伝統こけしの産地・鳴子温泉へ|行くぜ、東北。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS facebook-a facebook instagram line twitter youtube

伝統こけしの産地・鳴子温泉へ|行くぜ、東北。

古きよき温泉街の風情が今も残る鳴子温泉は、伝統こけしの産地としても有名。東北発祥の木製玩具・こけしは、戦後の第2次民藝ブーム以降、観賞用として幅広い世代から人気を集めています。伝統をさまざまな形で第3次民藝ブームといわれる現在に伝える、2軒の老舗を訪ねました。

坂道の多い街並みに大型観光ホテルや老舗旅館、公共浴場などが立ち並び、白く立ち上る温泉の噴煙にも旅情をそそられる。駅や温泉街の看板にはこけしが描かれ、こけし型のガードレールまで見られるなど、町中がこけし一色。ユル渋い温泉地だが、地図を手に散策する観光客には、若い世代も多い。
こけしの発祥は江戸時代。木で作る器や盆などの道具を指す「木地物」の職人が、湯治客の土産物として子供が遊べる人形を作ったのがはじまりといわれる。〈老舗 高亀〉は木地の日用品・玩具の店としてはじまり250年の歴史を持つ老舗。柳宗理デザインの鳩笛を手掛ける工房としても知られ、現在は10代目の高橋武俊さんがひとりでその看板を守っている。
柳宗悦著『手仕事の日本』(岩波文庫)にも、〈老舗 高亀〉の針入れが芹沢銈介の挿絵とともに紹介されている。
「先代の武男と柳宗理さんとの親交によって、鳩笛が生まれたと聞いています」と、高橋さん。鳩笛3,000円(税込)。
「鳩笛もこけし同様、木取りといって型を取る作業から始まります。ろくろで頭と胴をそれぞれ挽き、後でひとつに合わせる。胴の部分に空洞を作って刻みを入れ、尾のほうから空気を吹き込むと音が鳴るようにするわけです」
高橋さんは鳩笛を手に取り、製造の工程を丁寧に説明してくれた。使うのはこけしと同じミズキ。吹くと「ホーホー」と、柔らかい音が鳴る。
こけし職人の世界では「刃物が作れるようになって一人前」といわれるそう。高橋さんも多くの道具を自分で作っている。ろくろは先代の時代から活躍する年代もの。
実際に製造の現場も見せてくれた。蛍光灯の灯りが使い込まれたろくろや道具類を照らす工房は、店舗の裏手に。ろくろの前に立つと、それまで終始穏やかだった高橋さんの表情がきりっと引き締まる。足踏みミシンと同じペダル式のろくろは50年もの。「しめ木」という支柱に体の重みを預けるようにして円柱型の木材から鳩の胴や頭の部分を削り出していく。言葉で説明をきくとシンプルな工程も、実際には見ている側まで思わず息を飲むほど緻密な作業の連続だ。
鳩笛の胴の部分が完成。昔ながらの木賊(とくさ)や苗草で表面を磨く。「うまく形ができても、頭を付ける位置がわずかにずれると立たなくなる」と高橋さん。
「出来上がった鳩笛から美しい木目の表情が感じられるよう、どの部分を削り、見えるようにするかというところから考えます。中の空洞が広くなるほど音が低くなるし、奥行が短いと音が共鳴しない。空洞内がガサガサだといい音が鳴らないので、見えないところまで滑らかに仕上げます」と、高橋さん。

高橋さんは、父の高橋武男さん、叔父(武男さんの弟)の正吾さんの下で木地職人としての技術を学んだ。柳宗理デザインの鳩笛づくりも、二人から受け継いだ仕事だ。
「柳のデザインというのは曲線の連続。いかに美しい曲線を作るか。彼のデザインを具現化するにはこれに尽きるという思いでやっています」