フィンランドの陶芸作家、ルート・ブリュックの純粋な美|土田貴宏の東京デザインジャーナル | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

フィンランドの陶芸作家、ルート・ブリュックの純粋な美|土田貴宏の東京デザインジャーナル

ひそかに注目されてきた北欧の陶芸作家の回顧展「ルート・ブリュック 蝶の軌跡」が人気を博している。ジャンルを超えて人を惹きつける魅力の秘密とは。

白いタイルに黒のパターンやレリーフを施した作品。凹凸によって光を表現する作品は晩年ほど増えていった。《色づいた太陽》1969年、タピオ・ヴィルカラ ルート・ブリュック財団蔵 Tapio Wirkkala Rut Bryk Foundation’s Collection / EMMA –Espoo Museum of Modern Art (c) KUVASTO, Helsinki & JASPAR, Tokyo, 2018 C2531
ルート・ブリュック|Rut Bryk
Photo: Tapio Wirkkala
ルート・ブリュックという作家の名前は、今まで日本ではあまり知られてこなかった。しかし北欧のヴィンテージ・デザインが本当に好きで、そのために現地へ旅行するような人なら、彼女の陶芸作品が強い憧れの対象であることは珍しくないだろう。20世紀半ばから長年にわたりフィンランドの名窯〈アラビア〉の工房に在籍しながら、アーティストとしての活動に専念していたため、ブリュックの作品は基本的にユニークピース。フィンランドでも多くの作品を1度に目にすることは難しい。そんな彼女のきわめて充実した展覧会「ルート・ブリュック 蝶の軌跡」が、東京ステーションギャラリーで開催されている。
蝶はブリュックがキャリアの前半で特に多くモチーフとしたもの。石膏型を使った鋳込みで制作した。《蝶たち》1957年、タピオ・ヴィルカラ ルート・ブリュック財団蔵 Tapio Wirkkala Rut Bryk Foundation’s Collection / EMMA –Espoo Museum of Modern Art (c) KUVASTO, Helsinki & JASPAR, Tokyo, 2018 C2531
蝶をモチーフにした作品は、蝶類学者だった父親へのオマージュでもあったらしい。一連の作品は標本のようにも見える。(c) Hayato Wakabayashi
1916年生まれのブリュックは、42年からアラビア製陶所の美術部門に在籍し、45年に著名なデザイナーのタピオ・ヴィルカラと結婚。ふたりは基本的に独立して作家活動を行ったが、ともに刺激を与え合う関係でもあった。50年の初個展が好評を得た翌年、ミラノ・トリエンナーレでグランプリを得たことで、彼女の評価は揺るぎないものになる。そして晩年を迎える90年代まで、作風を変化させながら第一線で活動を続けていった。