小屋だけの本に見る“建てること”の原点! | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

小屋だけの本に見る“建てること”の原点!

『カーサ ブルータス』2020年10月号より

畑や民家の脇にある、誰が建てたかも分からない小屋。そのアート性、建築性に注目した本ができました。

片流れ屋根がかかる小屋。田の字に分割された壁の一角が水色になっている。意図せず生まれたコンポジションが美しい。
めくっても、めくっても、載っているのは小屋だけ! 巻末には部分を集めたページもあり、施錠の方法や雨水の活用術が比較されている。
ほぼすべての小屋に、著者たちがネーミングをしている。ネギ畑に建つこの小屋は、その名も “風通しシルエット”。構造をよく見れば納得。
京都の亀岡市は京野菜の7割を栽培する農業の町。畑や田んぼが広がるのどかな風景に欠かせないのが、この本の主役である「農機具小屋」だ。そのアート性に目をつけたのは、『かめおか霧の芸術祭』に関わるアーティストの辰巳雄基とヤマサキエイスケ。建築家の安川雄基、冨吉美穂も加わり、小屋研究がスタートした。

「小屋はある種のヴァナキュラー建築」と安川。「本来は、その土地の気候風土によって培われた建築という意味ですが、農家の人が、手元にあったトタンや木っ端、波板を活用しながら建てたという意味では、小屋もまた土地から生まれた建築だと思うんです」
こんなスケルトンタイプも。
読み進めるほどに小屋を読み解く力が増していく。まさにタイポロジー的な楽しさ!
柱を立て、壁を打ち、屋根をかけて空間を作る。その行為は建築の原点であり、要素が少ないからこそ個性が際立つ。本に収録されているのは厳選した35の小屋。見比べるとブリコラージュ的な面白さもある。求められる用途に対し、いかなる工夫をしているか。写真をつぶさに観察し、作り手の意図を想像してみるのもいい。

「小屋をつくるのは決して簡単なことではないはず。農家の人々は “今あるもので工夫する手と頭” を持っているんです。それは現代人が失いつつある生きる力ではないでしょうか」と安川。

類型学的な見応えと、人間の創造力への敬意が詰まった本だ。

『小屋の本 霧のまち亀岡からみる風景』

京都府亀岡市で「暮らしに在るアート」をテーマに開催する『かめおか霧の芸術祭』から生まれたアートブック。京野菜の7割を栽培する農業の町で見つけた300以上の小屋から、見応えある35件を紹介する。1,800円。

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