NYの2ツ星精進料理店〈Kajitsu〉がレシピ写真集を出版。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

NYの2ツ星精進料理店〈Kajitsu〉がレシピ写真集を出版。

ミシュランガイドで2ツ星に輝くNYの精進料理店〈Kajitsu(嘉日)〉。2022年9月限りで営業を終了することが決まっている同店が、本物の和食と日本文化を世界に残すため、アートブックのように楽しめるレシピ写真集『Kajitsu - A Shojin Restaurant's Season in the City』を出版した。

2代目料理長・上嶋良太(現〈なる屋〉店主)のレシピによる「ふろふき大根」
〈Kajitsu(嘉日)〉は、京生麩の専門店〈麩嘉(ふうか)〉の7代目店主・小堀周一郎が2009年、NYのイーストビレッジに開店した精進料理店。6代目の父・小堀正次が1980年代にNYを訪問した際、本物からかけ離れた “和食” に出合い、「このままでは日本の食文化や伝統が誤った形で世界に広がってしまう」と危機感を抱いてから20余年後、本物の和食と日本の文化を世界に伝える場を現店主が具現化した。──ただし、「どんなに成功しても10年で店を閉じる」という、無常観に裏打ちされたコンセプトと共に。

閉店時期は賃貸契約の関係で2年間延長されたが、これまで〈麩嘉〉の生麩を使ってきた〈京都嵐山吉兆〉〈和久傳〉〈南禅寺瓢亭〉など、名だたる懐石・精進料理店で経験を積んだ若手を3年任期の料理長として抜擢してきた。2011年にはミシュランガイド2ツ星を獲得、イーストビレッジに高級懐石料理店が増えた2012年には、現在のミッドタウンに移転。俳優、ミュージシャン、建築家、美術関係者などの肥えた舌を満足させ続けている。
春夏秋冬の季節ごとに、NYで入手できる食材を織り交ぜた精進料理のレシピ54本と、基本の食材・調味料のつくり方が美しい写真を中心に紹介される。
竹皮に包まれた「アボカドちまき寿司」は料理人・田中嘉人(現〈燕〉店主)のレシピによる。
初代料理長・西原理人(現〈白 Tsukumo〉店主)による「新玉葱のしんじょ」
繊細な盛り付けも料理人の腕の見せどころ。
〈Kajitsu〉で供する本物の和食器は、オーナーの〈麩嘉〉当主・小堀周一郎が京都の骨董店で買い集めたものと、辻村史朗など現代の作家ものを織り交ぜている。
そんな常連客のひとり、坂本龍一の序文から始まる『Kajitsu - A Shojin Restaurant's Season in the City』は、12年で跡形もなくなる店を本の形で残しておこうと企画。4代の料理長全員から提供されたレシピだけでも54本というボリュームで、完成まで3年を費やした。店同様に、本物の和食と日本の文化を世界に伝えるためテキストは英文のみ。だがレシピの内容はなじみ深い和食なので、家で再現することも可能だ。また、料理だけでなく器やしつらえなど、〈Kajitsu(嘉日)〉のすみずみまで巡らされた美意識をとらえた写真を、存分に楽しめるアートブックでもある。

本書のサブタイトル「A Shojin Restaurant's Season in the City」は「ある精進レストランが、NYで季節を表現する」という意味と、「ある精進レストランの、NYの中での”とある期間”」という意味のダブルミーニング。どんなに成功しても潔く閉じる、と最初から決められた嘉日にふさわしい題名だ。
「里芋あられ揚げ」は2代目料理長・上嶋良太(現〈なる屋〉店主)のレシピを紹介。
4代目・現料理長の阿部大紘による「夏野菜水晶」のレシピ。
3代目料理長・大堂浩樹(現〈ODO/HALL〉店主)による「冬野菜の五目めし」
NYミッドタウンの店舗内外観。1階はアラカルトの肉魚料理や蕎麦を提供するカジュアル店〈Kokage(こかげ)〉。●〈Kajitsu(嘉日)〉125 E 39th Street, New York, NY 10016 TEL +1 212 228 4873。 *1月5日現在、NY市の新型コロナウイルス感染症対策ルールに基づき臨時休業中。

『Kajitsu - A Shojin Restaurant's Season in the City』

撮影/吉川幸宏(f8)、デザイン/寺田未来(SQUEEZE)、英訳/吉田実香&デイヴィッド・G・インバー(Maniform)、編集・執筆/田中敏惠(KIMITERASU)。A4変形・本文272ページ。英語版。9,000円。〈麩嘉〉オンラインショップで発売中。

AIがあなたにおすすめ

※過去の記事も表示されます