伊東豊雄が衝撃を受けたブラジル先住民の椅子。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

伊東豊雄が衝撃を受けたブラジル先住民の椅子。

『カーサ ブルータス』2018年8月号より

「ブラジルのサッカーのような野性味」が魅力!? 不思議な表情を持つ椅子が、庭園美術館に集合。

制作者不詳(クイクロ)《サル》
カマリ作(クイクロ)《ホウカンチョウ》
ウルフ作(メイナク)《ジャガー》
ウルフ作(メイナク)《オウギワシ》
制作者不詳(カラジャ)《イス》
制作者不詳(カヤビ)《バク》
マワヤ作(メイナク)《サル》
制作者不詳(ワイワイ)《イス》
制作者不詳(クイクロ)《サル》
カマリ作(クイクロ)《ホウカンチョウ》
ウルフ作(メイナク)《ジャガー》
ウルフ作(メイナク)《オウギワシ》
制作者不詳(カラジャ)《イス》
制作者不詳(カヤビ)《バク》
マワヤ作(メイナク)《サル》
制作者不詳(ワイワイ)《イス》
建築家の伊東豊雄は、ある展覧会の空間構成を東京都庭園美術館から依頼された。展示されるのは、ブラジルの先住民による民族的な椅子。今年3月、講演のためにサンパウロを訪れた伊東さんは、その時に初めて展示品の椅子たちと対面して驚いた。

「椅子を保管する部屋に入ると、一斉に見つめられたみたいでオタオタしてしまいました。1点1点がすごく表情豊かで強いんです」

メイナクやクイクロなどブラジル北部の先住民は、昔から動物をモチーフに椅子を作ってきた。それらは儀式から日常生活まで様々に用いられる、コミュニティのシンボル。かなり奇抜だが、なぜか親しみやすくもある。

「動物との関係を反映しているんでしょうね。彼らは動物と触れ合いながら、畏敬の念も持っている」と伊東さん。椅子の作り方も一般的な椅子と異なり、1本の丸太からダイナミックに削り出す。

「いくつかのパーツを組み合わせる作り方では、この強さやたくましさは生まれない。日本のサッカーとは違う、ブラジルの野性的なサッカーを連想させますね」
 
さらに建築家の視点から見ると、より違った面白さもある。
「動物そのものの椅子、座るための抽象的な椅子、その中間の椅子という3種類があります。この変化は椅子の発生過程を示している。猫脚だった古代エジプトの椅子もオーバーラップします」と伊東さん。3種類の形態の違いは、平らな床の有無といった建築の発達の段階とも関連があるという。

「そもそも現代の建築家はこんな形を作れません。社会の目線を意識して、ものを考えざるをえませんから。しかし先住民の椅子はもっとピュアで、だから美しい」
今回の展覧会は本館と新館の2部構成。本館は、空中に浮かぶ板に椅子を載せ、その魅力が展示室の装飾と同化しないように配慮した。新館は、フロアに直接置いた作品に来場者が間近で向き合う。

「僕が最初に見た時のワーッと向かってくる感じを出したかった」と伊東さん。誰にとっても発見のある、新鮮な展覧会になっている。

『ブラジル先住民の椅子 野生動物と想像力』 〜9月17日。サンパウロのベイ・コレクションから約90点を展示する日本初の展覧会。〈東京都庭園美術館〉東京都港区白金台5-21-9 TEL 03 5777 8600。10時〜18時(入館は17時30分まで)。第2・第4水曜休。入場料1,200円。

伊東豊雄

1941年生まれ。菊竹清訓建築設計事務所を経て71年に独立。代表作に〈せんだいメディアテーク〉〈台中国家歌劇院〉ほか。2013年度プリツカー建築賞など受賞多数。