藤森照信、初のアパレル店舗設計。マザーハウスの新店が誕生。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

藤森照信、初のアパレル店舗設計。マザーハウスの新店が誕生。

〈マザーハウス〉の新ブランド〈e.(イードット)〉本店が、秋葉原に誕生。建築家・藤森照信が、そのキャリアで初めてアパレルブランドの店舗設計を行なっている。

〈マザーハウス〉本店の隣り、前身である〈ファブリック マザーハウス〉が位置していた場所に〈e.(イードット)〉本店がオープン。
全面ガラス張りだったファサードは、滋賀産の土を使った塗り壁に。代表の山口がインドの綿職人を訪ねた際に目にした、馬ふんを用いた民家の壁がイメージソースになっている。有機的な曲線の窓は、自然と店内を覗き込みたくなる。
途上国の素材を用いて、現地の職人たちの手によるバッグやジュエリーなど魅力的なプロダクトを生産、発信していく〈マザーハウス〉。バングラディシュ産のバッグを皮切りに、ネパール産のストール、インドネシアやスリランカ産のジュエリーなど、代表兼デザイナーの山口絵理子が自ら現地を訪ね歩き、各地で見つけた素材や職人たちの可能性を、そのデザインによって拓いてきた。

2018年に〈ファブリック マザーハウス〉としてスタートし、今回名を改めて本格始動した〈e.(イードット)〉の誕生のきっかけとなったのは、インドの地方で女性たちが編んだ、綿の布だった。

「ある展示会で“カディ”と呼ばれるインド産の布を手に取ってみて、『本当に手織り?』と思わされたんです。人の手によるものとは思えない密度で、実際に織られているのを、見てみたくなった。ちょうど、バングラデシュやネパールばかり行き来していて、その間にあるインドが気になっていたこともありました。〈マザーハウス〉というブランド名の由来であるマザー・テレサが生涯の長くを過ごした場所であることにも、精神的なつながりを感じていました」(山口絵理子)

インド独立の父・ガンジーが「国産品のない独立は、生命が無いただの屍に過ぎない」と語り、自らで紡ぐとともに広くその指導も行ったことから、“自由を纏う布”とも呼ばれるカディ。手紡ぎ風の布が機械生産できるようになり、その需要は減りつつある一方で、バックグラウンドを含めて伝えることで価値が生まれるのではないかと、ブランドをスタートさせることを決意。細部の仕上げにまでこだわりを行き届かせるため、またその“国のポテンシャル”を発信するためにも、素材から検品までを完結させる工場を現地で持つことにした。
漆喰とタイルによる白い空間に、入り口そばのグリーン、中心をなす栗材の什器、そして〈e.(イードット)〉のクリエイションが映える。
栗材が最も“木らしい”のだと藤森がこだわった什器。「藤森先生は、これにかける思いが本当に強かった。中心が決まると他が決まる…とおっしゃっていました」(山口)
店側の「グリーンが欲しい」という要望に応え、藤森が設けた緑の意匠。先端の生花は季節により変えられるようになっている。
「まったく別の機会に〈ラ コリーナ近江八幡〉〈高過庵〉など藤森先生の建築を見ていて、天然素材の使い方や、手仕事の風合いを魅力的に感じていました。それで、いざ店舗を作るとなったときに、スタッフたちと『藤森先生みたいな建築だったらいいよねぇ』という話に。ただ、コネクションもなにもなかったので、藤森先生が館長を勤めていらっしゃる〈江戸東京博物館〉へ問い合わせて(笑)。すると、『あなたたちの取り組んでいることに興味があります』というお返事があって、こうして1号店のデザインをお願いすることができました」

ブランドのコンセプトの説明や、山口がインドで見学した職人たちの作業風景、周辺で目にした印象的な民家の写真などを見せたほかは、店舗デザインに関して大きなリクエストはしなかった。

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