古今東西 かしゆか商店【刺し子織り】 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

古今東西 かしゆか商店【刺し子織り】

『カーサ ブルータス』2018年10月号より

日常を少し贅沢にするもの。日本の風土が感じられるもの。そんな手仕事を探して全国を巡りはじめた、店主・かしゆか。今回訪ねたのは福島県の月舘町にある「刺し子織り」の工房。日本でただひとりという職人が生む、モダンな布に出会った。

東北の伝統的な手仕事・刺し子を機械でつくる「刺し子織り」。その日本唯一の職人、大峡健市さんの工房で何千本もの糸を織機に掛ける光景に見とれるかしゆか店主。「まるでグランドピアノの中にいるみたいな気分です」
日本のデザインって本当にモダン。かわいくてもどこかシャープだし、伝統的な色が最新の流行とリンクすることもある。買い付けを通して各地の手仕事に出会い、そんなことを思うようになりました。今回訪ねた福島の「刺し子織り」もそう。何十年も前のデザインだなんて思えないほど、モダンでお洒落で、心をギュッとつかまれます。
Buying No.07【 刺し子織り 】 古い織機でつくるモダンな布、刺し子織りの風呂敷。
刺し子織りの“刺し子”は、東北で昔からつくられてきた手仕事です。木綿や麻を糸で細かく縫って温かく丈夫な生地にするのですが、これを伝統的な織機でつくるのが刺し子織り。経糸と緯糸に、刺し糸という第三の糸を加えることで、模様になる「刺し縫い」と「生地そのものの織り」を同時に仕上げます。1M織るのに1時間もかかるというこの布を、日本でただひとり織れるのが大峡健市さん。4代にわたって刺し子織りをつくり続けてきた家で育ち、19歳のとき、民藝運動の流れを汲む染織家の柳悦孝さんに弟子入りしたベテラン職人です。
桜の柄は東日本大震災の後に描きためていたもの。福島の三春滝桜をイメージ。左上/「色の組み合わせがモダン」とかしゆか店主。
糸巻きの規則的な音と動きが心地いい。
桜の柄は東日本大震災の後に描きためていたもの。福島の三春滝桜をイメージ。左上/「色の組み合わせがモダン」とかしゆか店主。
糸巻きの規則的な音と動きが心地いい。
広い工房に10台ほど並んでいたのは、昭和30年代製のどっしりしたジャカード織機や糸繰り機。糸巻きに糸掛け、織りはもちろん織機の修理まで、全部の工程をひとりでこなすそうです。「織る時の音を聞くだけで機械の調子がわかる。経糸と緯糸の張り具合もわかります」と言い切る姿には、経験が生む自信が感じられました。