日本勢が大健闘! 『ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展』各賞、現地詳細レポート。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

日本勢が大健闘! 『ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展』各賞、現地詳細レポート。

“How will we live together?ー我々はいかに共存していくのか?”、をテーマに開催中の第17回『ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展』。妹島和世を審査員長に選ばれた各賞の発表が、9月1日に行われた。コロナ禍でも世界はつながっている──そんな希望が感じられる展示の数々を、各国の建築家の言葉とともにお届けします。

9月1日、妹島和代を審査員長にビエンナーレの金獅子ほか各賞が発表になった。 photo_Andrea Avezzu - courtesy La Biennale di Venezia
コロナ規制が少し緩和になった8月末のヴェネチア。5月のオープニング時には渡航できなかった展示者も一同に集まり、妹島和世を審査員長に「建築界のオリンピック」とも称される『ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展』の各賞が発表された。

「“共存”がテーマの今回は、特定の建築家に関する展示に代わって、ほぼ全てがグループやコミュニティによる取り組みが展示されています。同時に国や分野の枠を越えたコラボレーションが見られたのも特徴的でした。日本館は賞には漏れましたが好評で、受賞作のうち2つは日本人が参加したプロジェクトと、私としても嬉しい驚きがありました」(妹島和代)

各賞とともに、日本館についてもレポートしたい。

●金獅子賞:アラブ首長国連邦館 『Wetland 』

アラブ首長国連邦館の前で金獅子を掲げるのは、レバノン出身のワイル・アル・アワール。共同キュレーター・寺本健一は、現在〈waiwai〉を離れ独立している。 photo_Megumi Yamashita
アラブ首長国連邦(UAE)にある「サブカ」と呼ばれる塩で覆われた湿原「ウェットランド」をテーマに、サステナブルなセメントのプロトタイプの展示が金獅子賞を受賞。ドバイと東京にスタジオを置く〈waiwai〉のワイル・アル・アワールと寺本健一がキュレーションを担当している。

石油産出によって急激に近代から進み、アブダビ、ドバイなど高層ビルが林立するUAEは、国民一人当たりのCO2排出量では世界のトップ5。パリ協定に基づき2030年までに排出量の大幅削減が喫緊の課題になっている。どうしたらいいものか? ワイル・アル・アワールに話を聞いた。
サステナブルなセメントをキャストした2400個のパーツが積み上げられた展示の様子。 photo_Megumi Yamashita
ニューヨーク在住の写真家ファラ・アル・カシミが、「サブカ」と鉄塔や送電線が隣り合わせる様子を警告的に捉えた写真。 photo_courtesy of National Pavilion UAE – La Biennale di Venezia
サブカの表面に見られる塩が結晶化したもの。サブカでは豊かな生態系が育まれ、熱帯雨林よりCO2を吸収するという。 photo_Megumi Yamashita
●高塩度排水を再利用したセメント

「まずは昔ながらの建築に注目しました。エジプトのシワという街には紀元前1万年前に、塩と土を混ぜたブロックで建てられた家並みが今も残っています。また、ドバイをはじめ、湾岸諸国にはサンゴ礁を建材にした建物もあります。

一方、今ではほとんどの建物がセメントを結合材とするコンクリートで作られています。実際、セメントは水に次ぎ世界で2番目に消費量の多い材料で、セメント産業によるCO2排出量は人為的排出量の約8%にもなります。そこで持続可能な代替セメントはできないものか、と考えました。

サブカを観察すると、塩が結晶化していることがわかります。となると、そこには『結合させる物質』が含まれているはず。そこでアメリカ大学シャルジャ校の協力でリサーチを進め、その物質が酸化マグネシウムであることを突き止めました。

サブカは不毛の地のように見えますが、そこには何層にも渡って生物、植物、微生物らの生態系が形成され、1平方メートルあたりでは熱帯雨林より二酸化炭素を多く吸収することがわかっています。となると、ここから塩を採集するわけにはいきません。

そこで着目したのが、海水の淡水化で発生する高塩度の排水です。UAEは海水の淡水化が世界で3番目に多く、垂れ流しにされる濃縮塩水が海の生態系に与える影響が問題になっています。そこでニューヨーク大学アブダビ校の協力を得て、この濃縮塩水から酸化マグネシウムを分離し、それを使ったセメントの製造に成功しました」
酸化マグネシウムを結合材にしたセメントのプロトタイプは東京大学の佐藤淳研究室と小渕祐介研究室が協力で製作された。 photo_Courtesy of National Pavilion UAE – La Biennale di Venezia and waiwai
展示に使われたパーツは、砂の上の窪みにセメントを流す方式でヴェネチアで作られた。 photo_Courtesy National Pavilion UAE - La Biennale by Sahil Abdul Latheef
手描きの窪みに流されたセメント。固まったサンゴ型のパーツは一つずつ形が異なる。 photo_Courtesy of National Pavilion UAE – La Biennale di Venezia and waiwai
ココナッツなど天然のファイバーをミックスすることで、セメントの強度を上げている。 photo_Megumi Yamashita
「最終的なプロトタイプの製作と、構造的に最適な積み上げ方などに関しては、東京大学の佐藤淳研究室と小渕祐介研究室に協力いただきました。プロトタイプはパーツから成り、砂に手作業で描いた窪みにこのセメントを流し込んで作っています。フォルムはサンゴをイメージしたもので、UAEの地質的、また歴史的なアイデンティティを表現したものです」(ワイル・アル・アワール)

館内の展示は工業化と隣り合わせたサブカの様子を捉えた写真と、2400個のサンゴ型のプロトタイプを積み上げたストラクチャーによるシンプルな構成。詳しい内容は本にまとめられている。アーティスティックに表現された展示は、環境破壊への問題提起にとどまらず、国境を越えたコラボレーションによる具体的な解決策の提案でもある。そのことが高く評価されての金獅子受賞となった。
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