DESIGN
【独占】チャールズ&レイ・イームズ祖父母が遺したもの。イームズ・デミトリオスにインタビュー。
| Design | casabrutus.com | text_Hisashi Ikai editor_Keiko Kusano
イームズ・オフィスの設立80周年を記念し、11月5日から〈伊勢丹新宿店〉本館2階 イセタン ザ・スペースにて特別展『Eames Office: 80 Years of Design』開催される。これにあたり、イームズ・オフィスの現代表であり、チャールズ&レイの孫であるイームズ・デミトリオスに特別取材。偉大なる祖父母が現代に遺したメッセージとは。
ミッドセンチュリーデザインの旗手として、アメリカンモダニズムの礎を築いたチャールズ&レイ・イームズ。彼らが活躍した時代と比較すれば、産業技術も革新し、我々の暮らしぶりは大きく変化した。それにもかかわらず、2人が手がけたデザインは廃れるどころかより一層の輝きをまとい、いまだ世界中で愛され続けている。こうした流れを現在のイームズ・オフィス代表で、直系の孫であるイームズ・デミトリオスはどのように感じているのだろうか。
「チャールズ&レイのことを『天才』だと表現する人もいますが、僕が知る限り祖父母は、天賦の才能の持ち主というよりは、努力と経験をもって実績を作り上げていった人たちです。また、日々身近で起きる小さな出来事に目を配り、人がそれをどう捉えるかという感覚にフォーカスした実験を繰り返し重ねていました。社会のニーズやライフスタイルが移ろったとしても、人の身体や感覚は変わらない。チャールズ&レイは、こうした『普遍的な人間のあり方』に注目していたからこそ、時代の波に飲まれることなく、いまだに愛されているのだと思います」
「チャールズ&レイのことを『天才』だと表現する人もいますが、僕が知る限り祖父母は、天賦の才能の持ち主というよりは、努力と経験をもって実績を作り上げていった人たちです。また、日々身近で起きる小さな出来事に目を配り、人がそれをどう捉えるかという感覚にフォーカスした実験を繰り返し重ねていました。社会のニーズやライフスタイルが移ろったとしても、人の身体や感覚は変わらない。チャールズ&レイは、こうした『普遍的な人間のあり方』に注目していたからこそ、時代の波に飲まれることなく、いまだに愛されているのだと思います」
子どもの頃、地元の水族館が企画した南太平洋のジンベイザメ鑑賞ツアーに参加したときのこと。写真に興味を持っていたデミトリオスは両親のニコンのカメラを借りるつもりだったが、出発前日に家にやってきたチャールズ&レイから廉価な35mmカメラを手渡されたという。
「子どもの自分にとって大切なのは、高額なカメラで良い写真を撮ることではなく、リアルな体験をすること。単純な仕組みでもアングルや被写体との距離など、自分で工夫することで迫力のある写真は撮れる。物事の適正なあり方やふるまいを教えてくれたんだなと後になって気づきました」
「子どもの自分にとって大切なのは、高額なカメラで良い写真を撮ることではなく、リアルな体験をすること。単純な仕組みでもアングルや被写体との距離など、自分で工夫することで迫力のある写真は撮れる。物事の適正なあり方やふるまいを教えてくれたんだなと後になって気づきました」
デザインとは、外観を整えたり、個性的な見えがかりを作り出すことだという意見も聞かれるなか、なぜチャールズ&レイは「普遍性」に注目したのか。これは、彼らが生きてきた時代背景も少なからず影響しているとデミトリオスは語る。
「チャールズは12歳で父親が他界。大学も奨学金で行くなど、決して恵まれた環境で育ったわけではありません。事務所を設立する直前には、世界恐慌も起こり、その煽りで業績も悪化。その間に出向いたメキシコで自然やクラフトに触れながら新しい扉を開く一方で、貧困にも直面したと聞きます。こうした経験から、夢を描く前にまずは現実を知ること。そして、マスプロダクションの力で、できる限り多くの人々が心休まる環境に導かれるように考えていたのだと思います」
「デザイナーの役割とは、客が期待することに、心配りと的確さを持って答えるもてなし役であることだ」という言葉をチャールズ・イームズが遺したように、デザイナーは主役としてクリエイティビティを振りかざして個性を主張するのではなく、脇役、もしくは裏方としていかに他者の声を聞き入れ、その一つひとつに柔軟に対応すべき。そして何よりも、すべての工程において責任を負わなければならない。建築、デザインの枠組みを超え、映像や科学、情報などあらゆる分野への興味を示していったのも、こうした理由によるものだろう。
「チャールズは12歳で父親が他界。大学も奨学金で行くなど、決して恵まれた環境で育ったわけではありません。事務所を設立する直前には、世界恐慌も起こり、その煽りで業績も悪化。その間に出向いたメキシコで自然やクラフトに触れながら新しい扉を開く一方で、貧困にも直面したと聞きます。こうした経験から、夢を描く前にまずは現実を知ること。そして、マスプロダクションの力で、できる限り多くの人々が心休まる環境に導かれるように考えていたのだと思います」
「デザイナーの役割とは、客が期待することに、心配りと的確さを持って答えるもてなし役であることだ」という言葉をチャールズ・イームズが遺したように、デザイナーは主役としてクリエイティビティを振りかざして個性を主張するのではなく、脇役、もしくは裏方としていかに他者の声を聞き入れ、その一つひとつに柔軟に対応すべき。そして何よりも、すべての工程において責任を負わなければならない。建築、デザインの枠組みを超え、映像や科学、情報などあらゆる分野への興味を示していったのも、こうした理由によるものだろう。
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