mabanuaさんが語る新作と自宅スタジオの建築過程。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

mabanuaさんが語る新作と自宅スタジオの建築過程。

『カーサ ブルータス』2018年10月号より

群馬にレコーディングスタジオを建設中のmabanuaさん。東京から拠点を移して7年。作風に変化はあったのか。

所属するレーベル〈origami PRODUCTION〉の自社スタジオにて。「賃貸マンションの一室を改造して作りましたね。何もしないと苦情がきてしまうので、苦労を重ねながら、さまざまな工夫がなされています」(mabanua)
Q レコーディングスタジオを建設中とのことですね。
7年前から群馬に住んでいて、新居を建てることになったんです。それなら自分のスタジオも作りたいと思い、昨年から計画して。

Q 一から作るということ?
そうです。地元の建築士の方と相談しながら進めています。それからスタジオ製作に関しては、70年代からレコーディングエンジニアとして活躍されている村田研治さんが、隣の長野県で〈SALogic〉というスタジオや音響専門の設計施工の会社を運営されていて。壁面の吸音材や、〝コンクリートの基礎は高めにした方が低音を出した時によく締まる〞など、御指南いただきながら進めています。

Q 元々は東京に住んでいたんですよね?
都内在住の音楽家は、どうしても騒音との戦いになってしまいます。もっと開放的な環境で音楽製作ができないか、ずっと考えてきました。東京の小さな規模のスタジオでは、ドラムを叩く場所が狭く、アンビエンス(臨場感)が得られないことがよくあって。そうすると、どうしても窮屈な音になってしまう。海外の音楽雑誌なんかで、木目調の温かさそうな空間に、ドラムやスピーカーなど全部機材が揃っているスタジオの写真を見ていて。そんな環境の中で、気兼ねなく製作ができることが、とにかく羨ましかったんです。群馬に住んでいるんだから、長年の理想を叶えられるんじゃないかと思ったんですよね。

Q こだわりのポイントは?
いろいろありますが、まずは吸音しすぎないこと。例えば、クラシックを演奏するホールでは、反響を利用するので、マイクなどは使いません。そういう環境の下、無理な力を入れずに演奏するから、演者も観客も、気持ちがいいと思うんです。また、普通のスタジオでは、演者のいるレコーディングブースと、エンジニアのいるミキシングルームでは隔たりがあるんです。しかし、今建設中のスタジオでは、無駄にブースなど作らず、ひとつの部屋の中にすべてを備え、音が心地よく響く環境を作りたいと考えています。

Q では、結構広めなワンルーム?
広さは約13畳、天井高が5メートルくらいあります。でも、さまざまな配慮があって。壁には、木目の〈SALogic〉の音響パネルを敷き詰めています。それから、スタジオは壁が平行になるとブーミング(低音が響きすぎる現象)が起こるので、壁や床を斜めに設計したり、ギザギザの反射材を壁につけ、さまざまな処理を施しているんです。

Q 騒音の心配は?
さすがに深夜までドラムは叩けませんが、大きな音は出しても大丈夫だと思います。東京に住んでいる時、いいグルーヴがひらめいても、ドラムを叩かず、コンピューターにヘッドフォンをつなぎ、ドラムパッドを叩くことがよくありました(笑)。そういうストレスからは解放されますね。

Q 作風にも影響がありそうですね。
僕が楽曲提供、ドラマーとして参加する大橋トリオの楽曲には、あまり無駄な音が入っていない。それは大橋が静かな田舎にスタジオを構えていて、日頃から思い付いたままに音を出しているからだと思う。ダイナミックな音が出せれば、小細工がいらなくなるんじゃないかな。

Q 前作から6年ぶりの新作『Blurred』が完成しましたが、群馬で制作したんですか?
前作『only the facts』(12年)の制作は、東京と群馬の半分づつだったんですが、今回はすべて群馬ですね。

Q やはり違いはありますか?
自分のやりたいことが素直に投影できるというか。東京にいると、つい流行などを気にしたりするんですけど。歌詞が英語から日本語に変わったのも、自然な流れなんです。

Q スタジオの完成予定は?
今年の年末。Ovalの新作が完成するので、最後のミックスくらいはできればいいかな。

マバヌア

ドラマー、プロデューサー、シンガー。レーベルメイトであるShingo Suzuki、関口シンゴとともに結成したバンド “Ovall” のドラマーとしても活動中。バンド、ソロ活動と並行し、後藤正文、U- Zhaanらとユニットを結成する傍ら、大橋トリオやCharaなどの作品に参加。mabanuaとして6 年ぶりのアルバム『Blurred』(写真) が発売中。また、Ovallの新作も絶賛制作中。