CULTURE
恋愛というフィルターを通して見える人間の欲求とは。川村元気インタビュー
November 15, 2016 | Culture | a wall newspaper | photo_Kosuke Mae text_Kana Umehara
八面六臂の活躍を見せる川村元気が、およそ2年ぶりに新作小説を上梓。なぜ、今、恋愛を語るのか。
恋愛は格好いいものじゃないところがいい。
今年、映画化もされた小説デビュー作『世界から猫が消えたなら』では「死」を、2作目となる『億男』では「お金」をテーマに物語を紡いだ川村元気。3作目の『四月になれば彼女は』で彼が選んだ題材は「恋愛」だ。
「この3つは人間が自分で都合よくコントロールできないもの。特に恋愛はややこしい。人は、恋愛というフィルターを通すと己の願望や欲求がストレートに出る。醜い部分もさらけ出すし、その人にとって何が幸せかも見えてくる。恋愛は、人間そのものです。恋愛小説を書くことで、恋愛とは一体何なのかその答えを知りたかった」
『億男』では取材のため100人の億万長者に話を聞いた川村。今回も「恋愛小説を書こう」と決めたときから、周囲の人々の恋愛話をとにかくたくさん集めたという。
「30代〜50代の男女に“恋愛してる?”って雑談めかして根掘り葉掘り聞いてましたね(笑)。それで気づいたのは、今の30代以上の男女は、ほとんど恋愛をしていないという現実です」
この物語の主人公もまた恋愛と距離を置く30代の男性だ。精神科医の藤代は恋人の弥生と来年結婚する約束をしているが、2人の関係はどこか冷めている。そこに突然、大学時代の恋人・春からの手紙が届く。
「恋愛の昔話を聞くと、誰しも10代や20代には熱烈な恋愛をしているんです。でも、大人になり、自分の地位や生活が確立すればするほど、恋愛感情からは遠ざかる。家庭ができたからと言う人もいれば、独身で好きな人ができないと言う人もいる。恋愛できなくなってしまった人たちがどう自分の感情と向き合っていくのか、そこを描きたかった。だから、恋愛モノと言いながらキスしたりハグしたりという恋愛的な場面がほとんどない。映画化するならとても難しい恋愛小説だと思います」
登場人物たちそれぞれ、恋愛との向き合い方もさまざまだ。誰に共感できるかで、自分が抱えている恋愛の課題も透けて見えてくるのかもしれない。また、何げない会話やシーンの演出のように描かれる恋愛映画の数々も、恋愛について考えるヒントになりそうだ。
「登場する映画は、恋愛の複雑な感情を描いている作品を選んでいます。『卒業』は恋愛の興奮とそこからピークアウトしていく現実を、『エターナル・サンシャイン』や『her/世界でひとつの彼女』は現代の恋愛の姿を最も進んだ形で表現している作品。どの恋愛映画にも通じているのは、恋愛はいつも不格好なものだということ。ぶざまでもいいから誰かのために走ったり泣いたりしてみたい。それがなかなかできないんですよね」
「この3つは人間が自分で都合よくコントロールできないもの。特に恋愛はややこしい。人は、恋愛というフィルターを通すと己の願望や欲求がストレートに出る。醜い部分もさらけ出すし、その人にとって何が幸せかも見えてくる。恋愛は、人間そのものです。恋愛小説を書くことで、恋愛とは一体何なのかその答えを知りたかった」
『億男』では取材のため100人の億万長者に話を聞いた川村。今回も「恋愛小説を書こう」と決めたときから、周囲の人々の恋愛話をとにかくたくさん集めたという。
「30代〜50代の男女に“恋愛してる?”って雑談めかして根掘り葉掘り聞いてましたね(笑)。それで気づいたのは、今の30代以上の男女は、ほとんど恋愛をしていないという現実です」
この物語の主人公もまた恋愛と距離を置く30代の男性だ。精神科医の藤代は恋人の弥生と来年結婚する約束をしているが、2人の関係はどこか冷めている。そこに突然、大学時代の恋人・春からの手紙が届く。
「恋愛の昔話を聞くと、誰しも10代や20代には熱烈な恋愛をしているんです。でも、大人になり、自分の地位や生活が確立すればするほど、恋愛感情からは遠ざかる。家庭ができたからと言う人もいれば、独身で好きな人ができないと言う人もいる。恋愛できなくなってしまった人たちがどう自分の感情と向き合っていくのか、そこを描きたかった。だから、恋愛モノと言いながらキスしたりハグしたりという恋愛的な場面がほとんどない。映画化するならとても難しい恋愛小説だと思います」
登場人物たちそれぞれ、恋愛との向き合い方もさまざまだ。誰に共感できるかで、自分が抱えている恋愛の課題も透けて見えてくるのかもしれない。また、何げない会話やシーンの演出のように描かれる恋愛映画の数々も、恋愛について考えるヒントになりそうだ。
「登場する映画は、恋愛の複雑な感情を描いている作品を選んでいます。『卒業』は恋愛の興奮とそこからピークアウトしていく現実を、『エターナル・サンシャイン』や『her/世界でひとつの彼女』は現代の恋愛の姿を最も進んだ形で表現している作品。どの恋愛映画にも通じているのは、恋愛はいつも不格好なものだということ。ぶざまでもいいから誰かのために走ったり泣いたりしてみたい。それがなかなかできないんですよね」
併せて見たい映画!
『her/世界でひとつの彼女』
人工知能型OSと恋に落ちた主人公のてん末を描く。スパイク・ジョーンズ監督。OSサマンサの声をスカーレット・ヨハンソンが演じた。
『エターナル・サンシャイン』
監督ミシェル・ゴンドリーと脚本家チャーリー・カウフマンの名コンビによる恋愛映画。甘い恋の記憶を消し去ってもまた恋をする?
『卒業』
まだ若き俳優だったダスティン・ホフマンの名を知らしめた青春恋愛映画。花嫁を教会から連れ去るラストシーンはあまりに有名。
『四月になれば彼女は』
恋愛映画だけでなく、タイトルにもなっているサイモン&ガーファンクルの名曲をはじめ、場面場面で鳴っている音楽にも仕掛けとこだわりが。そのルーツを探るのも面白い。文藝春秋/1,400円。