ARCHITECTURE
城跡/民家/墓地群…。自然と人間の営為から生まれた「沖縄と琉球の建築」を巡る【沖縄シティガイド】
February 6, 2023 | Architecture, Culture, Travel | casabrutus.com | photo_Shigeo Ogawa ilustration_Kei Endo text_Yutaro Tomii editor_Rie Nishikawa
伝統的民家やグスク(城)の遺構、樋川(湧水)、フクギの防風林など、沖縄の風土ならではの人工環境を「建築」と捉えた注目の書籍『沖縄と琉球の建築|Timeless Landscapes 3』。企画・編集を担当した富井雄太郎さんが取材を通して出会った、その魅力を解説する。
■ 垣花樋川
2021年1月、叢書『Timeless Landscapes』第3巻のため沖縄現地でのロケハンが始まった。事前に建築写真の第一人者である小川重雄さんと何度かの対話や、文献による下調べなどはしていたものの、具体的には白紙からのスタートだった。
那覇空港に1人で降りたち、レンタカーでまずは〈仲村渠樋川〉(なかんだかりひーじゃー)へ向かう。「樋川(ひーじゃー)」とは、沖縄に数多くある湧水のことで、主に琉球石灰岩などを使いながら、地元の人々の創意工夫によって整備された共同の水場である。上水道が整備される以前は、住居と共に生活に欠かせない構築物だった。
沖縄本島の特に南部には山という山がなく、豊富な雨もすぐに海へと流れていってしまうため、島で生きる人間にとって利用可能な水は貴重だ。1945年の沖縄戦の幾多の証言でも、水への渇望はよく触れられる。
〈仲村渠樋川〉は樋川の代表格であり、建築関係の本でもしばしば取り上げられていた。空港から車で1時間弱、付近に着くも曲がるべきところを通り過ぎてしまったらしく、道に迷っているなかでたまたま辿り着いたのが〈垣花樋川〉(かきのはなひーじゃー)だった。
那覇空港に1人で降りたち、レンタカーでまずは〈仲村渠樋川〉(なかんだかりひーじゃー)へ向かう。「樋川(ひーじゃー)」とは、沖縄に数多くある湧水のことで、主に琉球石灰岩などを使いながら、地元の人々の創意工夫によって整備された共同の水場である。上水道が整備される以前は、住居と共に生活に欠かせない構築物だった。
沖縄本島の特に南部には山という山がなく、豊富な雨もすぐに海へと流れていってしまうため、島で生きる人間にとって利用可能な水は貴重だ。1945年の沖縄戦の幾多の証言でも、水への渇望はよく触れられる。
〈仲村渠樋川〉は樋川の代表格であり、建築関係の本でもしばしば取り上げられていた。空港から車で1時間弱、付近に着くも曲がるべきところを通り過ぎてしまったらしく、道に迷っているなかでたまたま辿り着いたのが〈垣花樋川〉(かきのはなひーじゃー)だった。
そこは天国のような場所だった。方々から滾々(こんこん)と水が湧き、心地よい音を立てながら斜面を流れ落ち、小さな溜まりをつくっている。静かな水面は空を映し、眼下には海が見える。大気が雲となって雨になり、大地に浸透した水が地層で濾過(ろか)され、急斜面の途中であるこの地上に露出し、また海へと戻っていく。そうした大きな循環が感じられる。ふんだんに湧くこの〈垣花樋川〉の水は、周囲の畑でも活用されている。2021年7月に撮影のため再訪した際は、水遊びをする子供たちで賑わっていた。
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