ミラノの中心部に深い森!? 手がけたのは隈研吾です。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

ミラノの中心部に深い森!? 手がけたのは隈研吾です。

『カーサ ブルータス』2018年5月号より

隈研吾の手で一新したミラノのヴァレクストラ本店。レバノン杉を配した空間は深い森のような清々しさです。

高品質のレザーとシンプルなデザインでイタリアを代表するレザーブランド〈ヴァレクストラ〉。そのミラノ本店が2018年1月、「The Forest」というテーマで、幻想的な森林を思わせる空間へと姿を変えた。手がけたのは建築家の隈研吾。リニューアルの意図を本人に聞いた。

Q “森”というキーワードは、どのように生まれたのですか?
〈ヴァレクストラ〉からのオファーは単なるインテリアデザインではなく、一種のインスタレーションのような店舗設計でした。その発想が面白くて、引き受けることにしたんです。僕にとって森は特別な場所で、現実と夢の狭間のような世界を感じさせます。例えば動物だけでなく、妖精といった非現実の存在も現れるような。完成してみると、記憶の奥底にあったルネ・マグリットの絵《白紙委任状》とも似ていると思いました。
Q 自然を感じるデザインでも、ソファは無機質ですね。これも現実と非現実の組み合わせですか?
そうですね。森の中で偶然、そこにあるわけもないジュエリーを発見したかのような錯覚を作り出したかったのです。

Q 天井に鏡を使った理由は?
店内に無限の空間が広がるようにしたかったので、プラスチックミラーを設置し、森のスケールを増幅させました。歪みは素材の特性ですが、自然な凸凹だからまた良いんですよね。

Q 製材した木材から森のような空間が生まれるのが不思議です。
丸太だと逆に嘘くさくなってしまうんです。でもスライスした平面なら、フィクションとリアリティーの狭間を行き来できそうな感覚が作り出せる。また斜めに板を取り付ける効果は、僕の好きな愛知県にある国宝の茶室〈如庵〉にも見られるものです。この茶室には、床の間の脇に斜めの壁があるのですが、壁を傾けるだけで空間の流れが変化し、奥行きを感じられます。僕にとって“斜め”は、大切な表現の一つなのです。

Q 最後にミラノで、隈さんのオススメのお店を教えてください。
事務所スタッフのハビエールが教えてくれた〈Ostarie Vecjo Friul〉は美味しかったです。チーズとワインが充実していますが、僕のおすすめはパスタですね。

隈 研吾

くまけんご 1954年生まれ。建築家。自然素材を積極的に用いる建築で知られ、建設中の新国立競技場は木と鉄のハイブリッド構造。東京ステーションギャラリーで『くまのもの』開催中。

ヴァレクストラ ブティック

2015年から毎年、世界中のデザイナーや建築家とコラボレーションし、マンゾーニ通りのブティックを一新している。●Via Manzoni, 3, Milano TEL 39 02 9978 6060。