建築家・田根剛とシェフ・渥美創太がレストランを作りました。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

建築家・田根剛とシェフ・渥美創太がレストランを作りました。

『カーサ ブルータス』2019年11月号より

家に招くような気持ちになれる温かいレストランを作りたい。一流のシェフと、建築家。二人の感性が混じり合って誕生したレストランの、建築的なこだわりを聞きました。

二人が作りあげた〈Restaurant Maison〉はテラコッタの床と壁、開かれたキッチン、自然光の差し込むガラス張りの屋根。温かくて開放的な「家」を作りたいという渥美シェフの夢を、田根剛が実現させた。
パリでこの秋一番話題のレストランは間違いなく〈レストラン メゾン〉だろう。〈クラウンバー〉時代に、骨太な料理と圧倒的な存在感で注目された渥美創太が、独立してスタート。そして建築を手がけたのは、パリを拠点に世界的に活動する建築家・田根剛。オープン直後の〈レストラン メゾン〉で、二人に話を聞いた。

Q お二人の出会いからこのプロジェクトがスタートするまでを教えてください。

渥美(以下A) アート系の仕事をしている妻が長年田根さんと知り合いで、自分で店をやると決めたときに相談に行ったんです。

田根(以下T) 僕が事務所を引っ越したとき二人で遊びにきてくれて、よかったらお店のプロジェクトを一緒にできませんかって。とりあえず話そうかと言って、料理の話や建築の話をバンバン始めて。すでにそのタイミングでバチッと合った気がしたんです。

A 田根さんのアイデアが面白くて発見ばかりだったし、そこから料理のアイデアも出てきました。
POINT_01 パリ11区の静かな通りのメゾン(一軒家)。 ビルやアパルトマンの間に三角屋根が異彩を放つメゾン(一軒家)。柔らかい白のファサードの大きな開口部のガラスは、スライド式で開くようになっている。
POINT_02 デヴィッド・リンチによるロゴ。 店のロゴは映画監督デヴィッド・リンチによるもの。家、フォーク、太陽があしらわれた温かみのあるデザインだ。真鍮製で、入口に取り付けられた。
POINT_01 パリ11区の静かな通りのメゾン(一軒家)。 ビルやアパルトマンの間に三角屋根が異彩を放つメゾン(一軒家)。柔らかい白のファサードの大きな開口部のガラスは、スライド式で開くようになっている。
POINT_02 デヴィッド・リンチによるロゴ。 店のロゴは映画監督デヴィッド・リンチによるもの。家、フォーク、太陽があしらわれた温かみのあるデザインだ。真鍮製で、入口に取り付けられた。
Q すでに「メゾン」というコンセプトはあったんですか。

A はい。ガストロノミーだけどアットホームな、自分の家に招くような店を作りたい、と一軒家を探して、物件だけは見つかったところでした。2階がレストランで下はサロン、という構想に田根さんが賛同してくれて、家の中の構造もすべて一回考え直して。

T 最初から「名前はメゾンにしたいんです」ってすごくはっきりしていました。普通は自分の名前を出したり、コンセプトを言葉にしたりとかするじゃないですか。でも“家に招いたような温かい場所”というのは面白い、とそれを形にしていきました。フランスの食材がフランスの大地から生まれて、それを使っての料理であるということから、床にも壁にもテラコッタを使うという案を出しました。産業革命でタイルもどんどん工業生産になっていた時代に、フランスの女性労働者たちが、画一的な四角のタイルの角を六角形に落として手作りを守ったことで、フランスの家庭の床に使われている六角のテラコッタが生まれたんです。テラ(土)をコッタ(焼いた)ものって料理っぽくて温かくて、とてもメゾンらしいと思いました。フランス全土の古いタイルをリサイクルしたものを集めました。
POINT_03 フランス中から集めたテラコッタの壁と床。 南仏、ボルドー、フォンテンブローなど国内各地から集められたテラコッタは、壁と床合わせて22,000枚。濃淡も色調も、赤味の強いもの茶色に近いものと様々だ。
Q 構想から開店まで2年かかりましたが、一番苦労した点は?

T フランスですからわかってはいたんですけど、工事の事情などで許可の取り直しになり、半年待たされたのが大打撃でしたね。

A でも田根さんは大変な状況に対して、次々にアイデアを出してくれる。知識も素晴らしいですが、人の話を聞いて、そこから発想を引っぱり上げてくれる。そのおかげでここまでこれたと思います。