〈光の教会〉を国立新美術館に増築!? 型破りの安藤忠雄展をリポート。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS facebook-a facebook instagram line twitter youtube

〈光の教会〉を国立新美術館に増築!? 型破りの安藤忠雄展をリポート。

建築家・安藤忠雄の半世紀に渡る仕事を俯瞰する『安藤忠雄展-挑戦-』が国立新美術館でスタートした。代表作〈光の教会〉を美術館の敷地に1/1のサイズで再現する、前代未聞のプロジェクトも実現! 心と体でANDO建築を感じられる展覧会、その見どころをレポートします。

スペシャルインタビュー。〈光の教会〉インスタレーションなどをたっぷり語ります。
1/1サイズで再現された〈光の教会〉。コンクリートで覆われた空間に十字の光が差す。実際の〈光の教会〉は、十字のスリットや開口部にガラスが嵌められているが、今回は安藤の最初のアイデアに忠実に、ガラスを嵌めずに施工された。
約270点の資料から89のプロジェクトを辿る、過去最大規模の個展。

「挑戦」。安藤が展示のタイトルに掲げたのは、自身の建築人生を短く、かつ的確に表したこの言葉だった。1969年に設計活動を始めて50年余り。展覧会の入口に掲げられたステートメントでは、これまで手がけたすべての建築が「いつも私にとって“挑戦”であった」と振り返っている。その戦いの軌跡を6つのセクションで辿るのがこの展覧会だ。

セクション1「原点/住まい」では安藤の名を世に知らしめた代表作〈住吉の長屋〉を筆頭に、100を越える住宅建築の中からハイライトを紹介している。興味深いのは、図面や模型だけでなく、安藤が施主へ贈ったメッセージカードや、施主が住宅を依頼した動機などを語ったアンケートも展示されていること。〈住吉の長屋〉に至ってはその全図面を公開する充実の内容だ。
展示の導入は安藤のアトリエの再現コーナー。本棚やデスクがそっくりそのまま美術館内に現れた。
安藤の事務所である〈大淀のアトリエII〉(大阪市)模型
展示の導入は安藤のアトリエの再現コーナー。本棚やデスクがそっくりそのまま美術館内に現れた。
安藤の事務所である〈大淀のアトリエII〉(大阪市)模型
〈住吉の長屋〉の模型。このほかに会場には〈住吉の長屋〉の全図面が展示され、細かな書き込みなども見ることもできる。
〈住吉の長屋〉の模型(部分)。
〈住吉の長屋〉の模型。このほかに会場には〈住吉の長屋〉の全図面が展示され、細かな書き込みなども見ることもできる。
〈住吉の長屋〉の模型(部分)。
〈住吉の長屋〉のスケッチ(部分)。
光と風を感じるための、原寸大の〈光の教会〉。

住宅プロジェクトを辿りながら奥に長い展示空間を進むと、セクション2の野外展示へ誘導される。ガラス張りの廊下の先に見えてくるのは、コンクリート壁の建物。実寸大で再現された〈光の教会〉だ。
〈光の教会〉室内には3つのベンチが再現された。床やベンチには実際の〈光の教会〉と同じく、枕木が使用されている。十字のスリットや開口部にガラスが嵌められていないことで風が通り抜け、外の音も聞こえる。天候や時間帯を変えて、繰り返し訪れてみるのも面白い。

この建物、美術館の“増築部分”として、正式に申請をして完成したものだ。もちろん素材はコンクリートで、床やベンチには実際の〈光の教会〉と同じ枕木が使用されている。唯一異なるのは、十字のスリットや壁の開口部にガラスが嵌められていないこと。「光や風といった自然の断片を引き込む」という、安藤が当初、思い描いたプランがそのままに再現されているのだ。
美術館内にこれだけの規模で設営をするとなると増築の申請が必要。施工費用も本物の建築を建てるのと変わらないくらいかかっているという。
〈光の教会〉スケッチ(部分)。
美術館内にこれだけの規模で設営をするとなると増築の申請が必要。施工費用も本物の建築を建てるのと変わらないくらいかかっているという。
〈光の教会〉スケッチ(部分)。
「建築は体験するもの」。この考えは安藤が繰り返し唱え、今回の展示で最も大事にしたことと言えるかもしれない。空間に流れる風、差し込む光、それらがあってはじめて建築は人の心を動かすことができる。〈光の教会〉を原寸大で再現したのも、そんな思いがあってのことだ。