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古今東西 かしゆか商店【萬祝染の長着】

『カーサ ブルータス』2020年10月号より

| Design | photo_Keisuke Fukamizu   hair & make-up_Masako Osuga editor_Masae Wako

日常を少し贅沢にするもの。日本の風土が感じられるもの。そんな手仕事を探して全国を巡り続ける、店主・かしゆか。今回出会ったのは“大漁旗”のルーツといわれる萬祝染。漁師の町である千葉の鴨川で生まれた、お祝いの染物です。

萬祝染とは「大漁を祝う着物」のこと。大正14年創業、図案から仕立てまですべてを家族で行う〈鈴染〉の工房で。萬祝染の長着を見て、「大胆で色鮮やか。これが大漁旗のルーツなんですね」とかしゆか店主。
萬祝染とは「大漁を祝う着物」のこと。大正14年創業、図案から仕立てまですべてを家族で行う〈鈴染〉の工房で。萬祝染の長着を見て、「大胆で色鮮やか。これが大漁旗のルーツなんですね」とかしゆか店主。
日本のグラフィックってカッコイイ。見るたびにそう思うのが、浮世絵や能の衣装、そして大漁旗です。実は大漁旗のルーツとなった染め物“萬祝染”が、今も千葉の鴨川で作られていることを知りました。

「萬祝とは大漁を祝う宴のこと。江戸時代に房総半島の漁師町で生まれた風習です。やがてケタ外れの大漁の際、“ウチの舟は大漁だったぞ!”と、船主が漁師や船大工に鮮やかな祝い着・萬祝染を配るようになった。大漁旗もこの萬祝染から派生したものなんです」
Buying No.30【 萬祝染の長着 】民漁師の町で生まれた縁起のいい“祝い着”。
Buying No.30【 萬祝染の長着 】民漁師の町で生まれた縁起のいい“祝い着”。
と話すのは、房総で2軒だけ残る萬祝染工房のひとつ、〈鈴染〉3代目の鈴木幸祐さん。萬祝染は型紙を使って生地に防染糊を置き、色を差して絵柄を表す型染めの一種。鶴亀や宝船など縁起のいい図柄と、原色を使った色彩が特徴です。今回はその鮮やかな色を差すところを見せてもらいました。
色を差して定着させた上に再び糊をおき、藍甕に浸して地の部分を藍で染める。
色を差して定着させた上に再び糊をおき、藍甕に浸して地の部分を藍で染める。
「赤、茶、黄、青、黒などの顔料に、毎朝大豆を搾ってつくる呉汁を混ぜ、刷毛を使って色を差す。昔から変わらない方法です」

と教えてくださったのは4代目の理規さん。色差しは、赤なら赤、青なら青の場所だけをまとめて行います。長着や半纏は、完成した反物を横に2枚並べて縫い合わせるため、柄や色の濃淡が左右でぴたりと合うよう色を差すのが難しいのだとか。そして、私がいちばん興味をひかれたのは“ぼかし”の技。色と色の境を刷毛でぼかしたり、ひとつの色が乾かないうちに別の色や水をのせてグラデーションをつけたりすることで、絵に立体感を出す。お二人は染物師でもあり絵師でもあるんですね。
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