精密加工技術が織り成す幾何学的構造美。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

精密加工技術が織り成す幾何学的構造美。

『カーサ ブルータス』2018年5月号より

長方形のダイヤルに、時を刻むメカニズムの大半をあらわにする。シャネルの新作時計は精緻な匠の技で、機械を主役にしました。

《ボーイフレンド スケルトン》。ムーブメントに獅子の紋章を掲げる。ケース素材もメゾン独自だ。手巻き、縦37×横28.6mm、18Kベージュゴールドケース、アリゲーターストラップ。予価4,762,500円。今夏発売予定。
外観にも中身にも、隅々にまで美が行き渡る。

八角形のケースのフォルムは、ファインジュエリーの本店があるパリのヴァンドーム広場がモチーフなのだという。すべてのアウトラインにはファセットカットを施し、ベゼルに小さな段差を設けることで、平滑なケースに立体的な表情が宿った。そしてダイヤルでは、上下をアーチ状に仕立てたフレームの内にリングが重なるスケルトンのムーブメント(機械)が主役に。〈シャネル〉の新作時計《ボーイフレンドスケルトン》は、メゾンが持つ豊かなクリエイションによって幾何学的な美が構築されている。それを織り成すケースとムーブメントは、スイスの工房で作られる完全オリジナルだ。

16世紀半ばに萌芽したスイス時計産業は、分業制を採ることで発展してきた歴史を持つ。今もケースやダイヤル、ムーブメントなどをそれぞれの専用メーカーに頼る時計ブランドが大半であり、外観は違っていても機械は同じというモデルも多い。そうした中でシャネルは、1993年からケースを自社で製作している。また2011年にはムーブメントの開発にも着手。その成果の1つが、このモデルが搭載するムーブメント「キャリバー3.」だ。これを含み、シャネルはこれまで、3つの自社製ムーブメントを生み出してきた。

【Romain Gauthier / ローマン・ゴティエ】 精密さと美しさを備えた、時計パーツ製造のスペシャリスト。

小さな歯車類やピン、回転軸などは丸く長い金属棒から削り出す。その専用マシンは1台につき1人の技術者が専従する。
シャネルの大切なモチーフの1つである星をかたどった歯車の表面には、手作業で同心円状の筋目を施す。
歯車の切削加工の様子。冷却した切削オイルを用いて熱膨張を抑え、超精密加工をかなえている。
シャネルの時計のケース製作と自社製ムーブメントの設計・組み立てを担うのは、スイスの自社工房〈G&F シャトラン〉社。前身は1947年創業の時計ケースメーカーであり、優れた技術力で名だたる高級時計ブランドの信頼を勝ち得てきた。シャネルのケースも80年代から製作。その縁で93年、シャネルの時計部門に統合された。切削加工を得意とし、シャネル ウォッチのアイコンの1つ《J12》が用いるセラミック加工技術もスイスで群を抜く。また伝統的な手仕事も継承。ケースの美観を高めるポリッシュやサテンの仕上げは、人の手で行われている。そして自社製ムーブメントを組み立てるのも、手作業だ。

【G&F Châtelain / G&F シャトラン】 ケースとブレスレットに美を与え、ムーブメントの設計・組み立ても担う。

切削マシンのオペレーターは、モニターで加工精度をチェック。
セラミックケースへの穴開けには、ダイヤモンド製の刃を用いる。
精密に成型されたセラミックブレスレットのコマ。
焼成前のセラミックケース。専用の窯で1,200度の高温で焼き上げる。
磨き上げた金属製ブレスレットのコマは、手作業で丁寧に組み上げられる。
そのムーブメントの歯車を中心とした主要パーツの製造には、特別なノウハウと設備が必要となる。そこでシャネルは、その技術に長たけた〈ローマン・ゴティエ〉社と2011年に資本提携。パーツ製造の多くを委ねている。直径が1ミリにも満たないチューブを2ミクロン(1000分の2ミリ)の誤差で切削加工できる技術を持ち、装飾仕上げも巧み。高精度加工されたパーツは、ダイヤルから見せるに値する美観も兼ね備えている。

そしてパリの本社のデザイナーが、ムーブメントに幾何学的な構造美を与えた。シャネルではまずムーブメントのデザインを決め、それが時計として機能するよう設計するという特異なプロセスを採る。ほぼすべてのパーツは、メゾンを象徴するブラックに染め上げ、外枠と小リングは内側を面取りしてゴールドのメッキを施したバイカラーに。ボーイフレンド スケルトンは、精緻な加工技術の粋を集め、隅々にまで美が行き渡る。

●問合せ/シャネル(カスタマーケア)0120 525 519

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