METキュレーター、アンドリュー・ボルトンが語るコム・デ・ギャルソン展 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

METキュレーター、アンドリュー・ボルトンが語るコム・デ・ギャルソン展

5月の開催以来、ニューヨーカーを魅了し続けているメトロポリタン美術館の『Rei Kawakubo / Comme des Garçons Art of The In-Between』展。METのファッション展といえば、NYの夏を華麗に彩る風物詩。特に今回は、川久保玲が自らデザインした展示空間と、137点にものぼるコム デ ギャルソンのコレクションの見せ方との、かつてない斬新さが熱い注目を浴び続けている。キュレーターのアンドリュー・ボルトンに会場で話を聞いた。

当初、レイ(川久保玲)と、私たちMETとの間でまず展示空間についての対話を交わしました。私たちの企画コンセプトをレイはいったん持ち帰り、1:1のモックアップを日本で作ってきました。

私は模型を見ればその良さはわかるのですが、実際にできあがった場所に立つまで空間を実感できません。私の葛藤を察してくれたのでしょう。モックアップにより、この空間の中でどう人が動くか感覚として理解できたのです。実用的な面で若干調整しましたが、完成形とほぼ同じです。空間デザインがキュレーションとどう呼応するか、そこが今回のポイントでした。

ファッション展の空間デザインは、必ずしも衣服や展示コンセプトを念頭に置いたものとは限りません。空間と展示との相乗効果をもたらすためには、試行錯誤を重ねる必要がありました。
私が驚かされ、またチャレンジでもあったのがライティングでした。この照明はレイのアイデアです。美術館は照明についての厳格な規制があります。美術品の退色は厳禁だからです。なかでもテキスタイルは特に繊細で、光にさらされるとすぐに色あせ、素材が劣化してしまいます。光はテキスタイルの大敵。よってレイが提案した照明は、私たちには大きな挑戦でした。
来館者と展示品とを、同等に照らすライティングは均等性、そしてある種の民主主義の表現でもあります。しかし展示される衣服の保存という観点からすればきわめて厳しい。ことにMETが所蔵する歴史的なコレクションについてはなおさらです。話し合いが必要でした。

ですが私は、美術館の照明はかくあるべき、という既成概念を拡大していくのは良いことだと思います。通常、美術館の照明は展示と来館者を切り離し、上下関係を生み出すためのもの。観る側と展示品とを対等に向き合わせるレイの発想は、きわめて知性が高く素晴らしい。強く共感しましたね。

『Rei Kawakubo / Comme des Garçons Art of The In-Between 』

〈The Metropolitan Museum of Art〉〜9月4日。1000 5th Ave., New York TEL 1 212 535 7710。10時~17時30分(金・土~21時)、無休。入館料25ドル。

Andrew Bolton

1966年、イギリス出身。ヴィクトリア&アルバート博物館に9年間勤務した後、2002年にMETのファッション・インスティテュートのキュレーターに。〈アレキサンダー・マックイーン/Savage Beauty〉展(2011年)はじめ、彼が手がけたMETファッション展は記録的な動員数を誇る。 Courtesy of The Metropolitan Museum of Art/BFA.com
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