「更新され続けるデザイン」をドキュメントしたインタビュー集。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

「更新され続けるデザイン」をドキュメントしたインタビュー集。

『Casa BRUTUS』でも活躍するデザインジャーナリスト・土田貴宏が新刊『デザインの現在 コンテンポラリーデザイン・インタビューズ』を上梓。世界各国の第一線で活躍するデザイナー100組へのインタビューをまとめた書籍だ。

今回の書籍は雑誌『商店建築』誌に2011年から連載された「デザインの新定義」を再構成したもの。インテリア、家具、建築などの領域で活躍する、世界各国のデザイナー100組のインタビュー集となる。

フォルマファンタズマ、サビーヌ・マルセリス、ディモーレ・スタジオ、ノーム・アーキテクツ、ミューラー・ファン・セーヴェレン、デストロイヤーズ/ビルダーズ……。インタビューを敢行した面面には錚々たるラインナップが名を連ねるが、雑誌掲載時には決してよく知られる存在ではなかったケースも多い。デザインシーンをつぶさに見つめてきた土田の先見性にあらためて驚く。

書籍化にあたり土田は、選び抜いた取材対象を「コンセプチュアルデザイン」「リミテッドエディション」「新しいクラフト」「越境するクリエイション」「空間×オブジェクト」「デザイナーのブランド」「プロダクトと試行」「ソーシャル&サステイナブル」と題した章立てによって分類。2010年代以降に活躍を続けるデザイナーたちの考えとアウトプットを紐解く。

一冊を通して読むことで浮かび上がる時代感を愉しむもよし、気になる名前やテーマからページを開くもよし。削ぎ落とされた言葉の端々から、デザイナーたちの時代に対峙するアティチュードが見えてくる。
〈Hand Saw Press〉によるリソグラフを使用した独特の印刷も魅力。
デザイナーへのインタビューは対面とメールによって行った。
土田はタイトルの「コンテンポラリー」が意味することについて触れながら、序説でこの本の立ち位置を次のように定義する。

「この書籍のタイトルにあるコンテンポラリーデザインという言葉は『更新されるデザイン』と言い換えていい。(中略)一方、コンテンポラリーデザインは根本的にグッドデザインの評価軸と相容れない。そこでは過去の規範や枠組みをいかに超えるかが主要な価値を作っていく。ゆえに素材、技術、構造、機能などに加えて、コンセプトの革新性と独創性が重視される。(中略)本のタイトルを『デザインの現在 コンテンポラリーデザイン・インタビューズ』としたのは、連載時に考えていた新しいデザインの呼び方としてコンテンポラリーデザインが最も適切だと考えるからだ。デザインの対象となるものが多岐にわたり、さらに拡張している今日、その全体像を一冊で網羅するのは不可能である。そんな中、本書が紹介する100組の事例を知ることは、更新され続ける『デザインの現在』を的確に把握する上で大きな助けになるだろう」

発行元は建築家・ライターの浅子佳英が2021年に創業した建築設計事務所兼出版社の〈PRINT & BUILD〉。輪ゴムをノドにかけて手製本されたDIY的手法のブックデザインは斧澤未知子によるものだ。
限られた販路となるが、すでに重版が決定。版を重ねる際には製本の仕様も若干変更予定だという。
インディペンデントパブリシャーでありながら、購入しやすい価格を実現している点も嬉しい。
100組目の最後に収録されたグラフィックデザイナー・長嶋りかこの独白は、デザインに関心を持つ全ての人にとって必見の内容。こちらは雑誌連載の取材時(2014年)とは本人の考えが大きく変わったため、長嶋の希望により、あらためてインタビューを行ったものだという。そこでは、東京五輪のエンブレム問題や自身の出産を経て考えた女性の働き方などが覚悟をもって語られている。

現在のデザインシーンを整理・把握する一助として、あるいは、世界各国のデザインイベントの中止・延期が相次ぎ、デザインを取り巻く環境がアップデートされ続けるパンデミック以降を予感する一冊として、ぜひ手にとりたい。

「デザインの現在 コンテンポラリーデザイン・インタビューズ」

A5判。234ページ。2,640円。
著者:土田貴宏
ブックデザイン:斧澤未知子
発行人:浅子佳英
代官山蔦屋書店、B&B、LICHTなどでも購入可能。

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