DESIGN
アップル〈WWDC〉に潜入、真鍋大度が見た未来とは?
July 27, 2018 | Design | casabrutus.com | text_Nobuyuki Hayashi editor_Keiko Kusano
アップル主催のイベント〈WWDC〉にライゾマティクスリサーチの真鍋大度が初参加! 彼の目を通して、アップルが提示する未来をひもとく。
2018年6月、カリフォルニア州サンノゼ市で、アップル主催の毎年恒例イベント〈WWDC(Worldwide Developers Conference・世界開発者会議)〉が開催された。世界77か国からiPhoneやMacのアプリ開発者らおよそ6,000人が集結する巨大イベントで、全世界から注目を集める。世界中のデザイナーが、年に1度、集まって来るのがミラノ・デザインウィークだとしたら、世界中のアップル系開発者が集まるのが〈WWDC〉だと言っても過言ではない。今回初めて〈WWDC〉に参加した真鍋大度に、さまざまな角度から話を聞いた。
Q 今回の発表ではどんなことが印象に残りましたか?
A (この秋に登場予定の)「iOS 12」の「Screen Time」機能(アプリやWebサイトの利用時間を分析し、どのように時間を費やしているかを把握し、自身で管理や利用制限することができる機能)に象徴されていますが、メンタルヘルスの問題やプライバシーの問題など、今の社会が取り組むべき課題にアップルが真剣に取り組んできたなという部分を強く感じました。
これまで自分自身もSNSやスマートフォンに関しては、世の中の便利さが増した一方で失ったものも多いなと感じていました。SNSは簡単に見られるし、人の癖や習性を研究していて、どうしても見たくなるようにつくられています。すぐにハマってしまい、テレビよりも距離感を保つのが難しい。そうした側面が人々のメンタルヘルスにも影響を与えていると思います。
実は自分自身も10年くらい前ですが、mixi(ミクシィ)などのソーシャルメディアを使いすぎているなと感じて、自分がパソコンで何をやっているかの行動履歴を可視化するプロジェクト『Generative Buisiness Card』をやったことがあります。これはマウス、キーボードの情報、使用したアプリケーションのログを取って自分の作業状況からその日の肩書きを推定しヴィジュアライゼーションを行って、それを名刺のデザインとする実験で、ログを見るのが面白くてしばらくやっていたのですが、サボり癖がひどいことが露わになって落ち込みました。
A (この秋に登場予定の)「iOS 12」の「Screen Time」機能(アプリやWebサイトの利用時間を分析し、どのように時間を費やしているかを把握し、自身で管理や利用制限することができる機能)に象徴されていますが、メンタルヘルスの問題やプライバシーの問題など、今の社会が取り組むべき課題にアップルが真剣に取り組んできたなという部分を強く感じました。
これまで自分自身もSNSやスマートフォンに関しては、世の中の便利さが増した一方で失ったものも多いなと感じていました。SNSは簡単に見られるし、人の癖や習性を研究していて、どうしても見たくなるようにつくられています。すぐにハマってしまい、テレビよりも距離感を保つのが難しい。そうした側面が人々のメンタルヘルスにも影響を与えていると思います。
実は自分自身も10年くらい前ですが、mixi(ミクシィ)などのソーシャルメディアを使いすぎているなと感じて、自分がパソコンで何をやっているかの行動履歴を可視化するプロジェクト『Generative Buisiness Card』をやったことがあります。これはマウス、キーボードの情報、使用したアプリケーションのログを取って自分の作業状況からその日の肩書きを推定しヴィジュアライゼーションを行って、それを名刺のデザインとする実験で、ログを見るのが面白くてしばらくやっていたのですが、サボり癖がひどいことが露わになって落ち込みました。
Q 今回の発表の中で、真鍋さんの今後の作品づくりでも活用できそうな内容はありましたか?
A 最近やっているプロジェクト関係だと機械学習系とAR系ですね。
Q 機械学習について、もう少し詳しく教えてください。
A たとえば、これまで作品で使って来たものでは、カメラで撮影したものが何であるかを推定したり、顔の特徴となる箇所を推定したりするのに使うことができる技術です。僕らは画像を扱うことが多く、今では当たり前にどこでも行われていますが、僕が使い始めたのは2010年頃。当時はパソコンでしか動かなかったこともあり、セキュリティや医療、軍事目的で使われたことはあったけれど、メディアアーティスト以外で使っている人はまだ少なかったです。
僕はパフォーマンス作品でダンサーの動きを解析して、そこからグラフィックをつくったり、インスタレーション作品でお客さんの顔を認識して映像を重ねたりという使い方をしていました。今なら技術的にはどれもモバイルで簡単にできるものばかりです。
A 最近やっているプロジェクト関係だと機械学習系とAR系ですね。
Q 機械学習について、もう少し詳しく教えてください。
A たとえば、これまで作品で使って来たものでは、カメラで撮影したものが何であるかを推定したり、顔の特徴となる箇所を推定したりするのに使うことができる技術です。僕らは画像を扱うことが多く、今では当たり前にどこでも行われていますが、僕が使い始めたのは2010年頃。当時はパソコンでしか動かなかったこともあり、セキュリティや医療、軍事目的で使われたことはあったけれど、メディアアーティスト以外で使っている人はまだ少なかったです。
僕はパフォーマンス作品でダンサーの動きを解析して、そこからグラフィックをつくったり、インスタレーション作品でお客さんの顔を認識して映像を重ねたりという使い方をしていました。今なら技術的にはどれもモバイルで簡単にできるものばかりです。
最近、この機械学習がディープラーニング(深層学習)でさらに進化して、より複雑な解析や生成ができるようになりました。ライゾマティクスリサーチで最近制作したものを例に挙げると、Perfumeの過去のミュージックビデオを分析させてどういうポーズが多いかを調べたり、その結果を使って新しいグラフィックを作り出すのに使ったり、8月31日から3日間かけてスパイラルホールで公演するELEVENPLAYとのコラボレーションによるパフォーマンス作品『discrete figures』では振付けの生成を試みています。
今回〈WWDC〉で発表された「Create ML」は面倒な作業を行わず、機械学習のモデルを簡単に作れるツールで、さらに作り出したモデルはiPhone上で簡単に扱えます。これはアップルがOSだけでなく、それを動かす機器も同時に作っている会社だからこそ最適化できているのかな、と思いました。そのおかげで、いろいろなアイディアを出したり試したりしやすくなるのは大きな価値だと思います。
今回〈WWDC〉で発表された「Create ML」は面倒な作業を行わず、機械学習のモデルを簡単に作れるツールで、さらに作り出したモデルはiPhone上で簡単に扱えます。これはアップルがOSだけでなく、それを動かす機器も同時に作っている会社だからこそ最適化できているのかな、と思いました。そのおかげで、いろいろなアイディアを出したり試したりしやすくなるのは大きな価値だと思います。
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