【東京・豊島区】蘇った漫画ファンの聖地〈トキワ荘〉へ。|甲斐みのりの建築半日散歩 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

【東京・豊島区】蘇った漫画ファンの聖地〈トキワ荘〉へ。|甲斐みのりの建築半日散歩

手塚治虫を筆頭に、数々の漫画の巨匠が青春時代を過ごした伝説のアパート「トキワ荘」。38年前に解体された建物を再建し、漫画ミュージアムとして開館した。漫画ファンの聖地を訪ねたあとは、徒歩で作家・林芙美子が暮らした日本家屋へ。昭和初期から後期にかけての、作家たちの暮らしを追体験。

●憧れの地、〈トキワ荘〉に聖地巡礼。

よみがえったトキワ荘。まだカラー写真が普及しておらず詳細が不明だった色は、トキワ荘で過ごした漫画家に確認をとったそう。
美術館や記念館として公開している作家の住まいや仕事場があれば、勇んで足を運んでいる。家の形や佇まい、部屋を織り成す家具や生活道具、そこにある全てに作家の気配や時代が滲み、そんな様子を目にしたあとは、作品の面影に光のような層が加わる。

豊島区椎名町五丁目(現・南長崎三丁目)に、木造モルタル2階建のアパート・トキワ荘が棟上げされたのは1952年。手塚治虫、藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄、石ノ森章太郎、赤塚不二夫など現代漫画の巨匠たちが若手時代に、4畳半ひと間が並ぶ、炊事場とトイレは共同のアパート2階に住んだことから、漫画ファンの聖地として知られる存在だ。
トキワ荘の入口正面にあり、漫画家と出版社の通信手段でもあった電話ボックスも再現されている。
そんな伝説のトキワ荘が、マンガミュージアムとして再現されると教えてくれたのは、入会している私設漫画ファンクラブのメンバー。トキワ荘が登場する藤子不二雄Ⓐの自伝的漫画作品『まんが道』は、会員みなのバイブルで、私も10代の頃から愛読していた。アパートは老朽化で1982年に取り壊されたが、かつてトキワ荘があった場所を訪ねたり、トキワ荘の住人たちが足しげく通った中華料理店で、まんが道の主人公をまねて「ンマーイ!」とラーメンをすすったり。聖地巡礼していたから、ミュージアムの開館も指折り数えて心待ちにしていた。
2階の共同炊事場。ここから、キャベツ炒めや、焼酎のサイダー割り「チューダー」など、トキワ荘の名物料理が生まれた。中央のテーブルには出前の定番だった〈松葉〉のラーメンも。
2階の廊下をはさんで、パネル展示、体験、再現と、異なる趣向をほどこした居室が並ぶ。椎名町の歴史を紹介する常設展示室も。
2020年7月7日に開館を迎えた〈豊島区立 トキワ荘マンガミュージアム〉。設計は丹青社、施工は渡邊建設で、残っている写真、当時を知る人たちの証言、漫画家の作中に描かれたアパートの様子を元に設計図が作られた。建物は築10年と設定し、あえて経年変化を施す演出も。アパートに続く小道の入口に立っていた看板、漫画家たちがよく利用した電話ボックス、玄関脇にはシュロの木も再現されている。

玄関で靴を脱ぎ、ミシミシと音が響くように作り込んだ階段を上がってまずは2階へ。薄暗くも夢に続くトンネルのような廊下をはさんで、トイレ、共同炊事場、居室が、昭和30年代の暮らしを含めて再現されている。トキワ荘の歴史や漫画家相関図などのパネル展示、漫画家になりきって写真が撮れる体験型の部屋(※新型コロナウイルスの影響で当面の間は休止中)、映画の美術部隊が本格的に家具や生活雑貨を配置した再現部屋と、部屋ごとに趣向が異なり面白い。4畳半の暮らしの追体験は、来場者それぞれに懐かしさや驚きが入り混じることだろう。
鈴木伸一、森安なおや、よこたとくおなどが居住した20号室。窓の外も実際に見えた風景を絵に描いた。こちらはよこたとくおの部屋の再現。
居室の襖の絵の一部は、トキワ荘で暮らした唯一の女性漫画家・水野英子さんが記憶から再現して描いたもの。
トキワ荘ゆかりの漫画や書籍を自由に読むことができるマンガラウンジ(新型コロナウィルス収束まで閲覧中止)。
2階を堪能したあとは、マンガラウンジと、企画展示室がある1階へ。漫画家たちの可能性に満ち溢れた青春時代に浸って過ごしたあとは、受付で配布している「トキワ荘ゆかりの地 散策マップ」を手に、昭和の面影を残す椎名町~南長崎を歩いた。
「トキワ荘ゆかりの地 散策マップ」を手に立ち寄った南長崎公園。鈴木伸一さんによるラーメン屋台モニュメントが。
築90年以上の米屋だった建物をリノベーションした〈豊島区 トキワ荘通り お休み処〉。〈豊島区立トキワ荘マンガミュージアム〉のグッズも販売。
〈豊島区 トキワ荘通り お休み処〉2階に再現された、「寺田ヒロオの居室」。寺田ヒロオは若手漫画家が集うトキワ荘で頼もしいリーダー的存在だった。
トキワ荘に暮らした漫画家たちが常連客だった中華料理店「松葉」。藤子不二雄A『まんが道』にも登場する。

〈豊島区立トキワ荘マンガミュージアム〉

東京都豊島区南長崎3-9-22南長崎花咲公園内 TEL 03 6912 7706。月曜休(祝日の場合は翌火曜休)。原則無料(企画展は有料の場合あり)。
※新型コロナウィルスが収束するまでは、入場は完全予約制、体験や閲覧にも制限があります。予約は公式サイトから。

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