DESIGN
デザイン誌『AXIS』の表紙はいかにして生まれたか。
| Design | casabrutus.com | photo_Kaori Oouchi text_Yoshinao Yamada editor_Yuka Uchida
デザイン誌『AXIS』の表紙は、1年前のリニューアル以前はずっと、第一線で活躍するデザイナーたちのポートレート写真だった。その20年にも及ぶ軌跡をまとめた書籍『AXIS THE COVER STORIES』が発売。カバーフォトを撮り続けてきたフォトグラファー筒井義昭とアートディレクターの宮崎光弘が、当時の撮影を振り返った。
115組のポートレートと言葉で辿る、デザイン誌『AXIS』の試み。
1981年創刊の日本を代表するデザイン誌『AXIS』。まだデザインという概念が一般的ではなかった時代からその社会的意義に迫り、国内外のデザイン関係者に高く評価されてきた隔月誌だ。その『AXIS』の顔となっていたのが、国内外の錚々たるデザイナーだ。同誌は1997年から2017年までデザイナーのポートレートを表紙に起用。いまでこそデザイナーの顔は雑誌やテレビといったメディアで見ることができるが、当時はそれほど前面に出ることもなく裏方に徹していた時代だった。表紙を飾るデザイナーが語る自らの思いで、『AXIS』は時代を捉えていったのだ。その仕掛け人の一人がアートディレクターの宮崎光弘、そしてポートレートを撮影した写真家の筒井義昭だ。
1997年11・12月号のリニューアル号で、最初の表紙を飾ったのはイタリア人デザイナー、エットレ・ソットサスだ。
「最初の表紙ですからメッセージ性のあるデザイナーを起用したいと思っていたところ、偶然にも第一希望のソットサスが来日することになったんです」と宮崎は振り返る。その撮影を依頼された筒井は「いまのようにインターネットで簡単に検索できる時代じゃなく、僕はソットサスがどんな人物かも知らずに撮影に臨みました」と言う。
「最初の表紙ですからメッセージ性のあるデザイナーを起用したいと思っていたところ、偶然にも第一希望のソットサスが来日することになったんです」と宮崎は振り返る。その撮影を依頼された筒井は「いまのようにインターネットで簡単に検索できる時代じゃなく、僕はソットサスがどんな人物かも知らずに撮影に臨みました」と言う。
「第一印象を大切にしたいという思いもありました。いまから考えるとどんな人物かを知らないから撮れたんでしょうね。帽子が洒落た素敵な人、それがいまも覚えている印象です」。当時はフラットな光を使ったポートレートが人気を集め始めており、AXISビル内にあるスタジオで試行錯誤をしながら撮影に挑んだ。「人の輪郭に淡い影を出したいと思ったんですね。人柄が滲み出すような陰影をもった写真が当初の狙いでした」と筒井。被写界深度を浅くして人物のぼけ味をだしながら、背景色は人物にあわせて選んでいった。
2017年のリニューアルまで、同誌の表紙にはさまざまな国内外のデザイナーが登場した。
「やはり海外のデザイナーはポーズを作るのが上手ですね。対して、日本人はどうしても硬くなってしまいがち」と筒井は振り返る。そんな筒井に強烈な印象を残したデザイナーがアンドレ・プットマン。フランスを代表する女性デザイナーは「力強くてエレガント」だったと振り返る。「さあ、撮りなさいという感じでした」と宮崎が続ける。
「手の撮影もお願いしたのですが、失礼ながら女性にシミやシワの出た手を頼むと嫌がられるかと思っていました。けれど彼女はさっと手を出してくれました。自身がデザインしたリングの嵌まる手はその後に出会ったどの手よりも強く、美しいものでした。そこには彼女の人生が宿っていたように思います」
2017年のリニューアルまで、同誌の表紙にはさまざまな国内外のデザイナーが登場した。
「やはり海外のデザイナーはポーズを作るのが上手ですね。対して、日本人はどうしても硬くなってしまいがち」と筒井は振り返る。そんな筒井に強烈な印象を残したデザイナーがアンドレ・プットマン。フランスを代表する女性デザイナーは「力強くてエレガント」だったと振り返る。「さあ、撮りなさいという感じでした」と宮崎が続ける。
「手の撮影もお願いしたのですが、失礼ながら女性にシミやシワの出た手を頼むと嫌がられるかと思っていました。けれど彼女はさっと手を出してくれました。自身がデザインしたリングの嵌まる手はその後に出会ったどの手よりも強く、美しいものでした。そこには彼女の人生が宿っていたように思います」
その時々でエポックな仕事をするデザイナーに依頼を続けるなか、満を持して依頼したのが柳宗理だ。「アノニマスデザインを特集した号で、柳さんに頼む以外はないと思っていました」と宮崎はいう。もちろんタイミングが合わなかったり、依頼を断られることもあったとか。宮崎がいまなお撮影できずに残念だったと思っているのは、コム デ ギャルソンの川久保玲だ。「2か月に渡って書店に並ぶので、なかには撮影に抵抗のある方もいましたね。一枚目でうまくいくこともあるし、何度も撮影をしなければならないことも。中には10分足らずの撮影もありました」と筒井。
「そのなかでどうやって光をつくるか。4×5の大型カメラを使うので、ある意味、被写体とにらめっこしているような感覚もありました。そんな中でレンズ越しに被写体の目を見ていると、心を許してくれたような瞬間を感じることがある。その時にシャッターを切っていたように思います。僕自身、『AXIS』を通じてポートレートの撮影を学んだような感覚。ポラロイドで確認していた時より良い写真が仕上がった時は嬉しかったですね」
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