伊東豊雄さん、これがオペラハウスですか? | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

伊東豊雄さん、これがオペラハウスですか?

台中で建設中のオペラハウスの9年間に及ぶ軌跡を追う展覧会が〈TOTOギャラリー・間〉にて開催中! 伊東豊雄さんに創造の秘密をうかがいました。

地中に開いた洞窟か動物の巣穴を切り取ったような〈台中メトロポリタンオペラハウス〉(正式名称は〈台中国立歌劇院〉に決定)。来年の開館に向けて急ピッチで工事が進む。周囲は公園になる予定。photo_Iwan Baan
Q なぜこんな形なのですか?

内部と外部がつながるような建築をつくりたいと思ったんです。そこで生物学者の福岡伸一さんが「人間の胃の中は外部である」と言っていたのを思い出しました。人間の体はチューブのようになっていて、外部と自然につながっている。そんな屋外でもあり、屋内でもあるような中間的な領域を持つ建築にしたいと考えたんです。
〈台中メトロポリタンオペラハウス〉現場の様子。ルーフガーデン(2013年4月)。屋上の床もゆるやかにうねる。完成後は芝生や蔓草が植えられて、イベントやカフェなどに使われる予定。©中村 絵
Q 外側は箱のようですが、中は三次元曲面で覆われています。どうやって工事したのですか?

「トラスウォール工法」を採用しました。カーブさせた2本の鉄筋の間をジグザグに曲げた鉄筋でつないだパーツをつくり、それを一定の間隔に並べて垂直方向の鉄筋で固定。三次元曲面に配筋された壁をつくります。さらに、その両面を金網で覆って、その間にコンクリートを流し込むのです。建物の中には同じ曲面はないので、すべてのパーツが違う形をしています。ほとんど手づくりと言ってもいい建築です。
トラスウォール配筋(2013年3月)。現場につくった小さな工場で部材をつくり、一つ一つ組み上げていく。©中村 絵
構造コンセプトの模型写真。始めのうちは金網で模型をつくって検討していた。©伊東豊雄建築設計事務所
Q 中はどうなっているのですか。

大きさの違うオペラ劇場が3つ、そのほかにリハーサル室やレストランなどがあります。2つの大きなオペラ劇場はそれぞれ赤、青に塗られていて、下方から上方へグラデーションのように色が淡くなっています。青いホールは海の底のような感じです。一番小さな黒いホールはステージの後ろが開くようになっていて、外部の野外劇場に続いています。1階には公園の緑や水路が中まで続き、通り抜けもできるようになります。
エントランスホール(2014年5月)。白く塗られた曲面に光が回る。©伊東豊雄建築設計事務所
Q ホール以外のところ、ホワイエなどは白いんですね。

ホワイエには自然光が入って、白い曲面に反射して光が回り込むような不思議な空間になると思います。丸く開いたところからは周囲に林立する新築の高層マンションが見えて、古代人が洞窟の中から未来都市を見ているような感じになるかもしれません。


Q 来年オープンしたら、公演してほしい歌手や演目はありますか。

僕は姉が音楽をやっていたので、学生のころイタリアオペラを見に東京文化会館に徹夜で並んだりしていたんです。今は仕事が忙しくてなかなか行けませんが、見たいのはやはり三大テノールですね。パヴァロッティは生前に台湾に来たことはあったのですが、当時は本格的なオペラができるホールがなくてソロ公演だったんです。このオペラハウスで『カルメン』や『フィガロの結婚』が見られたらいいなあと思います。

『伊東豊雄展 台中メトロポリタンオペラハウスの軌跡 2005-2014』

2005年にコンペで優勝し、来年秋に開館予定のオペラハウスのプロセスを追う。空間の一部を体感できる三次元曲面の原寸大モックアップのほか、建設現場の記録映像なども。〜12月20日。 ●〈TOTOギャラリー・間〉

東京都港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル3F
TEL 03 3402 1010。11時〜18時。日曜・月曜休(10月26日・27日、11月2日・3日は開館)。入場無料。公式サイト