深澤直人も驚いた。「すごいぞ、民藝!」 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

深澤直人も驚いた。「すごいぞ、民藝!」

『カーサ ブルータス』2018年12月号より

〈日本民藝館〉館長就任からはや6年。深澤が気づいた、民藝の新たな見方とは?

「これを見て"ヤバいぞ、民藝"と思った」と深澤。火鉢/出雲大津(島根)1940年代。
民衆が用いる日常品に美を見出し、民衆の工芸=民藝と名づけたのは思想家・柳宗悦。そんな民藝の無垢で刺激的でクリエイティブな魅力に触れる企画展が、六本木の〈21_21 DESIGN SIGHT〉で開催中だ。展示の中心は、柳の審美眼によって集められた〈日本民藝館〉収蔵品のうちの厳選150点余り。日本民藝館館長でもあるデザイナーの深澤直人がディレクションを務めている。

Q 酒器や火鉢から石仏まで。どんな基準で選んだのですか?
2012年に日本民藝館の館長になったとき、最初に感じたのは民藝の愛らしさでした。「民藝はなんて可愛いんだろう」と魅了された。いっぽうで蒐集品を数多く見るうちに気づいたのが、「民藝はヤバい」と驚かされるものの存在です。たとえば、出雲地方の漁師が舟で暖を取るのに使っていた火鉢は、「この不思議な形は一体どこから生まれたのか?」と心をゆさぶるし、東北の野良着は非常に過激でファッショナブル。民藝には、人を刺激する因子が大いに封入されている。そういう側面を体感できるものを選びました。
染付網目文角皿/中国・景徳鎮窯 明時代・17世紀。
厨子/駿河(静岡)江戸時代・19世紀。
白磁燭台/薩摩・平佐(鹿児島)江戸時代・19世紀。
Q 「民藝は過激」というとらえ方が新鮮です。
デザインの仕事を長く続けていると、モノを見れば「なぜこの形になったのか」という発想の経路はだいたいわかります。けれど、この火鉢からは経路も作為も見えてこない。僕たちの想像を飛び越えた無我の美で圧倒するんです。まったくかなわない。脱帽する。とてもラディカルです。しかも、作ったのは偉大な作家でも匠でもなく、ふつうの庶民。その純粋で飄々とした創造のパワーに胸を打たれるし、尊敬します。

Q 展覧会の副題を「アナザー・カインド・オブ・アート」としたのはなぜですか?
実は「アナザー〜」のフレーズは、染色家の柚木沙弥郎さんが自身のものづくりについて発した言葉なんです。「過去の形式にも定義にもあてはまらないアート」
今回のテーマにぴったりだと思い、使わせてもらいました。
「純粋な祈りが素朴な形を生んだ。その無垢な創造に心が動く」。羅漢像/朝鮮半島 朝鮮時代。
朱漆酒器/琉球(沖縄)19世紀。
「わざわざ面取りして違う色をつけた七輪。ここまでやるのか! と、デザイナーとして強いインスピレーションを受けた」。岩七輪/阿仁合(秋田)1930年代。
菱刺たっつけ/南部(青森)大正時代頃。すべて日本民藝館所蔵。
Q ディスプレイ台に記された深澤さんの言葉も印象的です。
会場の〈21_21 DESIGN SIGHT〉は、ものづくりに興味がある人やクリエイターが多く集まる場所。彼らが火鉢や野良着を見ながら「これ、ヤバいよね!?」と言い合えたら楽しいと思い、そのきっかけになるような解説を記しました。柳宗悦もきっと、朝鮮の白磁や日本各地の手仕事を見つけては、陶芸家の河井寛次郎や濱田庄司と一緒に「これ、すごいよね」と興奮し、デザインのインスピレーションを得ていたはず。そんな民藝の発見者たちと同じ驚きを体感してほしいですね。

民藝 MINGEI Another Kind of Art展

〈21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー1&2〉東京都港区赤坂9-7-6東京ミッドタウン・ガーデン TEL 03 3475 2121。〜2019年2月24日。10時〜19時(入場は18時30分まで)。火曜休、年末年始休。入場料1,100円。

深澤直人

ふかさわなおと デザイナー。2007年より〈21_21 DESIGN SIGHT〉ディレクター、2012年より〈日本民藝館〉第5代館長を務める。今展会場には深澤の私蔵品も展示される。

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