。この心を説明するには作品をつくるしかなかった」
新作《外在化された身体》(2019年)。切り込みを入れられ、広げられた牛の皮の下にばらばらになった身体のパーツが置かれている。
展覧会タイトルは「魂がふるえる」。塩田は魂をどんなものだと考えているのだろうか。

「ある人の魂について語ることは、その人の全体を見ることだと思うんです。あるいは、魂ってものの全体を見ることなのではないか。そのものの真実の姿や、その中に本当にあるものを探しているんです」
《小さな記憶をつなげて》(2019年)。塩田が集めている小さなおもちゃや家具が並んでいる。永遠に遊び続けられる部屋のよう。
《小さな記憶をつなげて》の中には、糸で結びつけられたものも。
《小さな記憶をつなげて》(2019年)。塩田が集めている小さなおもちゃや家具が並んでいる。永遠に遊び続けられる部屋のよう。
《小さな記憶をつなげて》の中には、糸で結びつけられたものも。
展覧会は彼女の初期のキャリアから振り返るもの。子供の時に描いた絵や初期に手がけていたパフォーマンスの記録などが展示されている。

「12才のときに画家になる、って決めたんです。でも技術が上がって上手になるにつれて、誰かの物真似でしかない絵になってしまった。私というものが見えてこないんです。ほんとにやりたいものって何だろうと考えて、20才の頃に絵をやめてインスタレーションを始めました」