SPECIAL JAPANESE MODERN ARCHITECTURE 55
岐阜
024 藤村記念館
Toson Memorial Museum (1947)

1947年竣工。設計:谷口吉郎。〈東宮御所〉や〈ホテルオークラ東京〉など、伝統的な木造文化に根差した現代建築で知られる谷口吉郎が、戦後すぐに手がけた知られざる名作。敷地は島崎藤村の生家跡。近辺の川から運んだ石や砂利など限られた資材を駆使し、地元民の勤労奉仕により建てられた。黒い冠木門をくぐると、白い築地塀が現れ、その裏に砂利を敷いた庭と回廊型の展示室が続く。モダニズム建築を彷彿とさせるミニマルな空間だが、回廊の土壁の足元を抜き、防火用の池を覗かせるなど日本の伝統に根差した空間演出によって、質素な木造建築に清らかな美しさが生まれている。谷口はこの作品で日本建築学会賞第'回作品賞を受賞。敷地奥には新館もあり、藤村自筆の原稿や遺愛品など関連資料約6,000点を保存公開する。