20世紀構成主義のポスター展をアール・デコの館で鑑賞する|青野尚子の今週末見るべきアート | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

20世紀構成主義のポスター展をアール・デコの館で鑑賞する|青野尚子の今週末見るべきアート

アール・デコの装飾が美しい〈東京都庭園美術館〉で”構成主義”にスポットをあてたポスターの展覧会が開かれています。「ビジュアルコミュニケーションは可能か?」とのサブタイトルにさまざまなことが読み取れる企画です。

エル・リシツキー《ソヴィエト連邦展/チューリッヒ工芸美術館》(1929年)。成立から間もないソ連の産業を紹介する展示のポスター。革命の精神を強力に打ち出している。
ポスターは消耗品だ。通常は何かを告知するために短期間使用され、そのあとは捨てられてしまうことも多い。でもポスターを作る側はそのメッセージを強く、広く訴えたいと思うから、一枚の紙にできる限りのエネルギーとクリエイションを注ぎ込む。『20世紀のポスター[図像と文字の風景] ――ビジュアルコミュニケーションは可能か?』展は紙の専門商社、竹尾のポスターコレクションからセレクトしたもの。1920年代から90年代までのものが中心だ。
メアリー・ヴィエイラ《パンエア・ド・ブラジル航空 DC7C機/パンエア・ド・ブラジル》 (1957年)。二色の色面に単語4つと円のみという極限までミニマルな表現。 (c) Isisuf. Istituto internazionale di studi sul futurismo - Archivio Mary Vieira, Milano. All rights reserved.
ヤン・チヒョルト《構成主義者展/クンストハレ・バーゼル》(1937年)。展覧会のデータと細いライン、円のみで構成されている。作者は戦前のドイツで活躍、戦後ペンギンブックスのリデザインを手がけた。一貫して活字書体を使い、自らも活字のフォント「Sabon」を制作している。(c)Tschichold family
ポスターが重要な役割を果たすようになったのは産業化、都市化が進み、多くの人々が都市に集中し始めた時代に重なる。産業革命によって可能になった大量生産・大量消費の時代にポスターというメディアはぴったりだった。街にはポスターがあふれるようになり、ポスター貼り職人といった職業も登場する。パリではポスターを貼るための円柱が立てられ、オペラの人気の演目を伝えるポスターなどが貼られた。大量のポスターが貼られた街並みは汚いと非難されることもあったが、佐伯祐三のようにその風景を叙情的に描いた画家もいる。
スコロス゠ウェデル《 SBKエンターテイメントワールド》(1987年頃)。円などのシンプルな幾何学的形態の組み合わせという意味では構成主義的だが、ソットサスらポストモダン・デザインの影響も見られる。(c)Skolos-Wedell。
この展覧会では「構成主義」と呼ばれるデザインにフォーカスがあてられる。構成主義とは要素の組み合わせによって画面を構成するものを言う。とくに円や四角形、三角形といった幾何学的形態が好まれた。構成主義のルーツは「ロシア構成主義」(ロシア・アヴァンギャルド)にある。ロシア構成主義は同時代にヨーロッパ各国で発生したデ・ステイル(オランダ)、バウハウス(ドイツ)などに波及し、相互に影響し合って発展していった。この動きは戦後、1950〜60年代にスイスを中心に世界中に広がった「インターナショナル・スタイル」と呼ばれるものにつながる。

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